あらすじ
私が自由意思で自分の臓器を売ることがなぜ禁じられるのか?
ギャグに著作権を認めたらどうなる?
カジノは合法なのに賭け麻雀が違法なのはなぜ?
全人類に共通の良心なんてある?
法と道徳、功利主義、人権、国家、自由、平等……私たちが生きていくうえで目をそらさずに考えたい「法哲学の問い」を、たくさんの具体例を紹介しながらわかりやすく解説!青山学院大学の“個性派教授”による、読んで楽しい法哲学教室!
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Posted by ブクログ
面白かったです。
「法哲学」という分野を初めて知りました。
法律は正義・道徳とは無関係なルールというのを、私は長い間知らずにいました。悪いことをしたら罪に問われる=法律と思っていました。でも正義は人によって違うし、法律は善悪を決めるためにあるものではないのです。
「法律に正しさを期待するな」という本書の言葉にハッとしました。
最大多数の最大幸福というのは、それぞれの人がある程度の譲歩をしないと実現しないのではないかと思います。
本書の例に、一人の熱烈なファンが売り場にあるプレミアムグッズを全部買い占めてしまいました。ファンは自分のお金で正当に購入したもので問題はありません。しかしそのグッズを買いたかった他のファンへの配慮がなく「最大多数の最大幸福」という視点では満たされていないことになります。しかしその熱烈なファンもグッズがたくさん欲しかったのかもしれませんし、それを我慢しなければいけないという法律はありません。
他にもクローン人間を作ることはいけないことなのか等、具体的な例が挙げられていて、考えさせられることも多かったです。
万人が納得できる解決法はないかもしれませんが、考えていくことに意義がある、そんな風に思える本でした。
Posted by ブクログ
久々にワクワクと一気読みする本に出会った。決して内容は簡単ではないが、とても軽快なリズムで、ちょっと挑発的な語り口が面白い。常識ってなんなんだと考える練習になる。問い続ける哲学好きにはたまらない一冊。
Posted by ブクログ
法哲学。
これは私にとって非常に興味深かった。
法律をやるか、社会学か、哲学をやるか、高校生の私は進路に迷っていた。
結局は法律を選んだわけだが、社会科教員免許を取得する上で色々履修したので大学で色々学べたのは本当に良かったと思う。
学費の元はとった。
さて、本書はタイトルからして煽ってくる。
「法律に従う義務はあるのか」
「大勢の幸せのためにあなたが犠牲になってください」など。
議論内容は、
・自分の臓器を売ることがなぜ禁じられるのか
・動物に権利はあるか (例えば代理母問題や、ペットの飛行機同乗問題などに繋がる)
が面白い。
動物の話は、マグロやトラ、トキには福祉(権利ではない)を認めるのにゴキブリに認めないのはなぜかと問う。
人間の視点から、「残すことが望ましい生物」に対しておこなわれるもので、人間様の都合であるとの指摘がなされる。
法的権利が認められるためには道徳的権利要件を満たした上でさらに固有の性質を備えなければならない。
これは、何かと権利ばかり主張する人々にとって、真に理解すべき事項であろう。
また昨今の「弱者男性」なる主張に対しては、市民が持つべき真の権利(231頁以下)についてデフニス事件による、
「平等なものとして処遇されることの権利」について学んだ方が良いだろう。
「現実に社会で苦しんでいるいる市民がそうでない市民よりも優先的に支援されるということこそが真に平等に扱われるということ」なのだ。
そうでなければただのわがままだ。
平等とはなにか。
目の見えない人のために健常者の目玉をくり抜くことじゃないだろう(コーエン)という主張は納得する。
目玉の数の平等ではなく、見えないことの不便さを補う手段を皆で工夫することこそ、平等である。
著者の他の本も読んでみたくなる。
これは若いうちに出会うべき本だ。
Posted by ブクログ
住吉 雅美
1961年、北海道生まれ。北海道大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。山形大学人文学部助教授を経て、現在、青山学院大学法学部教授(法哲学)。著書に『哄笑するエゴイスト――マックス・シュティルナーの近代合理主義批判』(風行社)、共同執筆書に『法の臨界[2]秩序像の転換』(東京大学出版会)、『ブリッジブック法哲学』(信山社)、『問いかける法哲学』(法律文化社)などがある。
Posted by ブクログ
・1回通読。道徳、法、正義、自由、平等、国家、権利。普段は当たり前なもの、常識として捉えている物事について、様々な視点から問いかけを行う。どのテーマもとても興味を惹かれ、一気読みしてしまった
・法哲学に関わる用語や人物についても、わかりやすく丁寧、かつユーモラスに解説してくれるため、入門書としても良いと感じた
・基本的には読者に問いかけを行うスタイルだが、たびたび著者の主張が一方的かつ断定的に述べられる時に少し拒否反応がでてしまう。一方で、漫画やアニメを始めとするフィクションへの造詣の深さに対して親近感を覚える
Posted by ブクログ
もともと法学部で法哲学も少しだけかじったことがあるが、興味が一旦離れていました。ですが、作者の方の切り口が面白く、また改めて法哲学を学んでみたいと思えました。ありがとうございます。
Posted by ブクログ
大学で法哲学などについて考えるサークルに入ったので買いました。入門書としてはこれに尽きる、これで充分だと思います!文章自体もツッコミが入っていたり、難しい言葉が多いと言うわけでもなくわかりやすい上に、見出しで内容を掴みやすく、パラパラと読むのにも適しています。入門書としてはやや細かい知識、議論もあるにはありますがついていくことは容易です。これを読んで、常識を改めて解く、社会に対する眼差しを少し変えるきっかけを作りましょう!
Posted by ブクログ
法哲学は、「行き過ぎた実定法上の運用がされている場合、その現状からどうやって課題を解決すればいいのかをさまざまな角度から検討する」学問だと思いました。
そのため、卒論を書く際や憲法や刑法のリーディングケースを考える際などに多様な視点から応用できる気がしました。
この本は、法律を学ばない人にも面白い視点から社会科学(法学)を俯瞰できる本だと思います。
また、「法律はなぜ守るのか? 」「自分の体はなぜ売れないのか?」「ワクチン接種は誰が優先?」など、言われてみれば疑問に思ったり、答えに困るような疑問を、法哲学の視点から解決に導いてくれる一冊だと思います。おすすめしたくなります。
Posted by ブクログ
法哲学と言うと、とっつきにくそうで、単位取得も躊躇していたが、最近の事例も交えて、面白おかしく書かれており、興味をそそられた。これを機に関連や書籍を読んでみたい。
Posted by ブクログ
タイトル、そして叙述のスタイルもなかなか刺激的な感じですが、内容的には非常に真っ当で、読者に法哲学に興味があるとないとを問わず、取り上げられてる各論点について、深い思索にいざなう好著です。
Posted by ブクログ
常識という池の水、全部抜いてみよう!
普段当たり前に思っている常識、公理を取り去って人間社会を考察する。知的好奇心は大満足、「法哲学」の魅力を十二分に伝える良著。
ただでさえ難しそうな法学と哲学を合わせたような法哲学。
正義や自由、道徳についての考察から、具体例を駆使して法哲学の魅力に迫る。副題にあるとおり楽しい思考レッスン。
例えば功利主義の”最大多数の最大幸福”は諸刃の剣。”社会全体の不利益をを最小限”にする発想から選民思想につながる。
安楽死やLGBTからゴミ屋敷などホットなトピックも豊富。テーマが具体的であり分かりやすい。
法哲学の第一歩として魅力ある一冊。
Posted by ブクログ
多分一昔前だと読んでも具体的に何を思い浮かべていいか、分からなかったろう。ジャストフィットなカードゲームコレクターの幸福も、それどころか、何か幸福や平等について話そうといても、漠然とした幸福とは何か? しかなかった。したがって、そんなものか、と思って大多数は人生を送っていたわけだ。
この本では、正義や自由、責任、平等、幸福などにまつわる思想史の発展と、その問題点や限界、一見よいようにみえて、逆転するベンサムの最大多数の最大幸福論などが印象的にえがかれて、一気にリバタリアニズムなど今ある思想がどうしてそこにあるのか、一本筋の通ったながれがわかるように描かれている。
たとえや、例がみじかで肉の詰まった思想史といえるかもしれない。少なくとも、思想が時代時代に躍動していたような高揚感がある。
一方でこれ程、社会自体が発展してきて、複雑になったのだなあ、という感じもあって面白い。
思ったことは、言っていい、たぶん、根底にあるのはそれだ。
Posted by ブクログ
新書然としてコンパクトに、哲学テイストの読み物として感触はよい。功利主義が一編で取り上げられているように、正義論的な流れが多く、おさらいとなる部分も多いが、法哲学により特化した思想家や、筆者の身辺の由なしごと、サブカル作品の引用など小気味よくまとまっている。
Posted by ブクログ
議論が分かれる出来事や政策、主義主張、日々いろいろとありますが、「法哲学」としてずっと議論されてきたんですね。米国の2大政党も考え方が根本から違うのもそれぞれの法哲学の違い?どの理論も当時の社会的背景の産物。これからも悩み続けるしかない。「安寧と引き換えに、責任を負う苦しみを伴う自由を犠牲にすることがあってはならない」。筆者の最後の言葉、かっこよい。
Posted by ブクログ
青山学院大学法学部の法哲学の授業をベースにした新書本。法哲学なのでもちろん答えは無く、あくまで考える材料や、考える道筋が示されているだけである。
非常に平易な文章で、自虐や具体例を交えながら進んでいくので、法哲学の入門としては分かりやすい。他方で、あっさりと読めてしまうので、あとになにも残らない危険もある。
巻末の読書リストと合わせ、しっかり勉強するならば繰り返し読むべき本であり、繰り返し読みやすい本である。
ドゥオーキンのアファーマティブアクションへの考え方などはちょっと予想外で、そういう意味でも頭の体操にはもってこいであった。
Posted by ブクログ
2回目。また読みたい。定義付けと例と自虐が秀逸。
「安寧と引き換えに、責任を負う苦しみを伴う自由を犠牲にすることは絶対にあってはならない。人間には違和感を抱き、疑い、反抗する能力がある。それを思い起こさせてくれるのが法哲学なのである。」
Posted by ブクログ
⚫︎中身はちょっと難しいが、語り口が軽妙。
⚫︎旬な話題を入れているのでクスリと出来たが、後になっては無理だろうな笑
⚫︎ロールズは久しぶりに聞いた。懐かしい。
⚫︎大学生時代にこんな講義を受けてみたかったなと思わせる、自身の常識を疑うような一冊。
Posted by ブクログ
大学の課題図書として読みました。以下は私のレポートの要約の抜粋です。
法律に対して哲学していくといった本である。その意味としては既成の法律に対して徹底的に疑い、法律が「存在すること」の根拠は何であるかを探究し続ける思考方である。現行法大系の基礎原理やそれを支えている人間社会の習俗とか常識それ自体を徹底的に疑い、容赦なく批判していく。常識の上に展開される法哲学は人間社会の表の面のみであるが、筆者はそれを懐疑的な目で分析し、アンタッチャブルな陰の世界を直視して囚われのない頭脳で考えることが法哲学の真骨頂だと信じている。
Posted by ブクログ
この本の中では、自分が今まで当たり前だと思っていたことに対して疑う視点を持たされた。なぜ?と聞かれても、ウッ…となってしまって答えられなかった。自分はもっと物事に対して疑う視点を持たないといけないと思った。そして、楽だから、なんとなくうまくいってるからといって思考停止してしまわないようにする。
Posted by ブクログ
私たちが生活している中で、何気ない場面において法律とか、道徳とかを組み込んで深く考えてみると、とても複雑な問題が数多く存在することがわかった。
自由をテーマにした具体例が多く、そのキーワードは、法律の中でも解釈がいくつもの通りでなされてしまう。
ただ単に法律を脳死で守るのではなく、中には道徳的に望ましくないものも存在するので、思考し続けることが大切。
Posted by ブクログ
法律そのものに、法に従わなければならないとする道徳的義務はなく、罰がその役割を果たしている。福祉国家は、有限のソースを社会的弱者に活用するため、福祉の範囲を選別せざるを得ないが、自由国家は福祉を与えないので、選別が不要。平等を実現するための配分で、不平等を認知させる承認が必要という議論に近いものがある。
Posted by ブクログ
なんだこの屁理屈…と懐疑的に読み進めていくうちに、法哲学にはまってしまった。当たり前、社会の常識、と考えていたことに説明がつかなくなる。特に平等論にはやけに納得してしまった。なんで年上というだけで金持ちの後輩にランチをおごっているんだろう…と日頃思っていたから。世の中にはこんなに人の心理や状態を分解して色々と考えている人がいたんだなぁと知った。でもそれで法律が改正されたりするのだから、とても重要な分野だと思う。
Posted by ブクログ
読みやすい。具体的な話から原理的な思考に入っていくパターンは、哲学の入門書によくあるが、大抵は突っ込み不足になるか、消化不良になるかのどちらかだ。その点、この本は下世話にグイグイと掘り下げていくので、ついていける。著者の講義を受けてみたいなと思う。
Posted by ブクログ
社会人生活の中で、人によってルールに対する姿勢や解釈が違うと感じることが多かった。そういう時に考えたことなどが、専門家の言葉で語られていて安心した。
「思考停止した遵法は罪である」というのは本当にその通りだと思った。
Posted by ブクログ
法哲学の基本的な問題をとりあげ、わかりやすいことばで解説している本です。
著者は「はじめに」で、みずからのスタンスを「悪ガキ風」と述べて、権威や社会常識に盲目的にしたがうのではなく、それらに向けて大胆な疑問を提出することを読者にもすすめています。また「おわりに」でも、「常識という池の水、ぜんぶ抜いてみようぜ!」という呼びかけがなされています。
ただ、「あぶない法哲学」というタイトルから期待したほどには、型破りな内容ではなく、どちらかといえば法哲学の基本的な問題を紹介したオーソドックスな入門書という印象です。やはり「はじめに」のなかで、著者は「法律は所詮、世界を回す諸システムの中の一つでしかないと考えている」と述べていますが、そうした著者自身の立場からの法の位置づけについても、もうすこし踏み込んだ議論を展開してほしかったように思いました。
とはいえ、親しみやすい文章で書かれており、この分野になじみのない読者にも理解しやすいという意味では、すぐれた入門書といってよいのではないかと思います。
Posted by ブクログ
本のカバーにある「社会に飼い慣らされないための“悪魔の法哲学”」とあるので面白そうだと思って買ったのだが、結果的にあまり面白さは感じ取れなかった。
これって、想像以上に「きれいごと」を信用し過ぎていて、「きたないこと」が見えなくなっている、そうと指摘されてもそうと感じられなくなっている⁈
だとしたらエライヤバいことなのではないだろうか。
とりあえず巻末にある『ブリッジブック法哲学』、『問いかける法哲学』という本を読んでみるか。
Posted by ブクログ
社会には一定のルールが必要で、それがなければ社会的な動物である人間は生きていけない。そのための法治国家だけど、そも法律を遵守するのは何故か? ここからスタートする。
当然だけど、実際の社会は法律だけではカバーしきれない。道徳律もあって初めて機能するのだと思う。道徳は共通のリテラシーがある者の中でしか通用しない。でも普遍的な道徳ってのはあるのかね。そこで法律の出番になるわけだけど...。