秋田茂のレビュー一覧
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この本は、新書ですが400頁以上あるので読み応えありますが、プロ執筆者に語って作成されているのでとても読み易い本でした。
イギリスという国はとても不思議な国で、どうしてこんな小さな国がこれほど大きな影響力を世界史に長い間及ぼし続けてこれたのでしょうか?16世紀にはヨーロッパの片田舎でしかなかった小さな島国が17世紀にはピューリタン革命やら名誉革命によって立憲君主制に脱皮し、スペインの無敵艦隊を破り、オランダの覇権を打倒し、フランスやスペインの新大陸の植民地を奪って、世界帝国となるのだから凄い。日本はかつて豊臣秀吉が「唐入り」をしてみたり、「大東亜文化圏」なんて戯言をほざいたりしましたが、瞬間的に失敗していました。ところがイギリスは18世紀から世界大恐慌の頃まで覇権国家として世界に君臨したのだから凄いですよね。
不思議なことですが、いくら権勢を誇っても、いくら国家として他国からの搾取を重ねても、国家に残るのは借金の山でしかないのはどうしてなのでしょうか?ローマ帝国もスペイン帝国も大英帝国もそうなのです。所詮国家は器でありそれを利用して大儲けしている個人や会社があるのですね。
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歴史に残る名著! 国家戦略の苦手な日本人には必読の書。
日本は受け身で追い詰められたときは「土俵際の危機意識」で「戦略的」に動ける。
若いリーダーが存分に活躍できる。
ただ平時が続くと「老人が跋扈し」、体制の硬直化が進み、国は滅びに向かう。
世界史の中で、同じ島国で2流国から世界帝国に飛躍し、世界システムを革新しつつ堅持した英国の歴史は大いに勉強すべきテーマ。
日本人の学者がこれだけの書を組み立てられたのは素晴らしい!
2023/12/21 「イギリス帝国盛衰史」秋田茂☆「グローバルヒストリー」
各国史→世界史は一体 各国はもっとつながり
日本史も中国・朝鮮・東南アジアなどとの相互交流・影響受けている
ヨーロッパとも深い交流 スペイン・ポルトガル・オランダetc.
それにしても「大英帝国」はどうしてこれほど成功したのか?
経営人材のミッション・ステータスが高く、有為な人材がエントリーした
「エリート層をどの分野に向けるのか」国家の盛衰を決定する
Cf大英帝国衰亡史 中西輝政
2023/12/24 「イギリス帝国盛衰史」 「エリートの創出」
①ジェントリー 綿織物産業革命により利潤蓄積 「カネ算盤」
②オックスフォード・ケンブリッジで人文教育 「教養論語」
→リーダーとして育成 世界各地の経営者 「武士道」
日本には①と②両方備えたリーダー像がない 特に敗戦後
植民地収奪や奴隷貿易により原始蓄積を行ったのは先発他国と同じだが、
経営人材を組織的に育成し、産業革命に投資し、自由貿易時代に備えた
米国独立戦争も結果的にはプラス 軍事より自由貿易の方がパフォーマンス高い
軍事費負担は莫大かつ増加基調・・・大国の盛衰を連想する
2023/12/26 国家戦略としての「大英帝国」
①産業戦略=成長戦略 スクラップアンドビルド 冷徹さが必要
②人材戦略=教育 有能な人材を必要な分野へ 人文に傾斜 化学・工学弱い
→ドイツ・米国に遅れ 軍事・重化学工業
③「理論による正当化」 自由貿易・比較優位
強者の論理 生産性格差の固定化→発展戦略「保護貿易」「自立」「原始蓄積」
北海道は原材料の供給基地・収益は収奪された
2023/12/26 ex「インド経営」
①高級官僚の選抜 インド高等文官1,200人
②軍隊の設置 200,000人
③女王陛下の臣民 公平な扱い
④既存支配構造との連携 大土地所有層 カースト制度の保持 -
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イギリス帝国史が専門の秋田茂氏とカナダ史が専門の細川道久氏の共著である本書は、第1次世界大戦勃発当時に起きた「駒形丸事件」を通してインド太平洋世界の創出とイギリス帝国の変容を描き出そうとするものである。「駒形丸事件」とは日本の海運会社が保有する駒形丸(船籍は関東州:日本の非公式帝国)がインド人移民をカナダのバンクーバーまで乗せて行ったものの上陸を拒否され、さらに帰路コルカタで20人近くが虐殺されるという悲劇(バッジ・バッジの騒乱)を引き起こした事件である。どうしてそのような悲劇が起きるに至ったかについての詳細は本書をお読みいただくしかないが、本書はこの忘れられた事件を通じてグローバル・ヒストリーをダイナミックに描いている。
内容を簡単に紹介しておこう。「はじめに」で述べられている通り、キー概念となる「インド太平洋世界」とは「アジア世界とアメリカ大陸からなる「アジア太平洋世界」に、南アジアや南アフリカなどを含めた「環インド洋世界」を加えた」ものであり、「こちらの方が、歴史的実態に即しており、地域的つながりを理解するのに有効な枠組み」(p.15)である。この枠組みのなかで「つながる歴史」が描かれていく。
第1章は、「駒形丸事件」が起こった背景について、モノとヒトの移動に関わる経済面と、政治外交・軍事力に関する安全保障面から概観されている。経済面からの概観で参照されるのが、経済史研究者にとってはおなじみの杉原薫氏の「アジア間貿易論」である。その「アジア間貿易論」を援用しながら国際公共財としての自由貿易体制、その結節点としての香港、シンガポールが重要であったことが確認される。安全保障面からみたインド太平洋世界は日英同盟が1つのキーとなる。また「帝国臣民」としてのインド人移民の立ち位置が、南アフリカのガンディーの活躍を事例に概観されている。
第2章はさらに舞台が絞り込まれ、カナダ自治領(ドミニオン・オブ・カナダ)が事件の舞台として叙述されていく。ほとんどの日本人にはなじみのないカナダの歴史はローカルとグローバル、リージョナルとナショナルの四層を軸に分析されるグローバル・ヒストリーの手法による格好の材料であることが了解される(もちろんグローバル・ヒストリーの手法がそのほかのネイション・ヒストリーに有効でないということを意味するものではない)。第2章の前半が、中国人と日本人移民排斥の歴史、後半がインド人移民の排斥の歴史が取り上げられ、その共通点と相違点が剔出され、非常に面白い。そして最後にインド人の反植民地主義ネットワークの結節点であるバンクーバーの位置付け、それに絡む日本の船が登場し、インド、香港、上海、神戸、バンクーバーがつながっていく。
第4章では「駒形丸事件」の前半、つまり駒形丸がバンクーバーで屈辱の上陸拒否にあってインドに戻っていくまでの2ヶ月余りが詳細に描かれる。ここでのポイントはカナダが最終的におこなった裁定の画期的意義、つまりイギリス帝国体制変容のきっかけとなったことと差別を前提とした移民政策がとられるようになったことであった。
第5章は駒形丸の後半の軌跡とそれがインド太平洋世界に与えた影響が叙述されていく。とくに第5章前半では寄港地としての横浜、神戸の様子と駒形丸の動向に同情的な関心を寄せる日本の輿論が取り上げられている。そして、1914年9月26日のバッジ・バッジ騒乱、シンガポールにおけるインド軍歩兵連隊の「反乱」、1919年4月13日の「アムリトサルの虐殺」(死者1200名、負傷者3600名)へとその波紋が広がっていった様が描かれる。
終章「インド太平洋世界の形成と移民」ではヒト・モノ・カネ・情報の動きを支えた国際公共財が「新たな広域の地域である「インド太平洋世界」の出現と形成を促し」、「新興の通商国家日本は、経済的には「アジア間貿易」を支える基軸国として、政治外交的には日英同盟を通じた軍事・安全保障面での対英協力(英領インドを含む対イギリス帝国)政策により、「インド太平洋世界」における諸帝国の共存体制を支えていた」(p.234)と総括されている。
本書では国際公共財としての自由貿易体制の支えの一つが領事館ネットワークであったことにも着目されているが、かつて自分も日本の領事館体制を取り上げて東南アジアとの交易ネットワークを論文で書いたことがある(「第一次大戦前の中国南部・東南アジア市場における通商情報網構築—香港における「領事報告」を中心に—」川勝平太編『アジア太平洋経済圏史 1500-2000』所収、2003年、「戦間期東南アジア市場における在外公館とその機能」松本貴典編『戦前期日本の貿易と組織間関係-情報・調整・協調-』所収、1996年)ので、非常に面白かったし、信夫淳平・在コルカタ総領事(p.194、歴史学者の信夫清三郎の父)の名前には記憶があったので懐かしくも感じた。論文を書いた当時は、インド太平洋世界にまで広がっていく広領域の歴史にまで繋げようという発想すらなかったので、本書は大いに勉強になった。 -
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「駒形丸事件」──第一次世界大戦勃発時、カナダ・バンクーバーでインド人移民が上陸を拒否され、さらに送還先のコルコタで虐殺されたという事件があった。本書は、一般には殆ど知られていないこの事件をノードとして、グローバル/ローカル、ナショナル/リージョナルとして理解されてきた多層な歴史観を相互に関連づけ、立ち現れる新しい視点から世界を照射しようとする試み。これが学術書などでなく、新書という親しみやすいメディアで世に問われることを何よりも評価したいと思う。地味ではあるけども、それを知ることによって視界がグッと開けるようなワン・イシュー。これを手軽に紹介できるというのが新書の醍醐味であり、本書のテーマはまさにこの新書の機能にうってつけの題材だと思うからだ。
まず、本書が別々の領域を専門とする二人の歴史硏究者が、図らずも同一の学術的関心を持っていることに気づいたことに端を発するものであることからして興味深い。そのような研究者間の交流や意見交換がなければ浮かび上がらなかった事案に、僕のような一般人がアクセスできるというのは有難い話だと思う。
ただ、読みはじめは手探りの状態となりやや読みにくい。そもそも歴史的事件というのは、それにより歴史が転換点を迎えるというエポックメイキングなものもあれば、それとは逆に、歴史が明示的な変化を伴わないが後に多大な影響を及ぼすようなうねりを内在して動き始めた時、その端緒を表していたと事後的に把握されるものもあるだろう。この駒形丸事件は後者の典型であり、したがってその意義を一言で言い表すことが困難で、多数のコンテクストを参照して初めてその歴史的な重要性が浮かび上がってくることになる。これがどうしても遠回りの作業となるのだ。いきおい本書の約3分の1もその時代背景の描写に費やされることとなり、読者は本書の全体像が判然としないまま読み進めざるを得ない。しかし、これはこれでやや忍耐を要するものの楽しい読書体験の一部だと思うのだ。
終章で、紹介されてきた多数のテクスト・視点が一気にまとめ上げられ、なぜこの事件がイギリス帝国史家の関心の的となったのかが明らかにされる。当時、グローバルなインド人の商業活動と人的な移動のネットワークが「インド太平洋世界」ともいうべき経済圏を形成していた。イギリス本国は、他の列強との差別化のために、インドをはじめとする異民族を支配する側の方便として「帝国臣民」の論理を活用したが、これは帝国内の自由な移動を保障するものとして被支配側のインド人としてもメリットの大きいロジックだった。これが、インド人移民が乗船した駒形丸がバンクーバーに入港する際、同一の論理に依拠しながらも互いに反対方向のベクトルをもつ力として作用したのだ。面白いのは、支配される側の人的・資本移動が基本的には制限されていたであろう帝国主義の時代において、その「帝国の隙間」を突く形で活発にトランスナショナルな経済活動を営んでいた主体が多数いたという事実。本書で触れられるシク教徒はその典型だが、2回の世界大戦後にネーション・ステートの勃興を経た結果、かえってそのような自由な移動が制約される結果となったという著者らの指摘が逆説的で興味深い。そうであるとするならば、「駒形丸事件」は当時の移民流動性をいわば裏焼きしたネガであり、さらに来るべき戦後の固定性のポジでもあるというが故に刮目すべき事象であり、著者らがこれに着目したことも十分に理解できる。
ぜひ売れて欲しい。多分売れないだろうけど、それでも本書は売れるべき本、売れないとおかしい本だと思う。 -
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17世紀にはじまる大英帝国の衰亡を、とくにインドを中心としたアジア方面の経済を軸に論じている。世界の四分の一を支配した大帝国も、時の移ろいとともにヘゲモニー(覇権)を米国に譲り渡すととなったが、本書は、そこまでの帝国の確立、膨張、運営、破たん、衰亡に、公式帝国、非公式帝国の観念を織り交ぜながら、いかに経済が大きなウェイトを占めていたか、ということを理解させてくれる。当時のヨーロッパ情勢はほぼ出てこないが、それは、世界最強の軍事力を持った大英帝国が、政戦両略をもってヨーロッパ各国の思惑をはねのけてきたためともいえる。唯一フランスに付け込まれて誕生した米国が、ヘゲモニーを受け継ぐことになるのは、皮肉とも取れる。
また、非公式帝国には、初期の大日本帝国も組み込まれており、これは日英同盟による、日本のジュニアパートナーへの昇格まで、続いていた、という点は、驚きがあった。大英帝国が緩やかに衰退し、帝国+コモンウェルス、最終的にはコモンウェルスのみへ移行し、完全に消滅した今となっても、遺産として残っているものは多い。
やはり、20世紀までは、政治、軍事、文化、どれをとっても、大英帝国こそが、世界最強の覇権国家であったことを再認識させられ、その実像を知る一端となる書だと感じた。 -
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[唯一無二のヘゲモニー]かつて世界の陸地の約四分の一と海洋を支配したイギリス帝国。帝国から植民地という垂直関係だけではなく、両者の相互関係の中でイギリス帝国がどのような影響力を与え、そして与えられたかを、特にアジア地域との関係性の中で幅広く考察していく作品です。著者は、イギリス関係の著作を幅広く世に送り続けている秋田茂。
イギリス帝国の幅広い顔が見えてくる一冊。単なる歴史の「強者」としてのイギリスではなく、ヘゲモニー国家として世界史的役割を果たした存在として捉える視線が非常に興味深い。特に、自由貿易体制や通信網の整備など、誰にとってもプラスになる国際公共財を提供しながら自国の影響力を高めていくところに(期せずしたものかもしれませんが)「巧みさ」を感じました。
また、あまり知られていないアジア地域とイギリス帝国の関わり合いについての指摘も白眉。特に、物理的な影響力の行使が地理的制約にも伴って限定される中で、シティを中心とする経済・金融体制がアジアをしっかりとイギリス帝国につなぎとめていたことに驚きを覚えました。少し教科書的な記述が散見され、読み進めるのに努力を必要とするところもありましたが、グローバル国家の本格的な考察としてオススメです。
〜ヘゲモニー国家は、世界諸地域に多様な国際公共財を提供してきた。それらは、国際秩序における「ゲームのルール」の形成に直結しており、アジア国際秩序を考えるうえでも不可欠の構成要素であった。〜
新書ですがボリューム感あります☆5つ -
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秋田茂氏によるイギリス帝国の構造とその盛衰についての著作です。
本書では「長い18世紀」から現代に至るまでのイギリス帝国について、主に経済面から歴史学の研究成果に触れながら考察を行っていきます。
さらに副題にもあるようにイギリス帝国の経済ネットワークとアジア各国との関わりについても検討を加えていきます。
本書のイギリス帝国についての語りにおいて特徴的なのは、ヨーロッパ中心的な検討から脱した現在の歴史学研究を参照することによって、イギリス帝国の内部について「イギリス本国」と「植民地」といった形骸的な見方の中では隠されていた多様な経済的関係が紹介されていることでしょう。
例えばイギリス本国においても「ロンドン・シティにおける金融資本」と「マンチェスターを中心とした綿工業資本」の間では、植民地政策において求めることが異なります。植民地の側においてもカナダ・インド・南アフリカとそれぞれの植民地においてイギリス本国に対する要求は異なり、更にはインドの中でも現地行政府であるインド政庁とアジア貿易に携わるイギリスや現地インドの商人たちでは望ましい政策は違います。広大なイギリス帝国の内部では、このような様々な利害関係が帝国内貿易というモノ・カネのつながりを通して複雑に絡み合っていたのです。
本書は上記のような多様なステークホルダーについて詳細な分析を行い、イギリス帝国の時代ごとの経済的本質がそのパワーバランスにしたがって、様々に変化して行ったことを明らかにしています。
こうしたイギリス中心の帝国観とは異なる見方を導入することによって、イギリス帝国内において植民地側の主体性が従来考えられていたよりも強く発揮されており、本国と植民地の協調によって帝国が運営されていたことがわかってきます。
更に本書ではイギリス帝国の「正統な」支配地域である公式帝国に関する考察のみならず、その経済的影響下にあった非公式帝国との貿易やこれらの地域に国境を超えて影響力を及ぼす源泉となった「自由貿易体制」や「国際公共財」についても検討していくことによって、イギリス帝国という存在が世界経済に対して及ぼした影響が明らかになります。特にインドに対して大きな経済的紐帯を持っていた東アジア地域について、中国・日本それぞれの近代におけるイギリス帝国の影が見られることを本書では指摘しています。東アジア世界の近代化は、欧米列強による強制的な開国がひとつの契機ではありますが先行して世界経済の中にあったインドと接続することで発生したと考えられます。こうした点からも少なくとも経済的には「西洋vs非西洋」という考え方は必ずしも当てはまらないことがわかります。
本書を読むとイギリス帝国を通じて世界経済がヨーロッパからアジアまで網の目のように関係性が構築されており、植民地の支配費用の負担なども考えると必ずしも西洋にのみ利があるような構造であったわけでもないことがわかります。そこで問題になるのは西洋が主導権を握っていた20世紀前半までの世界のありようの原因が何であったのかを改めて考える必要があると思います。
本書でイギリス帝国の分析に使用された様々な手法は、大日本帝国の構造や現代アメリカを中心とした国際関係の分析に用いて考えてみると、新たな視点が得られると思いますので、そういう点でも面白く読めたと思います。 -
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ネタバレP.59-62 七年戦争による財政赤字と負債の増大があまりに急激であったために、その負担の一部を北米植民地に転嫁せざるを得ない状況に追い込まれたのである。
こうして本国政府は1765年に、法律・商業関連の文書だけでなく、新聞や書籍など印刷物全てに本国発行の印紙を貼ることを義務付けた印紙法を導入した。植民地側が「代表なくして課税なし」の論理で同法に激しく反対したことはよく知られている。印紙法は現地植民地の反対で、翌66年に撤廃に追い込まれた。
しかし本国政府は67年に、蔵相タウンゼンドが別の形の増税策として、茶、ガラス、紙、ペンキ、鉛に輸入関税を課した(タウンゼンド諸法)
(中略)
イギリス商品とイギリス的生活様式を拒否することが、植民地側の独自性を主張する手段になった。
(中略)
本国政府は、北米植民地への茶の直送と、その独占販売権を東インド会社に与える茶法を、1773年に制定した。
同年十二月十六日、茶法に反対した商人・急進派市民が先住民(ネイティブ・アメリカン)を装った上で、ボストン港に入港していたイギリス東インド会社船を襲い、積荷の茶を海に投棄するボストン茶会(ティー・パーティ)事件を引き起こした。
(中略)
消費パターンの脱イギリス化、その典型としての紅茶の拒否が、アメリカ人のアイデンティティの確立にとって不可欠となっていったのである。
P.206 ポンドの価値を実勢レート以上に過大評価した旧レートでの金本位制への復帰は、イギリス本国の産業界にとってはポンド切り上げとなり、輸出を困難にして打撃を与えた。他方、ロンドン・シティは、海外のポンド建て資産の価値を温存でき、ニューヨークに対抗する国際金融センターの地位を保つためにも必要な措置であるとして、この政策を歓迎した。
P.257-258 国境を越える広域史(regional history)、広域の諸地域相互の関係史(trans-regional history)など、新たな枠組みを創出する必要がある。その一つの実例として、現在、世界中の歴史家や社会科学者が注目しているのが、グローバルヒストリー(global history)と呼ばれる歴史の捉え方である。 -
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ネタバレかなり読むのに時間がかかってしまった。中世の終わりから現代までのイギリスを中心とした世界史を駆け足で辿っていく感じ。何年に何が合って…と形式的な記述が多いため世界史の年表がざっくりにでも頭に入っていないと読みにくいし、内容の理解もいまいちになってしまう。
植民地時代のイギリスは圧倒的な権力で支配していたのかと思っていたが実際には軍事力では解決できないことも多く、外交の駆け引きなど複雑なやりとりがあった。現在はアメリカにヘゲモニー国家の地位をとって代わられたが、イギリス帝国の遺産は現在も世界に大きな影響力を持っていることにも注目したい。
教科書で教わるような歴史認識が近年見直されているようだ。新たな資料が見つかり、新たな定説がなされて、それが議論される。今確立されている歴史も事実ではなくあくまでひとつの認識ということを意識するべきだろう。