秋田茂のレビュー一覧
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この本は、新書ですが400頁以上あるので読み応えありますが、プロ執筆者に語って作成されているのでとても読み易い本でした。
イギリスという国はとても不思議な国で、どうしてこんな小さな国がこれほど大きな影響力を世界史に長い間及ぼし続けてこれたのでしょうか?16世紀にはヨーロッパの片田舎でしかなかった小さな島国が17世紀にはピューリタン革命やら名誉革命によって立憲君主制に脱皮し、スペインの無敵艦隊を破り、オランダの覇権を打倒し、フランスやスペインの新大陸の植民地を奪って、世界帝国となるのだから凄い。日本はかつて豊臣秀吉が「唐入り」をしてみたり、「大東亜文化圏」なんて戯言をほざいたりしましたが、瞬 -
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歴史に残る名著! 国家戦略の苦手な日本人には必読の書。
日本は受け身で追い詰められたときは「土俵際の危機意識」で「戦略的」に動ける。
若いリーダーが存分に活躍できる。
ただ平時が続くと「老人が跋扈し」、体制の硬直化が進み、国は滅びに向かう。
世界史の中で、同じ島国で2流国から世界帝国に飛躍し、世界システムを革新しつつ堅持した英国の歴史は大いに勉強すべきテーマ。
日本人の学者がこれだけの書を組み立てられたのは素晴らしい!
2023/12/21 「イギリス帝国盛衰史」秋田茂☆「グローバルヒストリー」
各国史→世界史は一体 各国はもっとつながり
日本史も中国・朝鮮・東南アジアなどとの相互交流・影響受 -
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イギリス帝国史が専門の秋田茂氏とカナダ史が専門の細川道久氏の共著である本書は、第1次世界大戦勃発当時に起きた「駒形丸事件」を通してインド太平洋世界の創出とイギリス帝国の変容を描き出そうとするものである。「駒形丸事件」とは日本の海運会社が保有する駒形丸(船籍は関東州:日本の非公式帝国)がインド人移民をカナダのバンクーバーまで乗せて行ったものの上陸を拒否され、さらに帰路コルカタで20人近くが虐殺されるという悲劇(バッジ・バッジの騒乱)を引き起こした事件である。どうしてそのような悲劇が起きるに至ったかについての詳細は本書をお読みいただくしかないが、本書はこの忘れられた事件を通じてグローバル・ヒストリ
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「駒形丸事件」──第一次世界大戦勃発時、カナダ・バンクーバーでインド人移民が上陸を拒否され、さらに送還先のコルコタで虐殺されたという事件があった。本書は、一般には殆ど知られていないこの事件をノードとして、グローバル/ローカル、ナショナル/リージョナルとして理解されてきた多層な歴史観を相互に関連づけ、立ち現れる新しい視点から世界を照射しようとする試み。これが学術書などでなく、新書という親しみやすいメディアで世に問われることを何よりも評価したいと思う。地味ではあるけども、それを知ることによって視界がグッと開けるようなワン・イシュー。これを手軽に紹介できるというのが新書の醍醐味であり、本書のテーマ
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17世紀にはじまる大英帝国の衰亡を、とくにインドを中心としたアジア方面の経済を軸に論じている。世界の四分の一を支配した大帝国も、時の移ろいとともにヘゲモニー(覇権)を米国に譲り渡すととなったが、本書は、そこまでの帝国の確立、膨張、運営、破たん、衰亡に、公式帝国、非公式帝国の観念を織り交ぜながら、いかに経済が大きなウェイトを占めていたか、ということを理解させてくれる。当時のヨーロッパ情勢はほぼ出てこないが、それは、世界最強の軍事力を持った大英帝国が、政戦両略をもってヨーロッパ各国の思惑をはねのけてきたためともいえる。唯一フランスに付け込まれて誕生した米国が、ヘゲモニーを受け継ぐことになるのは、皮
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[唯一無二のヘゲモニー]かつて世界の陸地の約四分の一と海洋を支配したイギリス帝国。帝国から植民地という垂直関係だけではなく、両者の相互関係の中でイギリス帝国がどのような影響力を与え、そして与えられたかを、特にアジア地域との関係性の中で幅広く考察していく作品です。著者は、イギリス関係の著作を幅広く世に送り続けている秋田茂。
イギリス帝国の幅広い顔が見えてくる一冊。単なる歴史の「強者」としてのイギリスではなく、ヘゲモニー国家として世界史的役割を果たした存在として捉える視線が非常に興味深い。特に、自由貿易体制や通信網の整備など、誰にとってもプラスになる国際公共財を提供しながら自国の影響力を高めて -
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秋田茂氏によるイギリス帝国の構造とその盛衰についての著作です。
本書では「長い18世紀」から現代に至るまでのイギリス帝国について、主に経済面から歴史学の研究成果に触れながら考察を行っていきます。
さらに副題にもあるようにイギリス帝国の経済ネットワークとアジア各国との関わりについても検討を加えていきます。
本書のイギリス帝国についての語りにおいて特徴的なのは、ヨーロッパ中心的な検討から脱した現在の歴史学研究を参照することによって、イギリス帝国の内部について「イギリス本国」と「植民地」といった形骸的な見方の中では隠されていた多様な経済的関係が紹介されていることでしょう。
例えばイギリス本国にお -
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ネタバレP.59-62 七年戦争による財政赤字と負債の増大があまりに急激であったために、その負担の一部を北米植民地に転嫁せざるを得ない状況に追い込まれたのである。
こうして本国政府は1765年に、法律・商業関連の文書だけでなく、新聞や書籍など印刷物全てに本国発行の印紙を貼ることを義務付けた印紙法を導入した。植民地側が「代表なくして課税なし」の論理で同法に激しく反対したことはよく知られている。印紙法は現地植民地の反対で、翌66年に撤廃に追い込まれた。
しかし本国政府は67年に、蔵相タウンゼンドが別の形の増税策として、茶、ガラス、紙、ペンキ、鉛に輸入関税を課した(タウンゼンド諸法)
(中略)
イギリス商品 -
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ネタバレかなり読むのに時間がかかってしまった。中世の終わりから現代までのイギリスを中心とした世界史を駆け足で辿っていく感じ。何年に何が合って…と形式的な記述が多いため世界史の年表がざっくりにでも頭に入っていないと読みにくいし、内容の理解もいまいちになってしまう。
植民地時代のイギリスは圧倒的な権力で支配していたのかと思っていたが実際には軍事力では解決できないことも多く、外交の駆け引きなど複雑なやりとりがあった。現在はアメリカにヘゲモニー国家の地位をとって代わられたが、イギリス帝国の遺産は現在も世界に大きな影響力を持っていることにも注目したい。
教科書で教わるような歴史認識が近年見直されているよう