マーク W モフェットのレビュー一覧

  • 人はなぜ憎しみあうのか  「群れ」の生物学 下

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    国家という形の社会は永続的なものだ、と錯覚してしまうのは、私が日本という国にアイデンティティがあるからなのかもしれない。本書を読んでいてそのように思い至った。
    世界に目を向ければ、「国」というものは決して安定していないということがわかる。国を連帯させたもの、たとえばEUなどはなおさらだ。
    長い目で見れば必ず終わりがある「社会」。ではなぜ社会などというものがあるのか思いを馳せてしまう。
    単純に読み物として面白いし、社会というものへの認識に一石を投じてくれる、実に学びの深い一冊。

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    2021年06月12日
  • 人はなぜ憎しみあうのか  「群れ」の生物学 上

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    人間だからこその産物、と思いこんでいた「社会」というものは、実は他にも形成している生物がいるというだけでもまず驚きだった。そして、社会という観点では人間よりも進んでいる種がある、ということも。
    上巻の終盤はいささか気が滅入る内容だが、それにしてもエキサイティングな本だ。
    人間の外側から人間を知る、というアプローチは、案外よいのかもしれない。

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    2021年05月27日
  • 人はなぜ憎しみあうのか  「群れ」の生物学 上

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    アリも人間も目印で仲間とそうでない者とを見分け、それによって組織を形成している。アリはにおいで、人間は目印で。人間の群れは匿名であることを許し、だからこそ巨大な組織化が可能であったとする。

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    2025年07月22日
  • 人はなぜ憎しみあうのか  「群れ」の生物学 上

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    下巻と纏めて。

    ダンバー数、社会の意味、匿名社会、しるし。最適弁別性やしるしに関する言及、EUに関する視点は、非常に納得。

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    2025年02月21日
  • 人はなぜ憎しみあうのか  「群れ」の生物学 下

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    戦争が、国家を再定義し、修正してきた。本書をこんな論旨で読んだ。

    極力多めの仲間を持つことが、「資源の獲得や自己防衛」に対し有効である。そのようにして、集団化が進んでいく。文明が進みにつれ、この集団化が国家という形をとって膠着しつつあるが、その揺らぎこそが「戦争状態」である。国単位でみればこうした現象論は非常に納得感があるが、そもそもこれは個人単位、部族単位で発生していた内容。その原点や名残、というのがある。それが「言葉」であり「儀式」であるのだろう。

    ― アイデンティティの融合としての儀式。儀式に参加する者たちは、自分自身と集団とそのメンバーたちを全く同一のものとみなす。模倣することが難

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    2024年11月06日
  • 人はなぜ憎しみあうのか  「群れ」の生物学 上

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    憎しみについて。妬み、僻み、嫉みみたいな個人目線の話ではなくて、集団対集団に関して。上巻では、嫌悪感の原型を探るにあたり、「集団はどのように形成されるのか」違う言い方をすると「仲間意識はどのように形成されるのか」を考えていく。敵を認識するには、まずは味方をどうやって認識したのか、という話。

    読みやすいし、面白い。そういう考え方もあるよなーという気付きも。例えば、集団内の序列化について。〝個々の体や知能の資質から序列が一旦定まると対立が少なくなる。それにより全員が恩恵を受ける。地位が決まらなければ、いつまでも争いを続けることになる。それはコスパが悪い“まあ、ただその序列が気に食わなかったら延々

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    2024年11月03日
  • 人はなぜ憎しみあうのか  「群れ」の生物学 下

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    ユヴァルノアハラリのサピエンス全史と重ね合わせるように読み進めていった。
    ハラリは、人間の特殊性を「虚構を信じる力」にあるとし、これによって種として圧倒的繁栄を実現したことを論じつつ、個体としての幸せは種としての繁栄とは連動しないと説く。そして、虚構は繁栄と幸福のための極めて有意義な手段であって、虚構のために不幸になることのないように、俯瞰的な観点から助言してくれる。

    一方、本書は、著者のマークWモフェットの専門であるアリとの共通点と相違点を説明しながら、人間とアリだけが匿名性社会を形成できるが、化学物質によりこれを実現するアリに対して、人間は恣意的なしるしによってこれを実現すること、そして

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    2020年12月03日