ジュリアフィリップスのレビュー一覧

  • 消失の惑星【ほし】

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    これは完全にカッコいい表紙とタイトルにやられた。アメリカの作家なんだけどロシア文学に惹かれカムチャッカの街…あんなところに街があるって個人的には凄く意外だった…に実際暮らしていたという冷戦期には考えられない経緯を経て産まれた作品なんだとか。物語の入口は凄くシンプルで海岸に遊びに来た幼い姉妹が何者かに拐われるところから始まる。この作品が普通でないところは誘拐に続く章がどれも事件には直接タッチしない形で進んでいくところでいずれも女性を主人公にした物語がいくつかポツポツと進んで行って、それらはなんとなく誘拐事件に触れたりはするのだけれども基本的には独立して読める短編であったりする。そして気がつくと序

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    2021年08月04日
  • 消失の惑星【ほし】

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    非常に評判の高い作品。
    とてつもなく閉塞感が強くて、人生が重くて、どないしようかと思ったけど、それでもどんどん先を読まされてしまうリーダビリティはすごい。これは翻訳の力によるところも大きいだろうと思う。

    カムチャツカ半島というのは、そうなのか、ロシア本土とは陸路がないんだ! そもそも閉ざされた土地なんだね。それは知らなかった。ゆるくつながった連作短編のなかで、人々は、ここではないどこかへ行くことを夢見ながらも土地にしばりつけられ、そのなかで、あるいは愛する者を失い、あるいは失うことにおびえ、それでも生命力をかきあつめるようにして生きている。

    すごく好き、とか、感動とかいうことではなく、から

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    2021年05月17日
  • 消失の惑星【ほし】

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    すごかった、と思う。
    すごくずしっと来たものもあるけれど、ロシアという国の中の人種の関係性に無知なので理解できていないところもあるかと思う。
    でも、それでも女性という立場だからこその何かを感じる。わかる、とは、私の知識では安易に言えないけれど。私の語彙力ではうまく言葉にできないのがもどかしい。

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    2021年05月05日
  • 消失の惑星【ほし】

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    ネタバレ

    装丁と同じ、全体的に灰色の雰囲気の物語だった。でもただ暗い話っていうわけではなくて…いや明るくはないけど、なんだろうな。色がない?寒いからかな。
    静謐?どこか淡々と描かれる喪失と孤独。閉塞感の中で生きる…というか息をしていく…みたいな。

    姉妹の失踪を背景にしながら語られる「消えてしまうには理想的な場所」での女性達の日常。
    各話ももちろん面白いけれど、それぞれの物語を読んでいると浮かび上がってくる、差別意識や社会情勢、特に印象的だったのはソ連崩壊後に資本主義へと転換した影響みたいなものかな。
    各話が緩やかに繋がっていくのはもうお見事という感じ。ラストはちょっと急展開に感じたけれど、嫌な感じでは

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    2021年04月15日
  • 消失の惑星【ほし】

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    3月のサヴァブッククラブでの選書作品。

    自分では手に取って読まないであろう物語に今月もまた出会えました。
    すっごく面白い作品!

    まずはGoogleマップでカムチャツカ半島を検索して、どんな土地なのか想像しながら読む。これがまた物語に深みが増して良い。

    ロシアの文化と歴史にあまり明るくないが、これを機に学んでみたいなと思うほどに興味深い。
    習慣とか先住民への差別とか田舎独特の閉鎖的な空気とかどこかわたしたちの国にも通じるものがあって、女性の生きづらさもあって、遠い国(実際にはカムチャツカ半島は日本からさほど遠くないが)のことなのに身近でもある。

    『近くにいる人を愛するのは難しい』みたいな

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    2021年03月09日
  • 消失の惑星【ほし】

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    「カムチャッカ」については、「若者がきりんの夢を見ている」イメージしかなく、何も知らなかった。

    カムチャッカは広いロシアにおいて陸路では本土に行けない陸の孤島で、自然が豊かで、白人とは別にいろんな先住民がいるが、ソ連からロシアになり、地域性や連帯は少しずつ失われつつある。

    先住民差別、女性差別、同性愛、世代間格差、経済格差、発達障害、田舎社会、シングルマザー、偏見、噂話、生きづらさのミルフィーユ。

    そこに暮らす女たちの話。
    地理的にも経済的にも人種的にも土地に縛られて、ミルフィーユの中でいろんなことをいろんなふうに思っている女たち。

    日本とは全然違う歴史と文化の国なのに、女の抱える生き

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    2025年11月23日
  • 消失の惑星【ほし】

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    去り際に振り返る女性の顔は半分見えない。
    こちらを向いた悲しそうな目、
    向こう側の目は何を見ているのか……。

    モノクロのカバーの絵が雰囲気をすでに物語っている。

    カムチャツカ半島、シベリア極東部から突如として南へ飛び出しオホーツク海とベーリング海に囲まれた北の果ての半島。
    作者はアメリカ人。よそ者としてカムチャツカ半島に住み、この本を書いた。

    先住民族とロシア人。
    登場人物の職業(勤め先)は、先住民族が行う狩猟やトナカイの牧畜以外には、警察、火山研究所、海洋研究所、看護師、教師など。
    どこか無理のある人工的な生活圏。

    二人の少女が行方不明になった時から1年。
    そこに住む女性たちの悲しみ

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    2023年05月27日
  • 消失の惑星【ほし】

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     幼女誘拐事件を扱った小説となると、どんな内容を想像するだろうか?なぜその少女が狙われ、どんな方法で誘拐され、どう監禁されていたか?犯人はどうしてそのような事件を起こす人物になったか?その他諸々のことを書くとしても、読書としての私が興味を抱く点はそういったことだと思う。

     しかし、この本の著者ジュリア・フィリップスはほとんどそういったことを書いていない。著者は、大衆にとって、この手の事件が娯楽のように扱われるのを忌み嫌っているようだ。

     グロテスクな描写や異常犯罪者等のストーリーは、個人的に割と好きな方なので、その手の本を読んだ後、面白かったと思うと同時に、こんな自分で良いのだろうか?と罪

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    2023年02月24日
  • 消失の惑星【ほし】

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    みんな何かを失いながら生きてるんだな。
    それでも緩やかにつながっているのだ。

    そんなことを考えさせられる、カムチャッカ半島に住むロシア人と先住民の女性たちの物語。

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    2023年01月21日
  • 消失の惑星【ほし】

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    カムチャッカ半島での小さな姉妹の失踪とその後の数ヶ月間。

    事件は地域の人たちに話題と影を与えながらも、人々の生活は変わらず進んでいく。
    それぞれの悩みを抱えながら。

    あるところでの話し手やその友人、恋人、兄弟が別の月では、ちがう表情をしたり、異なる向きから語られたり。
    極東ロシアの一地域は、それでも広く多様で、かつ狭い。

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    2021年02月27日