島村恭則のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本は民俗学では身近な事例を上げて民俗学とはどういうものかと教えてくれる。ちょっと興味を持ったから読んでみた程度の私にはぴったりの本だった。
〇〇学というのはもっと堅苦しく、難しいイメージがあった。
民俗学も深入りすればその他の学問同様に、それを学ぶ人以外には理解できない部分もあるのかもしれない。
でも今はこのくらいでちょうどいい。
まさか家でのおまじない的なことまで民俗学の対象になるとは思わなかった。その家独自のものだと思っていたおまじないが、他の多くの家でも少し形を変えて行われている。さらに元を辿れば何故それをするのか理由がある。
もっと学生たちの家での習慣の話なども聞いてみたかった。
紹介されていた事例以外にももっと共通のおまじないやルールが出てきそうである。 -
Posted by ブクログ
目次を見るととても興味深い題材ばかりなのだが、
見開きで1項目、その大部分が写真と絵なので、内容説明がびっくりするほど薄かった。
ほぼ常識レベルというか、初級レベルですら無く本当に「入門」といった感じ。これって誰でも知ってることじゃ??
本当に全く何も知らない人向け。外国人向けに日本の慣習をサラッと紹介するには適しているかも。そのくらい内容薄いです。
とはいえ、つまらないかといったらそうでもなく、
意外と図や写真の注釈の方に重要なことがサラッと書かれているものもあったりする。
編者が島村恭則さん、関西学院大学の社会学部部長であり教授。
これでちょっと思ったのだけど、それぞれの項目の執筆者が結構な人数がおられるので、ひょっとしてゼミ生or卒業生に協力してもらった本??と感じてしまうほど。
でも卒論でもこのレベルじゃ不可でしょ…という内容の薄さ。
1項目あたり見開き分しかない、というのが主たる原因かと思うが、個々の題材が面白いだけに文章の少なさが非常にもったいない。
でもよくよく考えたら「入門」なので、ここで何か興味を持てる項目に出会えたら、次はそれに関する詳しい本を読めばいいのかも。
そう思うと、民俗学のカタログとしては優秀かと。
うん、カタログだわコレ。
カタログとか、民俗学ってこういうことやる分野だよーって周知させるにはちょうどいいかも。
小学高学年〜高校生くらいには結構オススメ -
Posted by ブクログ
序章の概説でしっかり眺め渡した上で、第1部以降、知識を現代にアップデートしていく。
確かに「俗」=ヴァナキュラーと置き換えて理解することで、ぐっと裾野が広がる。
田舎の昔話だけが対象ではなくなるのだ。
西日本の事例が多いのも嬉しい。
岸政彦・編「東京の生活史」も隣接しているのではないか。
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《目次》
序章 ヴァナキュラーとは〈俗〉である
1 私と民俗学
お祈り癖/ごみ収集車の調査/死が怖い/民俗学と出会う/沖縄に行く/韓国で暮らす/日本での研究
2 民俗学とはどのような学問か?
民俗学はドイツで生まれた/対覇権主義の学問/日本の民俗学
3 ヴァナキュラー
ヴァナキュラーとは?/フォークロアからヴァナキュラーへ/民俗学は現代学
第1部 身近なヴァナキュラー
第1章 知られざる「家庭の中のヴァナキュラー」
お母さんが創り出した化け物/気仙沼の海神様/わが家だけのルール
靴のおまじない
第2章 キャンパスのヴァナキュラー
関学七不思議/キャンパス用語/運動部の曲がり角の挨拶
「こんにちはです」/目覚ましは「ごみの歌」
第3章 働く人たちのヴァナキュラー
1 消防士のヴァナキュラー
アメリカの消防署/消防うどん/消防めし
2 トラックドライバーのヴァナキュラー
トラックドライバーの挨拶/CB無線での会話
3 鉄道民俗学
駅の池庭/段四郎大明神/特急「はと」と青葉荘/切符売りおばさん
4 水道マンのヴァナキュラー
5 裁判官にもあるヴァナキュラー
裁判官の口頭伝承/「伝承」と民俗学
6 OLの抵抗行為
【コラム①】ヴァナキュラーな時間
第2部 ローカルとグローバル
第4章 喫茶店モーニング習慣の謎
1 日本各地のモーニング
愛知県豊橋市/名古屋市/愛知県一宮市/大阪府東大阪市/大阪市生野区
大阪市西区/兵庫県尼崎市/神戸市長田区/広島市中区/愛媛県松山市
2 アジアの「モーニング」
香港は飲茶/ベトナムはフォーやソイ/プノンペンはかゆ
バンコクはいつも外食/シンガポールのセルフカフェ
3 モーニングをめぐる考察
なぜ行われるのか?/日本での分布/モーニングの歴史
アジアの中のモーニング/「ヴァナキュラーな公共圏」 としてのモーニング
第5章 B級グルメはどこから来たか?
引揚者の円盤餃子/じゃじゃ麵/別府冷麵/遠野のジンギスカン
芦別のガタタン/室蘭のやきとり/みそ焼きうどん/モーレツ紅茶
【コラム②】なぜ大晦日の夜に「おせち料理」を食べるのか?
第6章 水の上で暮らす人びと
香港の水上レストラン/家船の暮らし/行商船と運搬船/家船の陸上がり
艀乗りからバスの運転手へ/かき船/かき船の陸上がり/ロンドンの運河と水上生活者
第7章 宗教的ヴァナキュラー
1 パワーストーンとパワースポット
パワーストーンを信じるか?/個人的パワースポット
2 フォークロレスクとオステンション
ぼんぼり祭り/肘神様/アマビエ・ブーム
3 グローバル・ヴァナキュラーとしてのイナリ信仰
【コラム③】現代の「座敷わらし」
【コラム④】初詣で並ぶ必要はあるのか?
おわりに
次に何を読んだらよいか/民俗学を大学・大学院で学ぶには/地域で民俗学を学びたい場合
注 -
Posted by ブクログ
民俗学を古くさいイメージから解き放つ、という著者の試みは成功しているだろうと思う。ただその試みに終始した感は否めない。
構成としても、民俗学を取り巻く現状を述べた序章を除く1〜7章すべてが身の回りの民俗学的事例(=「ヴァナキュラー」)のエピソード的紹介に割かれ、そこから導かれる考察や分析は簡潔なものにとどまる。
一つ一つの事例が興味深くはあるため読み進める苦労は少ないが、読み終えたところで雑学がいくつか増えたかな、と思えるだけというのが正直な感想である。
と、読み進める間はここまで述べたような批判的な見方をしていたが、「おわりに」の著者の記述にハッとさせられた。曰く、民俗学は『在野の学問』であり、学会員の多くが非研究者である、誰でも参加可能な学問である、と。
だとすれば一見冗長に思えた無名の人々の記述(B級グルメ発祥の店の創業秘話、消防士やトラック運転手の仲間内での「あるある」など)は、そこから何か遠大な理論を見つけ出して学術的な議論を深めるための素材というよりは、たまたま民俗学により保存された物語であり、それ自体が鑑賞すべき成果であることにも納得がいく。
また本書自体も、学問知識の伝達というより、社会のあらゆる人に民俗学の門戸を開く、というただそれだけのメッセージを一貫して発信している本と捉えるのがよいのだろう。
以上のようなことを思うに、私のように「民俗学的思考」といったいわゆるディシプリンを求めて本書を手に取ると、学ぶべきところの少ない本だったと落胆するかもしれない。ただそれでも、とことん「在野」を突き詰めるという民俗学の気迫を感じさせる、意義ある本だと思う。 -
Posted by ブクログ
民俗学というと、農山漁村に古くから伝わる民間伝承や口頭伝承を研究する学問だと思われていることが多い。
だが、本書では、現在の民俗学はそのようなものでなく、もっと広くて現実的な世界があると論じる。
著者によると民俗学の概念は①支配権力になじまない②啓蒙主義的な合理性では割りきれない③「普遍」、「主流」、「中心」とされる立場にはなじまない等の要素を持つ。
柳田國男の「遠野物語」の冒頭に「願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」という言葉が出てくる。著者は、この言葉で「普遍」、「覇権」、「主流」といった立場から啓蒙主義的に「非合理的なもの」として切り捨てられる世界(遠野地方)の存在を「平地人(啓蒙主義的思考のもとで近代化に邁進する都市住民)」に突きつけたと解釈する。
また、「歴史学が人類の主要な道筋を辿る学問であるのに対して、民俗学は枝道や毛細管のように張りめぐらされた小路を知る学問」という学者の見解も示している。
序章に示されているこのような概念的な話は、一般人がにわかに理解することは難しい。また、民俗学のキーワードが「フォークロア」(人々の知識)からヴァナキュラー(俗)に交代しつつあることから、本書の中では、その表現が多く使われるが、これももう一つピンとこない。
著者は、これらについて、読者にできるだけ実感させるよう、第1章以降、現在における事例をたっぷり盛り込んでいる。主なものを書き出すと以下の通り。
・現在の家庭にも「新しい靴を昼以降におろすときのおまじない」(午後の野辺送りを忌み嫌うなごり)が残っている
・著者の職場である関学大には学生にしか通じない七不思議(キャンパスヴァナキュラー)がある
・JR東海道線高槻駅と山崎駅の間にある結核療養所の患者や職員が手を振る行為に食堂車会計課係が手を振って応えた行動が繰り返され拡大した
・独自の技を持ったプロの職人集団としての水道マンの暮らしの中から替え歌「水道数え唄」が生まれた
これら以外にも「喫茶店モーニング」、「B級グルメ」、水上生活者など時代や地域、社会生活の現実の中から生まれたヴァナキュラーがこれでもかと紹介される。
それらは確かに啓蒙主義的合理性で割りきれない、また、理性的・論理的であることは求められないものばかりである。
ただ、常人には、興味深い話であるものの、単に文化・風習・生活習慣を面白く紹介している本であるとしか感じられない気もした。関学大の著者が受け持つゼミのフィールドワークは面白そうで一員となり参加したいとも思ったが。