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天皇みずから「昭和」を生き生きと語っていた! 1990年12月号の月刊文藝春秋に掲載され、昭和天皇が自ら語った昭和史の瞬間として、内外に一大反響を巻き起こした第一級史料。 寺崎英成が記した「昭和天皇独白録」、寺崎のひとり娘マリコ・テラサキ・ミラーの「“遺産”の重み」の2部構成。 伊藤隆・児島襄・秦郁彦・半藤一利各氏による解説座談会も収録。
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Posted by ブクログ
この独白録が東京裁判で天皇の訴追を免れるために作成されたのではないかとの憶測(秦郁彦)があるが、真相はわからない。ただ仮にそうだとしても、関係者の日記等との整合性からみても、事実を捻じ曲げているとは考えにくい。と同時に回想録の類の常として、本人の評価を貶めるようなことは書かれていない。その意味で一定...続きを読むの留保は必要であるが、本人の肉声として概ね客観性を備えた歴史的資料と言えると思う。 日本が無条件降伏を受諾した唯一の条件は国体の護持である。それは昭和天皇の強い意思でもあった。逆に言えば国体の護持が保障されないなら最後まで戦っていたということであり、実際昭和天皇はそう発言している。この独白録で初めて明らかになった事実だが、これは何を意味するだろうか。 実権のない立憲君主という枠内ではあれ、昭和天皇が卓越した政治的理性とリアリズムを保持し、戦争回避に多大な努力を払っていたことは随所にうかがえる。自らの意思に反して開戦を余儀なくされ、頼れる重臣もなく苦悩する姿には同情を禁じ得ない。だがその昭和天皇も、ギリギリの段階で天皇制廃止と引き換えに国の破滅を回避するという選択肢はなかったということだ。 天皇とて一人の人間、それはあまりに苛酷な選択ではあろうし、天皇制なくして日本という国はないという思いもわからぬではない。結果として紙一重で国の破滅を回避できたし、天皇制も存続できたのは喜ぶべきことだが、この一点だけは割り切れないものとして残る。そう感じるのは私だけだろうか。
昭和天皇自身が、張作霖爆殺事件から終戦までの期間について語った記録。当時の様子が生々しく伝わってくる貴重な証言。 やはり興味深いのは、昭和天皇が立憲君主であったのか否かという点だろう。 天皇自身は自らを「立憲君主」と規定し、内閣の上奏するものはたとえ反対の意見を持っていても裁可、「もし己が好む所は裁...続きを読む可し、好まざるところは裁可しないとすれば、之は専制君主と何等異る所はない」と述べている。 一方で、「閣議決定に対し、意見は云ふが、『ベトー(veto)』云はぬ事にした」という発言からは、拒否権はあるのだが発動しないだけという考え方も見て取れる(実際に「この時(二・二六事件)と終戦の時との二回丈けは積極的に自分の考を実行させた」と指示を出している)。 また、「(御前会議は)「全く形式的なもので、天皇に会議の空気を支配する決定権は、ない」という発言や、「(開戦が決定した際)反対しても無駄だと思つたから、一言も云はなかった」という発言からは、君主として自らの考えを実行させることのできないフラストレーションが感じられる。 このような天皇の微妙なポジションは、丸山真男が言う「無責任の体系」の根幹をなすものだったのだろうか。
本の構成がすばらしい。 ?独白録、?マリコさんのエッセー、?討論会と多角的。 政治的な発言はネット上にはしない主義なので感想はひかえます。
独白録と寺崎氏の娘さんの手記、昭和史研究家の座談の三部構成。 独白録は要所の解説付きで読みやすい反面、ここで取り上げられない論点は忘れられがちになる誘導的な側面がある。ここで語られたことは例えば原爆や東京大空襲のように語られなかった事を陰画のように浮き彫りにする。 座談は昨今のように予定調和ではなく...続きを読む、相手をやり込めんばかりに白熱していて面白い。その後の研究成果もあり今では児島や伊藤のように素朴な回想として読むのは難しいのではないか。
戦前外交官を務め、戦後昭和天皇のお側に仕えた筆者が書き残した昭和天皇の太平洋戦争を振り返る独白録。本文書の位置付けについては解説で議論されており、何らかの意図を含んだものであったかもしれないが、天皇が何を思い、何を考えていたかを知れる興味深い一冊。 また、本書をめぐる筆者と妻、そしてそれを世に出した...続きを読む娘の家族の物語が感動を添える。
書店の皇室特集で購入。これが発表された当時にはまだぼくはその重大さがわかる歳ではなかったので初めて手にしたのだけど、いかに帝国憲法と現憲法の天皇の位置付けが異なるのか、やっと理解した気持ち。そして「ベトー」をとにかく避けて立憲君主たろうとする昭和天皇が、結論を現場役員から丸投げされて取締役会との整合...続きを読むに苦慮するオーナー企業の社長に見えてくるのはぼくだけか。
戦後70年が経ても領土問題に揺れ戦争責任を問われ人権問題の矢面に立たされる日本であるが、国際社会からは世界の安定への貢献を求められている。国民のほとんどが戦争を知らない世代となったからこそ、「なぜ先の大戦が行われたのか」「対戦はどのように終結したのか」「戦前戦中の天皇の存在はどのようなものだったのか...続きを読む」を知りたくて手に取った。 良くも悪くも終戦以前の日本中枢がどのように動いていたのかがわかる。 また杉原千畝の本を並行して読んでいたこともあり、当時のアジア・ソ連・ドイツ情勢や外交官という仕事についても勉強になった。 とにかく戦慄したのは、最後の一文であった。 確かに、摂関政治が始まって以来の天皇の実権は失われ、時の権力者にそぐわなければ暗殺され天皇を他の皇族に挿げ替える歴史が、明治維新まで続いていた。 日本は大きな傷を負って第2次世界大戦の終結を迎えたが、もし天皇が大戦を拒否することにより他に天皇が移っていたならば、果たしてこれだけの傷で済んだのだろうかと…
「昭和天皇が内輪話をされた、これはおもしろい、と思って読むのが一番素直」ではないかと座談会で伊藤隆が述べたようだが、そうだと思う。
2次資料なので何とも言えないですが 天皇の政治的な置かれた立場や状況への見方など 大変興味深かった。 あとまず、昔の文章は格調高くて好き。
独白録の内容よりもむしろ最後の座談会の方が意味があるように思われ。 独白録の読み方の正否ではなく、資料そのものへの冷静かつ構想力ある見方を歴史家と言われる方々がしているのか、その覚悟はあるのか、この方々に世論が左右されていないか、色々考えさせられる内容で、これを読むだけでも意味がある感ありです。
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