住吉雅美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
法哲学の入門書。哲学的な理論の説明にとどまらず、オリンピックのドーピング問題、結婚制度、コロナ禍の対する日本政府の対応など、記憶にも新しい現代的な問題を具体例に、分析をしてくれているので、とても親近感を持って読み進められた。
それぞれの問題に対しては、筆者の法哲学者としての立場をかなり明確にしている。常識的でありつつかなり鋭い批判を述べるため、個人的には痛快だったが、もしかしたら、そうした筆致自体にアレルギー反応のある読者もいるかもしれない。最後、多種多様な価値観を持った人間が、共に生きていくためには「清濁併せ呑む」「心に毒も栄養も喰らっておおらかに生きる」度量の大きさが必要だ、という言葉は、とても共感した。
内容的には、イギリスの法哲学者ハーバート・ハートの議論を紹介しているところが面白かった。
普通、「ルール」と聞いたら思い浮かべる、何かをすることを禁止したり、罰を与えたりするルールを「責務のルール」とハートは呼ぶ。ただ、そうした原始的なルールに対して、遵守すべきルールそのものを決める「承認のルール」、ルール改廃の権限を与える「変更のルール」、ルール侵害があった際にその解決法について定める「採決のルール」という二次的なルールが存在するという。
こういった、ルールに関する細かい性格の違いは、普段考えないので、とても勉強になった。
他にも本書では、いわゆるただの「慣習」と「ルール」の違いに関するハートの議論も後半で紹介されていて、こうしたことは知らなかったので単純に勉強になった。
ルールというと守るもの。そういったイメージがある人にほど読んでほしい。そのルールは、一体、何のために、誰のためになるのか。それを考え続けるためのヒントがたくさん詰まった本だった。 -
Posted by ブクログ
法哲学の基本的な問題をとりあげ、わかりやすいことばで解説している本です。
著者は「はじめに」で、みずからのスタンスを「悪ガキ風」と述べて、権威や社会常識に盲目的にしたがうのではなく、それらに向けて大胆な疑問を提出することを読者にもすすめています。また「おわりに」でも、「常識という池の水、ぜんぶ抜いてみようぜ!」という呼びかけがなされています。
ただ、「あぶない法哲学」というタイトルから期待したほどには、型破りな内容ではなく、どちらかといえば法哲学の基本的な問題を紹介したオーソドックスな入門書という印象です。やはり「はじめに」のなかで、著者は「法律は所詮、世界を回す諸システムの中の一つでしかないと考えている」と述べていますが、そうした著者自身の立場からの法の位置づけについても、もうすこし踏み込んだ議論を展開してほしかったように思いました。
とはいえ、親しみやすい文章で書かれており、この分野になじみのない読者にも理解しやすいという意味では、すぐれた入門書といってよいのではないかと思います。