寺崎英成のレビュー一覧
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この独白録が東京裁判で天皇の訴追を免れるために作成されたのではないかとの憶測(秦郁彦)があるが、真相はわからない。ただ仮にそうだとしても、関係者の日記等との整合性からみても、事実を捻じ曲げているとは考えにくい。と同時に回想録の類の常として、本人の評価を貶めるようなことは書かれていない。その意味で一定の留保は必要であるが、本人の肉声として概ね客観性を備えた歴史的資料と言えると思う。
日本が無条件降伏を受諾した唯一の条件は国体の護持である。それは昭和天皇の強い意思でもあった。逆に言えば国体の護持が保障されないなら最後まで戦っていたということであり、実際昭和天皇はそう発言している。この独白録で初め -
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昭和天皇自身が、張作霖爆殺事件から終戦までの期間について語った記録。当時の様子が生々しく伝わってくる貴重な証言。
やはり興味深いのは、昭和天皇が立憲君主であったのか否かという点だろう。
天皇自身は自らを「立憲君主」と規定し、内閣の上奏するものはたとえ反対の意見を持っていても裁可、「もし己が好む所は裁可し、好まざるところは裁可しないとすれば、之は専制君主と何等異る所はない」と述べている。
一方で、「閣議決定に対し、意見は云ふが、『ベトー(veto)』云はぬ事にした」という発言からは、拒否権はあるのだが発動しないだけという考え方も見て取れる(実際に「この時(二・二六事件)と終戦の時との二回丈けは積 -
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戦後70年が経ても領土問題に揺れ戦争責任を問われ人権問題の矢面に立たされる日本であるが、国際社会からは世界の安定への貢献を求められている。国民のほとんどが戦争を知らない世代となったからこそ、「なぜ先の大戦が行われたのか」「対戦はどのように終結したのか」「戦前戦中の天皇の存在はどのようなものだったのか」を知りたくて手に取った。
良くも悪くも終戦以前の日本中枢がどのように動いていたのかがわかる。
また杉原千畝の本を並行して読んでいたこともあり、当時のアジア・ソ連・ドイツ情勢や外交官という仕事についても勉強になった。
とにかく戦慄したのは、最後の一文であった。
確かに、摂関政治が始まって以来の天 -
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かつて昭和天皇に仕えた男の記した日本語の資料が、遠くアメリカで発見される。
その男の妻はアメリカ人で、戦後祖国に戻り、日本語を読めない家族によって、一旦は焼いて処分されそうになったが、
日本の歴史研究家に内容解説を頼むことから、このような本になることとなる。
なんだこのTBSの2時間ドラマみたいな話(主演はシャーロット・ケイト・フォックス あたり)は!!
という実話です。
昭和初期から終戦までを昭和天皇の目線で、側近に語った内容。
今まで読んできた歴史の本のエピソードがじわじわと読んでいてキーワードとして光るようになってきた。
そしてこの本もその重層のひとつとなるのです。
未だにうまく