ジュリアフィリップスのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
これは完全にカッコいい表紙とタイトルにやられた。アメリカの作家なんだけどロシア文学に惹かれカムチャッカの街…あんなところに街があるって個人的には凄く意外だった…に実際暮らしていたという冷戦期には考えられない経緯を経て産まれた作品なんだとか。物語の入口は凄くシンプルで海岸に遊びに来た幼い姉妹が何者かに拐われるところから始まる。この作品が普通でないところは誘拐に続く章がどれも事件には直接タッチしない形で進んでいくところでいずれも女性を主人公にした物語がいくつかポツポツと進んで行って、それらはなんとなく誘拐事件に触れたりはするのだけれども基本的には独立して読める短編であったりする。そして気がつくと序章に繋がる最終章に突入する、という形で実験的といえばそのとおりの極めて奇妙な物語になっている。作者の凄みは実験臭を感じさせずに純粋な物語として読ませてくるところであっさりしてるように見えてこれはかなり試行錯誤を重ねた結果なんだろうな、と思わせられた。気になってカムチャッカのことを少し調べてみたのだけれど山と深林に阻まれて陸続きに半島から出ることができず水路か空路を使うしかないらしい。不凍港があるため昔からソビエト海軍が基地を置いていたこともあってロシア人の入植者も多かったのだけどソビエト崩壊でかなりの人口流出があって、というかなり特殊な環境であるらしい。そんな特殊な環境も物語に反映されているのだろう。非常に面白く興味深い作品でした。
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Posted by ブクログ
非常に評判の高い作品。
とてつもなく閉塞感が強くて、人生が重くて、どないしようかと思ったけど、それでもどんどん先を読まされてしまうリーダビリティはすごい。これは翻訳の力によるところも大きいだろうと思う。
カムチャツカ半島というのは、そうなのか、ロシア本土とは陸路がないんだ! そもそも閉ざされた土地なんだね。それは知らなかった。ゆるくつながった連作短編のなかで、人々は、ここではないどこかへ行くことを夢見ながらも土地にしばりつけられ、そのなかで、あるいは愛する者を失い、あるいは失うことにおびえ、それでも生命力をかきあつめるようにして生きている。
すごく好き、とか、感動とかいうことではなく、からみつくように頭に住みついてくる小説だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ装丁と同じ、全体的に灰色の雰囲気の物語だった。でもただ暗い話っていうわけではなくて…いや明るくはないけど、なんだろうな。色がない?寒いからかな。
静謐?どこか淡々と描かれる喪失と孤独。閉塞感の中で生きる…というか息をしていく…みたいな。
姉妹の失踪を背景にしながら語られる「消えてしまうには理想的な場所」での女性達の日常。
各話ももちろん面白いけれど、それぞれの物語を読んでいると浮かび上がってくる、差別意識や社会情勢、特に印象的だったのはソ連崩壊後に資本主義へと転換した影響みたいなものかな。
各話が緩やかに繋がっていくのはもうお見事という感じ。ラストはちょっと急展開に感じたけれど、嫌な感じではない。好きなのは二月かな。突き落とされたけど。
「すぐそばにいるものを愛するのは難しい」
この言葉がこの作品を象徴しているわけではないけれど、なんかもうこの言葉に出会えたってだけで、この作品を読んだ価値はあったと思える一文だった。
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Posted by ブクログ
3月のサヴァブッククラブでの選書作品。
自分では手に取って読まないであろう物語に今月もまた出会えました。
すっごく面白い作品!
まずはGoogleマップでカムチャツカ半島を検索して、どんな土地なのか想像しながら読む。これがまた物語に深みが増して良い。
ロシアの文化と歴史にあまり明るくないが、これを機に学んでみたいなと思うほどに興味深い。
習慣とか先住民への差別とか田舎独特の閉鎖的な空気とかどこかわたしたちの国にも通じるものがあって、女性の生きづらさもあって、遠い国(実際にはカムチャツカ半島は日本からさほど遠くないが)のことなのに身近でもある。
『近くにいる人を愛するのは難しい』みたいな表現にすごくハッとさせられました。
これがデビュー作なんて嘘でしょ!?と驚愕です。
世の中には才能溢れる人がたくさんいるのね…
ラストがまたいいんですよ。このラスト好きだなぁ。
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Posted by ブクログ
「カムチャッカ」については、「若者がきりんの夢を見ている」イメージしかなく、何も知らなかった。
カムチャッカは広いロシアにおいて陸路では本土に行けない陸の孤島で、自然が豊かで、白人とは別にいろんな先住民がいるが、ソ連からロシアになり、地域性や連帯は少しずつ失われつつある。
先住民差別、女性差別、同性愛、世代間格差、経済格差、発達障害、田舎社会、シングルマザー、偏見、噂話、生きづらさのミルフィーユ。
そこに暮らす女たちの話。
地理的にも経済的にも人種的にも土地に縛られて、ミルフィーユの中でいろんなことをいろんなふうに思っている女たち。
日本とは全然違う歴史と文化の国なのに、女の抱える生きづらさは、全世界共通なんだなぁと感慨深かった。
男とか女とか言いたくはないけれども、どんなに賢くて読解力があったとしても、男性はこの話に共感するのは無理だと思う。若い世代だと変わってくるのかもしれない。
あと、犬を逃したバカ男が本当に絶好調のバカで、読み終わってもまだ腹が立つ。バカの金字塔。 -
Posted by ブクログ
去り際に振り返る女性の顔は半分見えない。
こちらを向いた悲しそうな目、
向こう側の目は何を見ているのか……。
モノクロのカバーの絵が雰囲気をすでに物語っている。
カムチャツカ半島、シベリア極東部から突如として南へ飛び出しオホーツク海とベーリング海に囲まれた北の果ての半島。
作者はアメリカ人。よそ者としてカムチャツカ半島に住み、この本を書いた。
先住民族とロシア人。
登場人物の職業(勤め先)は、先住民族が行う狩猟やトナカイの牧畜以外には、警察、火山研究所、海洋研究所、看護師、教師など。
どこか無理のある人工的な生活圏。
二人の少女が行方不明になった時から1年。
そこに住む女性たちの悲しみ、痛みは、軋むようにして漂っている。 -
Posted by ブクログ
幼女誘拐事件を扱った小説となると、どんな内容を想像するだろうか?なぜその少女が狙われ、どんな方法で誘拐され、どう監禁されていたか?犯人はどうしてそのような事件を起こす人物になったか?その他諸々のことを書くとしても、読書としての私が興味を抱く点はそういったことだと思う。
しかし、この本の著者ジュリア・フィリップスはほとんどそういったことを書いていない。著者は、大衆にとって、この手の事件が娯楽のように扱われるのを忌み嫌っているようだ。
グロテスクな描写や異常犯罪者等のストーリーは、個人的に割と好きな方なので、その手の本を読んだ後、面白かったと思うと同時に、こんな自分で良いのだろうか?と罪悪感を感じることもしばしばある。これはフィクションなんだからという意見もあるだろうが、実際の事件でも被害者のことをマスコミが執拗に取材したり、それを見て視聴者が楽しんだりしている面がないとは言い切れないと思う。
この本では、事件がそういった好奇の目で、たとえそれが小説であっても、扱われることがないようになっている。では、何が書かれているのか?
この小説の舞台はカムチャツカ半島。ロシア東部の街で、幼い姉妹が行方不明になる。この半島に住むそれぞれの人生を背負った女性たちの生き様を描きつつ、それが少しずつつながり事件が動く。
カムチャツカ半島の風土や、先住民とロシア人との確執も描かれて、私にとっては全く想像もできていなかった異世界が、朧げながらも像を結び始めた。
カムチャツカと言えば、谷川俊太郎さんの詩がまず浮かび、そして、それ以外は何も浮かばない謎の地だった。そこを舞台にした、こんな壮大なものを読むことになるとは…
きっとこれからも、グロテスクなものを読み続けてしまうと思うけれど、この著者の思いしっかりと受け止めたいと思う。