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人間は社会に属することで一つの集団としての属性を強める一方で、集団外の人を違うものとみなして敵視することがある。他の生物と比較して、なぜ人間は小さな違いにこだわり、仲間と敵を区別するのか。人間社会の成り立ちを生物学的な見地から解き明かす。
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Posted by ブクログ
人間だからこその産物、と思いこんでいた「社会」というものは、実は他にも形成している生物がいるというだけでもまず驚きだった。そして、社会という観点では人間よりも進んでいる種がある、ということも。 上巻の終盤はいささか気が滅入る内容だが、それにしてもエキサイティングな本だ。 人間の外側から人間を知る、と...続きを読むいうアプローチは、案外よいのかもしれない。
アリも人間も目印で仲間とそうでない者とを見分け、それによって組織を形成している。アリはにおいで、人間は目印で。人間の群れは匿名であることを許し、だからこそ巨大な組織化が可能であったとする。
下巻と纏めて。 ダンバー数、社会の意味、匿名社会、しるし。最適弁別性やしるしに関する言及、EUに関する視点は、非常に納得。
憎しみについて。妬み、僻み、嫉みみたいな個人目線の話ではなくて、集団対集団に関して。上巻では、嫌悪感の原型を探るにあたり、「集団はどのように形成されるのか」違う言い方をすると「仲間意識はどのように形成されるのか」を考えていく。敵を認識するには、まずは味方をどうやって認識したのか、という話。 読みや...続きを読むすいし、面白い。そういう考え方もあるよなーという気付きも。例えば、集団内の序列化について。〝個々の体や知能の資質から序列が一旦定まると対立が少なくなる。それにより全員が恩恵を受ける。地位が決まらなければ、いつまでも争いを続けることになる。それはコスパが悪い“まあ、ただその序列が気に食わなかったら延々とコスパの悪い状況が続きそうだが。 フラッと喫茶店に入る。見知らぬ人ばかり。そこで誰も騒ぎ立てずに席につけるのは人間特有の進化だと。確かに、そこに熊がいれば命が危うい。知らない犬同士だと吠えまくる。人間は、会話もせずに、彼らは安全、仲間であると見抜く。 しるしを認識する。 ー 私たちが用いる社会のしるしはとても明確なものなので、自身ではしるしを使わない種がその一部を察知できることもある。ゾウは、人間の部族を見分けて行動を予測する。ケニアのゾウは、通過儀礼として厚皮動物(ソウ、カバ、サイなど)を槍で突くマサイを恐れるが、ゾウを傷つけないカンバには無関心だ。マサイが近づいてくるとゾウは背の高い草のなかに隠れる。おそらく、食べる物が牛肉中心であるマサイの体臭と野菜を好むカンバの体臭とを区別できるからだろう。においとは関係なく服装からも見分けられるようで、マサイが好む赤の布に突撃していくこともある。 しるしの最たるものが〝言語“なのだ。この主張は、私も予てより思っていた事で、よく分かる。訛りは、自他の区別に役立つし、一定年齢を過ぎると外国語のイントネーションは完全には模倣できない。そして〝言語“こそ、人を序列化させる真犯人であり、試金石である。 ー ここで重要なのは、複数のしるしを組み合わせて使うことで、言葉を発するのを聞かずとも、社会に属していない者を発見することができるということだ。それにもかかわらず、言語は、人間のアイデンティティのしるしとして際立っている。言語や方言は、子どもの頃からそれを学んで育たなければ、正確に再現することがほとんど不可能だ。こうした特徴があることから、人々のなかからよそ者をあぶり出すために、言語がしばしば最も優先的に使われる。旧約聖書の土師記には、ギレアドの兵士たちが、わずかに異なるなまりを話したイスラエル人を根絶やしにしたという話が記されている。 ー 人々はいつでもいたるところで大勢の人に届く声で話をしており、そのなまりからすぐさま、その土地の人間であるかよそ者であるかがわかる。アイデンティティの他の側面には、このように瞬時に直観的な反応が引き出されるようなものはほとんどない。 下巻も楽しみだ。
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人はなぜ憎しみあうのか 「群れ」の生物学
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