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かつて世界の陸地の約四分の一を領土として支配したイギリス帝国。その圧倒的な影響力は公式の植民地だけにとどまらなかった。本書は近年のグローバルヒストリーの研究成果をふまえ、アジアとの相互関係に注目しつつ、一八世紀から二〇世紀末までの帝国の形成・発展・解体の過程を考察する。今や世界経済の中心はアジア太平洋経済圏にシフトしつつある。そのシステムの基盤を作り上げた帝国の意義を明らかにする。読売・吉野作造賞受賞作。
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Posted by ブクログ
イギリスの植民地経営、近現代のイギリスと植民地間貿易の仕組み、ロンドン・シティの金融街がイギリス外交政策に与えた影響、コモンウェルスの歴史、インドが果たした役割などが勉強になった。 もともと、香港と他のイギリス植民地の経営方針の違いが知りたくて読んだが、イギリスと植民地の関係は物凄く奥が深くて面白...続きを読むい事がわかった。
17世紀にはじまる大英帝国の衰亡を、とくにインドを中心としたアジア方面の経済を軸に論じている。世界の四分の一を支配した大帝国も、時の移ろいとともにヘゲモニー(覇権)を米国に譲り渡すととなったが、本書は、そこまでの帝国の確立、膨張、運営、破たん、衰亡に、公式帝国、非公式帝国の観念を織り交ぜながら、いか...続きを読むに経済が大きなウェイトを占めていたか、ということを理解させてくれる。当時のヨーロッパ情勢はほぼ出てこないが、それは、世界最強の軍事力を持った大英帝国が、政戦両略をもってヨーロッパ各国の思惑をはねのけてきたためともいえる。唯一フランスに付け込まれて誕生した米国が、ヘゲモニーを受け継ぐことになるのは、皮肉とも取れる。 また、非公式帝国には、初期の大日本帝国も組み込まれており、これは日英同盟による、日本のジュニアパートナーへの昇格まで、続いていた、という点は、驚きがあった。大英帝国が緩やかに衰退し、帝国+コモンウェルス、最終的にはコモンウェルスのみへ移行し、完全に消滅した今となっても、遺産として残っているものは多い。 やはり、20世紀までは、政治、軍事、文化、どれをとっても、大英帝国こそが、世界最強の覇権国家であったことを再認識させられ、その実像を知る一端となる書だと感じた。
[唯一無二のヘゲモニー]かつて世界の陸地の約四分の一と海洋を支配したイギリス帝国。帝国から植民地という垂直関係だけではなく、両者の相互関係の中でイギリス帝国がどのような影響力を与え、そして与えられたかを、特にアジア地域との関係性の中で幅広く考察していく作品です。著者は、イギリス関係の著作を幅広く世に...続きを読む送り続けている秋田茂。 イギリス帝国の幅広い顔が見えてくる一冊。単なる歴史の「強者」としてのイギリスではなく、ヘゲモニー国家として世界史的役割を果たした存在として捉える視線が非常に興味深い。特に、自由貿易体制や通信網の整備など、誰にとってもプラスになる国際公共財を提供しながら自国の影響力を高めていくところに(期せずしたものかもしれませんが)「巧みさ」を感じました。 また、あまり知られていないアジア地域とイギリス帝国の関わり合いについての指摘も白眉。特に、物理的な影響力の行使が地理的制約にも伴って限定される中で、シティを中心とする経済・金融体制がアジアをしっかりとイギリス帝国につなぎとめていたことに驚きを覚えました。少し教科書的な記述が散見され、読み進めるのに努力を必要とするところもありましたが、グローバル国家の本格的な考察としてオススメです。 〜ヘゲモニー国家は、世界諸地域に多様な国際公共財を提供してきた。それらは、国際秩序における「ゲームのルール」の形成に直結しており、アジア国際秩序を考えるうえでも不可欠の構成要素であった。〜 新書ですがボリューム感あります☆5つ
秋田茂氏によるイギリス帝国の構造とその盛衰についての著作です。 本書では「長い18世紀」から現代に至るまでのイギリス帝国について、主に経済面から歴史学の研究成果に触れながら考察を行っていきます。 さらに副題にもあるようにイギリス帝国の経済ネットワークとアジア各国との関わりについても検討を加えていき...続きを読むます。 本書のイギリス帝国についての語りにおいて特徴的なのは、ヨーロッパ中心的な検討から脱した現在の歴史学研究を参照することによって、イギリス帝国の内部について「イギリス本国」と「植民地」といった形骸的な見方の中では隠されていた多様な経済的関係が紹介されていることでしょう。 例えばイギリス本国においても「ロンドン・シティにおける金融資本」と「マンチェスターを中心とした綿工業資本」の間では、植民地政策において求めることが異なります。植民地の側においてもカナダ・インド・南アフリカとそれぞれの植民地においてイギリス本国に対する要求は異なり、更にはインドの中でも現地行政府であるインド政庁とアジア貿易に携わるイギリスや現地インドの商人たちでは望ましい政策は違います。広大なイギリス帝国の内部では、このような様々な利害関係が帝国内貿易というモノ・カネのつながりを通して複雑に絡み合っていたのです。 本書は上記のような多様なステークホルダーについて詳細な分析を行い、イギリス帝国の時代ごとの経済的本質がそのパワーバランスにしたがって、様々に変化して行ったことを明らかにしています。 こうしたイギリス中心の帝国観とは異なる見方を導入することによって、イギリス帝国内において植民地側の主体性が従来考えられていたよりも強く発揮されており、本国と植民地の協調によって帝国が運営されていたことがわかってきます。 更に本書ではイギリス帝国の「正統な」支配地域である公式帝国に関する考察のみならず、その経済的影響下にあった非公式帝国との貿易やこれらの地域に国境を超えて影響力を及ぼす源泉となった「自由貿易体制」や「国際公共財」についても検討していくことによって、イギリス帝国という存在が世界経済に対して及ぼした影響が明らかになります。特にインドに対して大きな経済的紐帯を持っていた東アジア地域について、中国・日本それぞれの近代におけるイギリス帝国の影が見られることを本書では指摘しています。東アジア世界の近代化は、欧米列強による強制的な開国がひとつの契機ではありますが先行して世界経済の中にあったインドと接続することで発生したと考えられます。こうした点からも少なくとも経済的には「西洋vs非西洋」という考え方は必ずしも当てはまらないことがわかります。 本書を読むとイギリス帝国を通じて世界経済がヨーロッパからアジアまで網の目のように関係性が構築されており、植民地の支配費用の負担なども考えると必ずしも西洋にのみ利があるような構造であったわけでもないことがわかります。そこで問題になるのは西洋が主導権を握っていた20世紀前半までの世界のありようの原因が何であったのかを改めて考える必要があると思います。 本書でイギリス帝国の分析に使用された様々な手法は、大日本帝国の構造や現代アメリカを中心とした国際関係の分析に用いて考えてみると、新たな視点が得られると思いますので、そういう点でも面白く読めたと思います。
大英帝国(後のコモンウェルス)とアジア(インド、中国、日本など)の関係を解説。複雑な貿易の流れなどを、図を用いて分かりやすく説明している。 「大英帝国の解体〜コモンウェルスの成立」は、高校世界史で躓いた分野だったが、今回やっと納得・理解できた。
イギリス帝国の歴史についてインドをはじめとしたアジア諸国との関係を中心に描いた書籍。近年、どの学問領域においても個々の事象ではなく、その関係性に焦点が当てられてきているが、本書もその潮流に乗ったものである。日本とイギリスの関係についても語られており、経済や貿易、金融などの視点からも近現代を雑観できる...続きを読む良書である。
これまでの通説を紹介しながら、それを覆してグローバルヒストリーの面白さ、視点の豊かさを提示していく著作。アジア、特にインドの存在が、イギリス帝国の「帝国性」を支えていた。(カナダはどうなの?)
イギリス帝国歴史を、18世紀から現代まで通説する。東インド会社、北米植民地、ジェントルマン資本主義、コモンウェルス、脱植民地化、そして第2次世界大戦後に。 興隆を極めた帝国支配だが、決定的打撃はスエズ戦争の敗退によりもたらされた。そしてアメリカという新たなヘゲモニー国家のジュニアパートナーたる道を選...続きを読むぶ。 現代は、世界経済の中心がアジア太平洋経済圏に移行しつつある。そのシステムの基盤を作り上げたのがイギリス帝国であるというのが本書の立場で、グローバルヒストリーという視点を大切にしている。
本書は,近年のグローバルヒステリーの研究結果を踏まえながら,18世紀から20世紀末までのイギリス帝国の形成・発展・解体の過程を,主にアジア諸地域(特にインド)との関係性から論ずるというものである. また,本書では同時に,今日,環大西洋圏に変わって世界経済の中心となりつつある,アジア太平洋圏の経済...続きを読むシステムの基礎が,如何に形作られたかという問題についても,これに対するイギリス帝国の関与とその意義を明らかとする.本書は2013年度読売・吉野作造賞を受賞するに至ったが,一読すれば,それも納得できる内容である.イギリスの一国史という視点を離れ,同時代の諸地域・諸国家間のヨコの関係,つながりに注目しながら,それらとの「比較」と「関係」という観点で歴史を論ずる,グローバルヒステリーの手法は新鮮で,非常に興味深いものであった.今日,TPPやEUの問題を契機として,グローバリズムに関する議論は世界的に高まっているが,本書が提示する,ヘゲモニー国家たるイギリス帝国の,世界の経済システム形成に対する考察は,この点で極めて有意義な観点を読者に与えてくれるものであり,現在の世界を考える上でも,一読の価値は十二分にある一冊である.
かつては世界の四分の一の土地を支配したイギリス帝国の変遷を、アングロ・サクソン系国家の推移、特にコモンウェルズを形成するアジア諸国(特にインド)との交易から勉強できる一冊。 日本との関係でいえば、日清戦争直前の1893年に神戸と英領ボンベイを結んだ日本郵船社の航路は日本で初の国際定期航路とのこと。...続きを読む 近時、韓国に5,000億円に相当する偽の外債券詐欺があったらしい(今は紙で発行してないw)けど、本物のロスチャイルド・アーカイブ蔵の、日露戦争資金調達向け日本政府外債の写真も掲載されていて迫力がある。 特に興味深かったのは、リヴァプールとアフリカ大陸のガンビア、カリブのジャマイカを結ぶ大西洋の三角貿易。 今のイギリスの音楽文化に繋がるものを感じた。
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イギリス帝国の歴史 アジアから考える
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秋田茂
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