住吉雅美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
常識とされている考え方について、近代の思想・政治・社会背景から紐解く話。漫談のような語り口で話が進む。多岐にわたるテーマを章でまとめているのもわかりやすい。
いつも違った視点の本をおすすめしてくれるYTさんが教えたくれた本。
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以下、いくつかメモ。
「人間の尊厳」の考え方
「尊厳」が普遍的に人間に備わっているのか、それとも人間が尊厳を所有しているのか。前者の考え方では、自発的売春であっても許容されないが、後者の考え方では、自発的な行為は尊重されるべきなので問題ない、となる。
遵法義務の話
命令に従うことで結果として殺戮者となったナチスの官吏 vs 命令に反してユダヤ人にビザ発給した杉原千畝。戦後の日本で闇米を拒否して餓死した山口判事。食管法を無視して米を販売して逮捕されるも食管法の廃止につながる道筋をつけた川崎磯信氏。
功利主義の話
いわゆるトロッコ問題。インフルエンザワクチンの配布プライオリティで高校生を浪人生より優先した事例。
人権の話
人類にのみ通用。近代になり成立した考え。国家のないところでは成立しない。
自分は自分のことを所有しているのか
かつては日本でも行われていた売血は現在はなされていない。自発的な臓器売買は許容されるのか。
アナルコキャピタリズムの話
国家不要論。無政府資本主義。教育、警察、刑罰、戦争すら民間私企業が遂行できるという考え
不平等/平等の話
飲み会の割り勘の平等の基準は何であるべきか。完全な平等などというものは存在しないという話。大学入試のアファーマティブアクションの話。
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Posted by ブクログ
ネタバレ面白かったです。
「法哲学」という分野を初めて知りました。
法律は正義・道徳とは無関係なルールというのを、私は長い間知らずにいました。悪いことをしたら罪に問われる=法律と思っていました。でも正義は人によって違うし、法律は善悪を決めるためにあるものではないのです。
「法律に正しさを期待するな」という本書の言葉にハッとしました。
最大多数の最大幸福というのは、それぞれの人がある程度の譲歩をしないと実現しないのではないかと思います。
本書の例に、一人の熱烈なファンが売り場にあるプレミアムグッズを全部買い占めてしまいました。ファンは自分のお金で正当に購入したもので問題はありません。しかしそのグッズを買いたかった他のファンへの配慮がなく「最大多数の最大幸福」という視点では満たされていないことになります。しかしその熱烈なファンもグッズがたくさん欲しかったのかもしれませんし、それを我慢しなければいけないという法律はありません。
他にもクローン人間を作ることはいけないことなのか等、具体的な例が挙げられていて、考えさせられることも多かったです。
万人が納得できる解決法はないかもしれませんが、考えていくことに意義がある、そんな風に思える本でした。 -
Posted by ブクログ
法哲学。
これは私にとって非常に興味深かった。
法律をやるか、社会学か、哲学をやるか、高校生の私は進路に迷っていた。
結局は法律を選んだわけだが、社会科教員免許を取得する上で色々履修したので大学で色々学べたのは本当に良かったと思う。
学費の元はとった。
さて、本書はタイトルからして煽ってくる。
「法律に従う義務はあるのか」
「大勢の幸せのためにあなたが犠牲になってください」など。
議論内容は、
・自分の臓器を売ることがなぜ禁じられるのか
・動物に権利はあるか (例えば代理母問題や、ペットの飛行機同乗問題などに繋がる)
が面白い。
動物の話は、マグロやトラ、トキには福祉(権利ではない)を認めるのにゴキブリに認めないのはなぜかと問う。
人間の視点から、「残すことが望ましい生物」に対しておこなわれるもので、人間様の都合であるとの指摘がなされる。
法的権利が認められるためには道徳的権利要件を満たした上でさらに固有の性質を備えなければならない。
これは、何かと権利ばかり主張する人々にとって、真に理解すべき事項であろう。
また昨今の「弱者男性」なる主張に対しては、市民が持つべき真の権利(231頁以下)についてデフニス事件による、
「平等なものとして処遇されることの権利」について学んだ方が良いだろう。
「現実に社会で苦しんでいるいる市民がそうでない市民よりも優先的に支援されるということこそが真に平等に扱われるということ」なのだ。
そうでなければただのわがままだ。
平等とはなにか。
目の見えない人のために健常者の目玉をくり抜くことじゃないだろう(コーエン)という主張は納得する。
目玉の数の平等ではなく、見えないことの不便さを補う手段を皆で工夫することこそ、平等である。
著者の他の本も読んでみたくなる。
これは若いうちに出会うべき本だ。 -
Posted by ブクログ
法哲学は、「行き過ぎた実定法上の運用がされている場合、その現状からどうやって課題を解決すればいいのかをさまざまな角度から検討する」学問だと思いました。
そのため、卒論を書く際や憲法や刑法のリーディングケースを考える際などに多様な視点から応用できる気がしました。
この本は、法律を学ばない人にも面白い視点から社会科学(法学)を俯瞰できる本だと思います。
また、「法律はなぜ守るのか? 」「自分の体はなぜ売れないのか?」「ワクチン接種は誰が優先?」など、言われてみれば疑問に思ったり、答えに困るような疑問を、法哲学の視点から解決に導いてくれる一冊だと思います。おすすめしたくなります。 -
Posted by ブクログ
筆者の語り口調も面白くあっという間に読み終えてしまいた。深掘りではなく、重要なテーマを数多く紹介しているような本でした。
現行法とはその上位にある規範に従っているだけ=まさに信仰対象と言う点や、キング牧師の不当な法律を破る時にこそ倫理的な行動が求められると言った話のように、我々もその場その場でしっかりと自分が信じる規範に従って倫理的な行動が取れるようになれば、法を守るあまり餓死するような事もなくなり、上司の命令に従って罪を犯す事もなくなり、小さな事でも何でも法律にしてしまうような必要もなくなるんだろうなと思いました。
本書でも自由や平等や正義と言う言葉が随所に出てきましたが、どれも不自由・不平等・不正義と言った言葉とセットだと思います。
結局のところ、あなたの自由は私の不自由と言うことはどこまでもついて回り、私が不自由かどうかは時と場合によるとなるわけですから、もちろん考える事は大事な事なのですが、思考実験的にそれらの絶対値を定義することはあまり意味がないのでは?と常々思っています。 -
Posted by ブクログ
クローン人間はなぜ作製してはいけないのか?
臓器の無償提供は人道的な社会奉仕なのに、なぜ有償提供は金稼ぎとして禁止されるのか?
など気になるお題が満載でおもしろい。
しかし考察されるけど結論はない。
そうか、哲学だから答えはないのか、と思うけどスッキリはしない。
一番納得したのは、法律と道徳は違うということ。
法実証主義に対して、理性や良心のほうが優越すると考える自然法論者が存在する。
しかし良心は時代と共に変化していく(子どもを傷つけてはいけないなど)から、時代や民族を超えた全人類が生まれながらに持っている共通な良心を定義するのは難しい。
法律は社会のメンバーが共通に当てにできるルールブックとして機能している。
だけど悪法もあり、驚くことに悪法に従う道徳的義務はないという。
自分の頭で考えて行動することが大事。
もちろん刑罰は受けるけど、それが法を変えることにつながったりする。
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Posted by ブクログ
多分一昔前だと読んでも具体的に何を思い浮かべていいか、分からなかったろう。ジャストフィットなカードゲームコレクターの幸福も、それどころか、何か幸福や平等について話そうといても、漠然とした幸福とは何か? しかなかった。したがって、そんなものか、と思って大多数は人生を送っていたわけだ。
この本では、正義や自由、責任、平等、幸福などにまつわる思想史の発展と、その問題点や限界、一見よいようにみえて、逆転するベンサムの最大多数の最大幸福論などが印象的にえがかれて、一気にリバタリアニズムなど今ある思想がどうしてそこにあるのか、一本筋の通ったながれがわかるように描かれている。
たとえや、例がみじかで肉の詰まった思想史といえるかもしれない。少なくとも、思想が時代時代に躍動していたような高揚感がある。
一方でこれ程、社会自体が発展してきて、複雑になったのだなあ、という感じもあって面白い。
思ったことは、言っていい、たぶん、根底にあるのはそれだ。
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Posted by ブクログ
ネタバレルールはなんのためにあるのか。現代社会における疑問や課題を定義しながらわかりやすく説明している。
①部活をやっていても勝つために見境もなくルールスレスレ、もっというとルールを逸脱してくる大人がいる。勝利至上主義が悪いわけではないと思うが、教育という観点からもフェアプレーの精神は確実に必要であると思う。
②結婚の概念も面白い。「聖なるズー」という本でも動物を愛する人たちを描いていだが、あれも認められるべきなのであろうか。なかには動物愛護の観点で、認められないものなのなのか。難しい。自らの意思だけではなく、相手の意思のあるものである限り、結婚は互いの意見が尊重できていればできるものであってほしいと思う。「反婚」という概念を初めて知った。そもそも結婚する利点はなんだ?結婚してもうすぐ半年だが、いまいち見出せていない…結婚していなければなにか不便に気づけたのか…?