佐々木昭夫のレビュー一覧
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人類の歴史は、人間が他の人間に寄生する「マクロ規制」と、目に見えぬウイルスや微生物が人間に寄生する「ミクロ寄生」により規定されてきたといえる。科学技術が大いに進歩した現代においても、人類はこの規定の枠外から出ることがない。
本書は2つの寄生のうち特に「ミクロ寄生」に焦点を当てている。例えばスペイン人の南米征服に疫病が決定的な影響を持っていたことは広く知られているが、ではスペイン人はいつこの疫病を克服したのであろうか?このような考察を繰り広げていくと人類と感染症の壮大な歴史が浮かび上がり、歴史が転回する重大な局面を創出していたことが理解できる。
刊行されたのが1985年であるから、今から40年前 -
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何かしらの偶然でこの本を知り、読めた。本の価値とは決してボリュームではないことを確信できる。
今までは「銃鉄病原菌」が最高と思ってきたが、マクニールの素晴らしさで目から鱗。
中高で学んだ「歴史を塗り替える」とは戦争で打ち勝つこと、民族は前に進んで行ったという論理。
だが、この本を読むと 救いのない大量の死は神の存在すらも排除。過去の事実のみならず、未来を予知しようとするとき、感染症の役割を除外しできない。如何なる社会的手法のレベルに関係なく、感染ウィルスの侵入に対し 人類は全く 脆弱な存在であるという事実は眼前たる事実。地球上に、たんぱく質物体が登場した後 人類に先駆けて活動を始めたウィルス -
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ネタバレ下巻の半ばから、ようやく(期待していた)本題。
何故、かくも少数のスペイン人に、アステカとインカという二つの大帝国が征服されたのか。
確かに、スペイン人がやってきて疫病が大流行して膨大な死者が出、且つスペイン人は疫病の被害を受けない。それなら、人口が激減して軍のみならず国家も社会も崩壊するし、「神の恩寵を受けているとしか思えない」スペイン人への抵抗は物理的にも精神的にもできなくなるな。そりゃあ、キリスト教に改宗するわけだ。ようやく理解できた。
そして、「悪疫によって引き起こされた一般大衆の憎悪と恐怖の感情は、激越な形をとってほしいままに表現された。特に貧者の富者に対する長い間抑えられてきた -
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人類の世界共同体化と西洋の興隆において、疫病と免疫が果たした役割の重要性を指摘した著述。これまで世界史というと武器・農機具・移動と生産に関する技術の発展の観点から語られることが多かったけれど、実は生物学的なプロセス、具体的には病原体と人間の免疫の共進化が強い影響力を持っていたという話。
現代の文明化された人類の共同体ではただの小児病とされていたり生活習慣によってレア・ケースとなった感染症の多くが、古代においては死に至る病だった。あまりに迅速に感染者を殺し、未感染者をほとんど残さない病原体は、子孫を残すことができない。よって、新たに人類に寄生するようになった病原体は、最初は激甚な症状を表すも -
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(途中 2014年11月6日)
疑問1「中南米大陸特有の病原菌がピサロやコルテス等ヨーロッパ人に感染しなかったのか」→病原菌の数や歴史の長さ、多様性が違う?
疑問2「なぜアメリカ大陸の熱帯地方はアフリカと違い、人類の居住を妨げる程ではなかったのか」
2019/5/27
#感染症は食物連鎖に組み込まれた一部であり、バランサー
#技術の発展がバランスを一時的に破壊したが、近年感染症の逆襲が始まった
#感染症の根絶は難しいし、被害をコントロールするのも難しい。被害を最小限に抑えるには過大なコストが必要。
#感染症と宿主は持ちつ持たれつで、絶滅させると感染症側も絶滅してしまう可能性がある。だがそれを -
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感染症が土着化すると、人口減少への圧力が減少、人口増へ
民間の習俗は、疫病を防止することも助長することもあった。モンゴルの、モルモットは先祖かもしれないから狩らないようにする慣習はペスト菌との接触を遠ざけた(が、その慣習がなかった漢民族がかかった)
タミル人の、水は毎日組み、室内で長期間そのままにしないという慣習は、居住区域からボウフラの生息域を遠ざけ、マラリアやデング熱対策となった
一方、イエメンの回教寺院の沐浴場では、病原体をもった生物が共有され、清めるどころか感染を拡大させた
マラリアに罹った動きが鈍くなるとさらに蚊に刺されやすくなり、動きを鈍くするマラリア原虫が生存に有利になる。蚊帳 -
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ネタバレ疫病の発生過程の説明にまず驚かされた。初期の人間は、生態系の中に組み込まれており、自然な疫病による人口統制がなされていた。しかし、狩猟や農耕を始めることによって生態系を壊し、ミクロな病原菌の生態系をも壊すことによって細菌の繁殖力を増強することによって都市病等の病気にかかるようになっていった。このように自業自得的な過程があったということに非常に驚いた。
そして、このように周期的に訪れる疫病からの死の恐怖が、キリスト教を発展させていった。というのが面白かった。キリスト教では死は幸福であり、ほかの宗教では不幸であるというはっきりとした違いを再確認させられた。
また、このような疫病が数々の戦争の原 -
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ネタバレ疫病の発生過程の説明にまず驚かされた。初期の人間は、生態系の中に組み込まれており、自然な疫病による人口統制がなされていた。しかし、狩猟や農耕を始めることによって生態系を壊し、ミクロな病原菌の生態系をも壊すことによって細菌の繁殖力を増強することによって都市病等の病気にかかるようになっていった。このように自業自得的な過程があったということに非常に驚いた。
そして、このように周期的に訪れる疫病からの死の恐怖が、キリスト教を発展させていった。というのが面白かった。キリスト教では死は幸福であり、ほかの宗教では不幸であるというはっきりとした違いを再確認させられた。
また、このような疫病が数々の戦争の原 -
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世界史の大家であるウィリアム・H・マクニール先生による、疾病が及ぼした影響から世界史を読み解こうとする野心作。大変ざっくりした展開で驚くが、古今東西の具体例がふんだんに盛り込まれているので、納得できる。
「マクロ寄生」と「ミクロ寄生」に挟まれる「宿主」。バランスをうまくとることで、この三者は存在し続けられる。この平衡状態の網目は、環境によって変化する。例えば、熱帯では密度が高いため、外来種や資源以上の生命を養うことができない。反対に、より寒冷乾燥な気候になればなるほど、密度が低いため、外来種が入る余地がうまれる。
宿主と寄生体の間には、緊張した関係がある。寄生体に対して免疫を持たない宿主は -
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上巻より読み応えあり。
インカやアステカが滅亡してしまったのはヨーロッパ人の軍事力が高かったからと思っていたけど、ほとんどが未経験の疫病によるところと知って、そのスケールの大きさになんとも言えない気持ちになる。
現在も北センチネル島をはじめ未開の部族といわれる人々との交流が制限されていることに納得がいった。ちょっと会っただけで一族全滅の可能性があるなんて恐ろしいし、なんとなくいろんな病気になったり予防接種をしてきたお陰で健康でいられることにしみじみとありがたみを感じる。
あまり語られてこなかったけど、疫病は歴史を大きく変えるのだなと実感。コロナもその流れの一部なんだなぁ。 -
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第四章は、中世ヨーロッパで黒死病と恐れられたペストがユーラシアの草原に棲む齧歯類から広がっていくことを示す。第五章は、大航海時代にアメリカの新大陸に渡ったヨーロッパ人が、免疫系の整っていなかった現地のインディオに与えた影響を論じている。ジャレド・ダイアモンドが「銃・病原菌・鉄」で著述しているように、旧世界と新世界の遭遇で疫病の果たす役割の大きさが非常に良く分かった。
第六章は近代的な医療技術の発展で人類が次第に疫病を制御できるようになった経緯にふれる。ただ、人類が「寄生する形の生物の侵入に対して人類が極めて脆弱な存在である」点は変わらない。 -
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原書が執筆されたのは1970年代の半ばで加筆されたのは1998年。新型コロナウィルスが猛威をふるう20年以上も前のことだが、「序」で述べられる、グローバルな社会では感染症が一瞬で世界中に広がるだろうとの記述は、コロナで苦しむ現代社会を予言しているかのよう。
著者は感染症が及ぼす破滅的な影響の例として、生き残った者たちが精神的打ちのめされることを挙げている。新しい感染症が、特に社会の青年層に対して最大の威力を振るう場合が多く、感染症に続けて何度も襲われると共同社会は崩壊してしまう。また、死と隣り合わせの住民たちが精神的な救いを求めるため宗教が広がっていく理由にもなる。
天然痘やはしかなどの前代未