梶龍雄のレビュー一覧
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● 感想
時代背景としては、昭和23年頃。終戦直後、京都にあった三高において、「リア王」というあだ名で呼ばれていた伊場富三という学生が殺害される。扉が施錠されており、その鍵を持っていて、明確なアリバイがなかったのは「ボン」というあだ名で呼ばれる木津武志。ボンにも一応のアリバイはあるが、京都を案内した老夫婦と宴会をしていたというもの。しかし、その宴会をしていた場所では、そのような宴会はなかったという。
三高のボンの仲間は、ボンの疑いを晴らそうとする。ボンは、何らかの企みによりアリバイがない状態で犯人にされようとしている。前半部分の探偵役である「カミソリ」というあだ名の紙谷達弘のおかげで、酒宴 -
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戦時中、疎開先で事故死したと思っていた弟。しかし母が死に際に、弟は殺されたのだと告げる。その真相を知るために山蔵を訪れた智一に降りかかる新たな事件。ばりばりの本格ミステリです。
一見したところ地味かなあ、という気がしました。こういうのっていかにも因習漂う村、とかを期待しますが、それほどでもないような。もっとどろどろしたのを期待してたんだけど、案外と読み口もライトだし、コンクリートの欠陥とかそういう要素はちょっと苦手だし、前評判の期待が大きすぎたかな、ってのでなかなか遅々として読み進まなかったのですが。
……いや、さすがの解決編でした。やられた! 伏線たっぷり、物理トリックはあるしそれ意外にもト -
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ネタバレ● 感想
1977年に「透明な季節」で乱歩賞を取っているが、著作が絶版で古書価格が高騰している梶龍雄の代表作の1つ。徳間の特選で復刊され、期待して読んだ。期待が高すぎたため、期待以上とまではいかなかったが、満足できるデキではあった。
メイントリックは、2つの人物入れ替えトリック。仲城秀二は妙見義典となり、妙見義典は「竜神池の小さな死体」となる。その後、23歳の頃に、大柏たえという人物の息子を殺害。別の人物=黒岩教授になりすます。
AがBになりすまし、さらにCに成りすますという二重の人物入れ替えトリック。
秀次の死の真相解明のほかに、コンクリートブロックの亀裂の実験があり、そもそも、この実 -
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第23回江戸川乱歩賞を受賞した梶龍雄氏の長篇第一作。太平洋戦争末期、中学の配属将校が射殺された事件をきっかけに、主人公・高志は彼の妻である薫に淡い恋心を抱いていく……推理小説の形式を取りながらも、卓越した筆力で戦時下における青少年の心理状態を鮮烈に描き出した名作である。本作では《戦時中》という特殊な状況が作品全体を貫いて作用しており、時局の変化に左右される国民の姿が生々しく描かれている。当然、そうした背景は殺人事件にも大きく影響している。序盤こそ諸田少尉の死を中心に物語は展開するが、中盤以降は主人公が抱く未亡人薫への恋慕が物語の軸となる。戦局が激しくなるにつれて所轄署の捜査も中断を余儀なくされ
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ことに会話文がそうなのだけれど、文章が少し生硬な感じで、ちょっと読みにくい気がする。昔の国産ミステリは女性の描き方がめちゃくちゃなことが多いが、本作はそういうことはなく、探偵役を務める美緒嬢など魅力的。その代わりというのも変だが、主人公の感情の振り幅が大きすぎて、ついて行けないところがある。終盤、主人公はある人物に怒りを爆発させるのだけれど、それが唐突に過ぎる。確かに相手の人物は怒られても仕方のないことをしているのだが、それまで主人公がむしろ家族に対しても冷淡な人物として描写されてきただけに、無理矢理な感じは残る。ミステリとしては、意外な動機+大ネタで、そう来るかという感じ。