庭田杏珠のレビュー一覧
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先日読んだ「モノクロの夏に帰る」─額賀澪著─
に出てくる写真集のモデルが本書と知り、手に取った。
著者の庭田さん(広島市出身)と東大教授の渡邉さんによる「記憶の解凍プロジェクト」の成果をまとめたものだそう。
まず、AI技術でモノクロ写真を「自動色付け」する。
次に、戦争体験者との対話・SNSで寄せられたコメント・資料などをもとに、手作業で色を補正していく。
とても地道で時間のかかる作業だろう。
しかしこの「人との対話」がとても大切だ。
白黒の世界で凍りついていた過去に色がつくことで、記憶も生き生きと動き出す。
一枚の写真から当時を思い出し、次々と語り出す当事者たち。
戦後79年となる現在、 -
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昔の白黒写真をカラー化するという、面白い試み。日独伊三国同盟のカラー写真はtwitterで見たことある人も多いのではないか。
試み自体は面白いものの、正直カラー化になんの価値があるのかと思いながら読んだ。しかし、驚きではあるが白黒で見た(昔)の写真が、カラー化によって地続きの過去になっていくのが実感できる。白黒写真というのは空が白いだけで本質的には夜なんだよな。モノの輪郭は掴めてもイメージはつきにくい。
教授室の「第ニ外科歴代教授」掲示などを見ると、過去の教授が白黒で写っている。あまり意識したことがなかったが、白黒写真はそれ自体が過去の象徴である。これがちょっと色づくだけで、過去の想像から -
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ネタバレ白黒写真をカラー化すると、とても鮮やかに情報が伝わってくる。当たり前だが、被写体の彼らは歴史舞台の登場人物ではなく、日常を生きた人間なんだと強烈に感じることができた。以下は特に印象に残った点。
戦前の穏やかな日常の写真のなかに、たくさんの人々の笑顔があったこと(昔の人は写真ではあまり笑わないと思っていた)。
戦況激化とともに、禍々しいスローガン等でじわじわと追い込まれていくなかでも、日常生活や笑顔が見られた写真があったこと。
写真におさまる日本の航空兵達の顔立ちが、戦況が悪化するにつれ幼くなっていくと感じ辛かったこと。
戦後の焼け野原でもちゃんとデートしていたこと。
戦場となった海と空がとて -
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平和活動を積極的に行う若い著者が被爆者と接する中で、写真に特別な思いがあるのではないかと思い、白黒写真をカラーにするプロジェクトを立ち上げた。
文字より写真、白黒よりカラーの方が、鮮烈だ。どうしても我々には、白黒写真は自分の事とは思えない。遥か昔のことのように感じてしまう。それは今目にしている風景が全てカラーである事と、写真技術が白黒からカラーに進化していったという知識があるからだ。
そこで敢えて白黒写真をAI技術でカラー化していくこの企画は、過去をより実体験として経験してもらうのと同時に、写り込んでいる人や風景が、現在と繋がっているのだということを再認識してもらうための素晴らしいプロジェ -
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広島出身の庭田杏珠さん(東京大学学生)と渡邉英徳同大学教授の共著で、映画「この世界の片隅で」の片渕須直さんやアーサービナードさんらがプロジェクトに加わり、戦前・戦争と人びとの暮らしをAI(人口知能)でカラー化します。庭田さんは広島出身で、どのように戦争体験者の「思い・記憶」を未来へ伝えていくかを考える中で、カラー化の手法にであいます。また、渡邉さんは2016年からAI技術を応用して白黒写真をカラー化する活動を開始し、庭田さんと出会います。AIでカラー化した写真を当事者の記憶を解凍して色の補正を行い、よりリアルな色合いに仕上げていきます。大正末より、治安維持法で言論統制が厳しかったとはいえ、穏
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ヒロシマ以前の風景を復元する「記憶の解凍」プロジェクト。AIを活用し白黒写真をカラー化。息を吹き返した過去は現在につながる。
白黒写真は過去のイメージ。それがカラー写真となることで一気に現実味を帯びる。本書に収録されるカラー写真の多くは戦前の広島の中島地区。4400人が暮らした町は爆心直近。町は全滅し戦後は平和記念公園となる。
個人の収蔵写真を集めカラー化する「記憶の解凍」プロジェクト。原爆で失われる町並みと人命。家族の幸せな風景、来るべき悲劇。
本書には、広島だけでなくほかの多くの写真も収録。朝日新聞に保管された物がおおいのでどこかで見たことのある写真が多い。ミッドウェー海戦、ガダルカ -
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本書のレビューで多くの方々が書かれているとおり、白黒だと身近に感じにくいことが、カラーになると命が吹き込まれ生々しく伝わってくる。
音・臭い・温度・触覚などが追加されたわけでもなく、単に色が付いただけなのにこの歴然とした違いは何だろうかと思う。
美しく青い海と空や、緑の草木、黄色やピンクの花、これら白黒だと識別しにくいものがカラーだと一瞬で何であるかを理解できてしまうから?
カラーだと今までの自分の生活体験で得た色や形の情報と結び付き易く、脳が即座に活性化させられるのではないだろうか。
飲食でも視覚と臭覚が味覚に影響を与えるように、色によって視覚以外のいろんな感覚が無意識に湧きだして来て絡み -
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「色」と記憶の関係
庭田さんのあとがきにあるエピソードを読み、「色」と記憶の抜き差しならない関係性を感じさせられる。当人が思ってもいなかったような記憶が「色」によって呼び覚まされる。思い込んできたことや、記憶からこぼれていたものが。科学技術の発展によって75年前の記憶が蘇ると同時に、その時を経験していない我々へ訴えかける情報に厚みをもたせることもたいへんに興味深い。動画のカラー化というのは以前からあったが、写真というさらに一般人の日常に近い媒体のカラー化は戦前と戦争の風化を抑制する大きな力になるのではないか。
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間もなく戦後80年になろうとしている。太平洋戦争前の日本といえば軍国主義が街中に色濃く溢れ、軍艦や戦闘機をはじめとする武器の開発製造に国のあらゆる先端技術が注がれていた。その様な中で、人々の生活全ては戦争に大きく左右され、貧しさに耐えながら、そして、家族を兵士にとられた家ではその無事を祈りながら日々生活を送っていた。写真技術は19世紀には早くも登場していたものの、一般的な家庭へのカメラの普及はまだまだの時代であり、裕福な家庭や報道を職業にする一部の人間しかカメラなどは持てない時代であった。その様な中でも当時撮影された白黒の写真が現在まで各家庭に大切に保管され、特に戦争中の従軍カメラマンの撮影し