ヴィルジニーデパントのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
面白かった。いろんなフェミニズム本を読んできたけど、ここまで主観で語られてるものはなかった。怒りの強さと語りの激しさに最初はちょっとひるんだけど、読んでるうちにそれ自体がこの本の本質なんだってわかってくる。めちゃくちゃエキサイティングだった。
ポルノにおいて男は女に自己投影してる、っていう考察はすごく納得したし、女がオナニーをしないことで自分の妄想や欲望に向き合わないままでいる、という指摘にはドキッとした。自分の嗜好を知ったのはオナニーを通してだったってのはあるよなあ。
そして、レイプされた経験や売春の経験まで語っていて、そこからしか出てこない視点がたくさんある。それがすごく貴重だし、勇気 -
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Posted by ブクログ
セックスワークイズワークには同意できないのでずっと避けていた本だが読んで良かった。洞察力にあふれた言葉がこれまで言語化できてなかった感情に名前をつけてくれる。
ただ、やはりセックスワークイズワークの理屈は最後までさっぱり理解出来なかった。売春はどれほど条件が整備されていても解離症状が出ていないかぎり自ら進んで従事できるものではない。それがもし万人にとって苦痛をともなわない行為ならば、それこそ男性自身がすでにまともな仕事として売春に従事し、整備しているはずだろう。
著者にとっても売春行為は事件のトラウマを克服するための戦いであり、一種の自傷行為だとしか読めなかった。それ自体は痛々しいけれど、 -
Posted by ブクログ
痛快!だけどシリアス。
『家事や育児のように、女性の性サービスは無償でなければならない。金は自立を意味する。売春がモラルを乱すのは、女性がそこに喜びを見出さないからではなく、女性が家の外で自分で金を稼ぐからだ。』
セックスワークイズワーク、という言葉があるけど、それが正しいか私にはわからない。著者は賛成の立場のようだけど、中毒のようなものだとも書いてる。
『女らしさとはすなわち、ご機嫌取りだ。服従の技法。』
結婚していく友人たちが、思ってもないくせに、新妻気分でこんなことを口にする。「もう結婚するから、旅行なんかも気軽に行けなくなるでしょう?」そんなこと思ってないでしょ、というと今はまだ笑っ -
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Posted by ブクログ
ネタバレフェミニズムについて、フランスの本。
気になったところ覚書とつらつら感想。
「無理やり足を開かれても絶対に男を傷つけるなと教える一方で、レイプという犯罪から立ち直ることは絶対にできないと私に吹き込んだ社会に対して怒っている」
本当に、性被害について、社会は、被害者はこう感じるべきを押し付けすぎ。
「傷ついて恥と思って人前で語れる訳が無い」とか。
うるせえクソやろう法の裁きを受けろ、と感じて、全然良いじゃない。
むしろそう感じられる人が増えるよう、社会が変わるべきでは。なぜ被害を受けたのが恥なのか。
「女性の性サービスは無償でなければならない。金は自立を意味する。売春がモラルを乱すのは、女性 -
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Posted by ブクログ
本書は、「フランスの人気女性作家ヴィルジニー・デパントが、17歳のときに受けたレイプ被害や個人売春の経験をもとに、性暴力や売春、ポルノの本質について独自のフェニズム理論を展開する自伝的エッセイ」(訳者あとがき)である。
著者の怒り、ストレートな物言いが、現在の男と女の関係に安住しているオトコの自分にグサッ、グサッと刺さってくる。非対称の関係で権力を持つ立場にいる男の自分が気づいていないこと、当たり前だと思っていることについて、著者の舌鋒が迫ってくる。
著者の主張を全て肯うものではないし、著者の言う「男の支配と折り合いをつけるのがうまい女たち」をつい可愛く思ってしまうが、少しずつでも変わ -
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ネタバレ第3章 堕落しきったこの女をレイプすることはできない
p46
逆に、1960年代のアルジェリア戦争以来フランスの男が戦争に行っていないせいで、「民間人」へのレイプは確実に増加している。
p49
警官どもの法律は、男の法律だ。
p67
レイプはなによりもまず、「男の性欲は本人にはどうすることもできず、男はそれを制御することができない」という認識を伝える媒体の役割を果たす。
p71
本で読んだ通りなら、これはレイプのトラウマよりも戦争のトラウマに近いものだ。死の可能性、死との距離の近さ、非人間的な憎悪を他者から浴びせられること。
第4章 敵と寝る
p115
小説のなかにはたくさんの娼婦が出 -
Posted by ブクログ
フランスの女性作家ヴィルジニー・デパントによるフェミニズム・エッセイ。
「私はブスの側から書いている。ブスのために、ババアのために、男みたいな女のために、不感症の女、欲求不満の女、セックスの対象にならない女、ヒステリーの女、バカな女、「いい女」市場から排除されたすべての女らしさたちのために。」
冒頭からファイティングポーズな文体にしびれます。巻末の著者写真を見ると、彼女は決してブスではなく、その存在感がめちゃくちゃかっこいいんですが、そもそも著者の外見について論じるようなルッキズムくそくらえみたいな本です。
MeToo運動が起こったときに、「男性には女性を口説く権利がある」と反論し -
Posted by ブクログ
『キングコング・セオリー』ヴィルジニー・デパント、相川千尋訳、2020/11/26、柏書房
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リズムのよい文体と率直な文章が心地よいフェミニズムの書。まだ勉強を始めたばかりで細かい議論に関しては全体像を把握し切れていない部分もあるけれど、一つの視点を知ることができたのはとても大きい。
最近日本で売られているフランスの女性作家による小説というと『三つ編み』や『彼女たちの部屋』くらいしか知らないのだけど、この本の作者の作品も読みたいと思った。 -
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