【感想・ネタバレ】昭和天皇独白録のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年01月01日

この独白録が東京裁判で天皇の訴追を免れるために作成されたのではないかとの憶測(秦郁彦)があるが、真相はわからない。ただ仮にそうだとしても、関係者の日記等との整合性からみても、事実を捻じ曲げているとは考えにくい。と同時に回想録の類の常として、本人の評価を貶めるようなことは書かれていない。その意味で一定...続きを読むの留保は必要であるが、本人の肉声として概ね客観性を備えた歴史的資料と言えると思う。

日本が無条件降伏を受諾した唯一の条件は国体の護持である。それは昭和天皇の強い意思でもあった。逆に言えば国体の護持が保障されないなら最後まで戦っていたということであり、実際昭和天皇はそう発言している。この独白録で初めて明らかになった事実だが、これは何を意味するだろうか。

実権のない立憲君主という枠内ではあれ、昭和天皇が卓越した政治的理性とリアリズムを保持し、戦争回避に多大な努力を払っていたことは随所にうかがえる。自らの意思に反して開戦を余儀なくされ、頼れる重臣もなく苦悩する姿には同情を禁じ得ない。だがその昭和天皇も、ギリギリの段階で天皇制廃止と引き換えに国の破滅を回避するという選択肢はなかったということだ。

天皇とて一人の人間、それはあまりに苛酷な選択ではあろうし、天皇制なくして日本という国はないという思いもわからぬではない。結果として紙一重で国の破滅を回避できたし、天皇制も存続できたのは喜ぶべきことだが、この一点だけは割り切れないものとして残る。そう感じるのは私だけだろうか。

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Posted by ブクログ 2012年07月16日

昭和天皇自身が、張作霖爆殺事件から終戦までの期間について語った記録。当時の様子が生々しく伝わってくる貴重な証言。
やはり興味深いのは、昭和天皇が立憲君主であったのか否かという点だろう。
天皇自身は自らを「立憲君主」と規定し、内閣の上奏するものはたとえ反対の意見を持っていても裁可、「もし己が好む所は裁...続きを読む可し、好まざるところは裁可しないとすれば、之は専制君主と何等異る所はない」と述べている。
一方で、「閣議決定に対し、意見は云ふが、『ベトー(veto)』云はぬ事にした」という発言からは、拒否権はあるのだが発動しないだけという考え方も見て取れる(実際に「この時(二・二六事件)と終戦の時との二回丈けは積極的に自分の考を実行させた」と指示を出している)。
また、「(御前会議は)「全く形式的なもので、天皇に会議の空気を支配する決定権は、ない」という発言や、「(開戦が決定した際)反対しても無駄だと思つたから、一言も云はなかった」という発言からは、君主として自らの考えを実行させることのできないフラストレーションが感じられる。
このような天皇の微妙なポジションは、丸山真男が言う「無責任の体系」の根幹をなすものだったのだろうか。

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Posted by ブクログ 2011年10月06日

本の構成がすばらしい。 ?独白録、?マリコさんのエッセー、?討論会と多角的。 政治的な発言はネット上にはしない主義なので感想はひかえます。

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Posted by ブクログ 2023年11月04日

独白録と寺崎氏の娘さんの手記、昭和史研究家の座談の三部構成。
独白録は要所の解説付きで読みやすい反面、ここで取り上げられない論点は忘れられがちになる誘導的な側面がある。ここで語られたことは例えば原爆や東京大空襲のように語られなかった事を陰画のように浮き彫りにする。
座談は昨今のように予定調和ではなく...続きを読む、相手をやり込めんばかりに白熱していて面白い。その後の研究成果もあり今では児島や伊藤のように素朴な回想として読むのは難しいのではないか。

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Posted by ブクログ 2022年05月06日

戦前外交官を務め、戦後昭和天皇のお側に仕えた筆者が書き残した昭和天皇の太平洋戦争を振り返る独白録。本文書の位置付けについては解説で議論されており、何らかの意図を含んだものであったかもしれないが、天皇が何を思い、何を考えていたかを知れる興味深い一冊。
また、本書をめぐる筆者と妻、そしてそれを世に出した...続きを読む娘の家族の物語が感動を添える。

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Posted by ブクログ 2018年02月12日

書店の皇室特集で購入。これが発表された当時にはまだぼくはその重大さがわかる歳ではなかったので初めて手にしたのだけど、いかに帝国憲法と現憲法の天皇の位置付けが異なるのか、やっと理解した気持ち。そして「ベトー」をとにかく避けて立憲君主たろうとする昭和天皇が、結論を現場役員から丸投げされて取締役会との整合...続きを読むに苦慮するオーナー企業の社長に見えてくるのはぼくだけか。

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Posted by ブクログ 2016年03月29日

戦後70年が経ても領土問題に揺れ戦争責任を問われ人権問題の矢面に立たされる日本であるが、国際社会からは世界の安定への貢献を求められている。国民のほとんどが戦争を知らない世代となったからこそ、「なぜ先の大戦が行われたのか」「対戦はどのように終結したのか」「戦前戦中の天皇の存在はどのようなものだったのか...続きを読む」を知りたくて手に取った。

良くも悪くも終戦以前の日本中枢がどのように動いていたのかがわかる。
また杉原千畝の本を並行して読んでいたこともあり、当時のアジア・ソ連・ドイツ情勢や外交官という仕事についても勉強になった。

とにかく戦慄したのは、最後の一文であった。
確かに、摂関政治が始まって以来の天皇の実権は失われ、時の権力者にそぐわなければ暗殺され天皇を他の皇族に挿げ替える歴史が、明治維新まで続いていた。
日本は大きな傷を負って第2次世界大戦の終結を迎えたが、もし天皇が大戦を拒否することにより他に天皇が移っていたならば、果たしてこれだけの傷で済んだのだろうかと…

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Posted by ブクログ 2013年09月06日

「昭和天皇が内輪話をされた、これはおもしろい、と思って読むのが一番素直」ではないかと座談会で伊藤隆が述べたようだが、そうだと思う。

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Posted by ブクログ 2012年05月01日

2次資料なので何とも言えないですが
天皇の政治的な置かれた立場や状況への見方など
大変興味深かった。

あとまず、昔の文章は格調高くて好き。

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Posted by ブクログ 2024年03月24日

独白録の内容よりもむしろ最後の座談会の方が意味があるように思われ。
独白録の読み方の正否ではなく、資料そのものへの冷静かつ構想力ある見方を歴史家と言われる方々がしているのか、その覚悟はあるのか、この方々に世論が左右されていないか、色々考えさせられる内容で、これを読むだけでも意味がある感ありです。

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Posted by ブクログ 2022年07月24日

昭和天皇がもしも病没せず、上皇として余生を送られたなら、歴史家なら誰でも ”あの日” の出来事をインタビューしたいことだろう。

いずれにせよ、昭和天皇はあの時代の大日本帝国に君臨したエンペラーであって、慈悲深い人格者というよりも、貪欲な支配者であったのだろう。

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Posted by ブクログ 2016年03月27日

かつて昭和天皇に仕えた男の記した日本語の資料が、遠くアメリカで発見される。
その男の妻はアメリカ人で、戦後祖国に戻り、日本語を読めない家族によって、一旦は焼いて処分されそうになったが、
日本の歴史研究家に内容解説を頼むことから、このような本になることとなる。

なんだこのTBSの2時間ドラマみたいな...続きを読む話(主演はシャーロット・ケイト・フォックス あたり)は!!

という実話です。

昭和初期から終戦までを昭和天皇の目線で、側近に語った内容。
今まで読んできた歴史の本のエピソードがじわじわと読んでいてキーワードとして光るようになってきた。
そしてこの本もその重層のひとつとなるのです。

未だにうまく人に説明できるレベルではないんですけどね。そこは一旦紙に書いてまとめないとだめそうだ。

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Posted by ブクログ 2016年03月02日

-2016/03/02
①昭和19年10月25日神風特別攻撃隊の第一弾を聞いた天皇のお言葉「そのようにせねばならなかったか、しかしよくやった」この一言に昭和天皇の立場と苦悩が表れている。②御前会議では議案を承認するだけである。異議を唱えればそれは専制君主とみなされるとともに誰かが詰め腹を切らされるの...続きを読むである。

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Posted by ブクログ 2015年12月04日

昭和を語る上では欠かせない太平洋戦争や、そこに至る事件や歴史に関わった要人に対する昭和天皇の率直な見解が記録されている第一級の資料。よくぞ残り、よくぞ発見されたものだ。
戦後70年かつ昭和天皇実録が発刊され、あの時代に対する注目は再び高まっている。本独白録が刊行されて25年となり、その内容や意義も咀...続きを読む嚼され尽くした感もあるが、本書に収録された91年の座談会は、当時の驚きや戸惑いを伝えていて、別の意味で面白い。

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Posted by ブクログ 2011年03月23日

 新たな地平を築き、目指すことももちろん大切だが、それ以上にいまある自分がどういう歴史の中から生まれだされたかを考えるためにいも、過去を振り返る必要がある。現代史を語る上で外せない必読的資料。かなり貴重だと思う。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

珍しく、というか、初めてかな?作者のクレジットされていない本を読むのは?
天皇に生まれてしまった人の苦悩が描かれている。明治生まれの人が書いたので、言葉遣いがかなり違う。そのくせ、思いがけない「今風」の仮名遣いをしていたり・・・
戦争時代は全てがキッチリ、くっきりじゃなかった、ということをはからずし...続きを読むも証明してくれた。(2007.7.14)

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

滝田さんがTVドラマ「マリコ」で演じた外交官、実在のその人が書き残した文書です。貴重な昭和史のA級資料です。

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