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アステカ帝国を一夜にして消滅させた天然痘など、突発的な疫病の流行は、歴史の流れを急変させ、文明の興亡に重大な影響を与えてきた。 紀元前500年から紀元1200年まで、人類の歴史を大きく動かした感染症の流行を見る。 従来の歴史家が顧みなかった流行病に焦点をあて、世界の歴史を描き出した名著。(全二巻)
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Posted by ブクログ
人類の世界共同体化と西洋の興隆において、疫病と免疫が果たした役割の重要性を指摘した著述。これまで世界史というと武器・農機具・移動と生産に関する技術の発展の観点から語られることが多かったけれど、実は生物学的なプロセス、具体的には病原体と人間の免疫の共進化が強い影響力を持っていたという話。 現代の文...続きを読む明化された人類の共同体ではただの小児病とされていたり生活習慣によってレア・ケースとなった感染症の多くが、古代においては死に至る病だった。あまりに迅速に感染者を殺し、未感染者をほとんど残さない病原体は、子孫を残すことができない。よって、新たに人類に寄生するようになった病原体は、最初は激甚な症状を表すものの、次第に弱毒化していくように進化する。また、人類の側でも共同体内に一定の免疫を維持した状態が保たれるようになっていく。確かに、生物学を学んだものとしては、そういったとこだろうなと理解できる。その理解の単品と、人類の歴史という壮大なプロセスを組み合わせて新たな発見を発見・提唱できるというところがマクニールのすごいところだと思う。 上述の理解と世界史を組み合わせた場合、それまで交流のなかった人間集団同士が交流するようになった時には一種の無自覚の細菌戦争が行われることが分かる。その時点までにより多くの集団と交流してより多くの病原体と出会っていた方の集団の成員が、他方のインタクトな集団に対して病原体をばらまくことになるからだ。スペイン人がアメリカ大陸に進出した際にインディオを壊滅させた仕組みだ。 マクニールのすごいところは、上記の仕組みに気がつくことに加えてさらに、膨大な量の史料をあたり、各分野の専門家と議論して、着想への裏付けを取る努力をすること。また、その内容を大著として書き上げる能力。着想・裏どり・記述という一連をこなし、何冊も本を書いている。本当に偉大な学者だ。
天然痘等の人類にとっては突発的に表れたミクロの病魔との戦いの歴史。 文明の興亡に深く、絡んでいることに驚いた。
(途中 2014年11月6日) 疑問1「中南米大陸特有の病原菌がピサロやコルテス等ヨーロッパ人に感染しなかったのか」→病原菌の数や歴史の長さ、多様性が違う? 疑問2「なぜアメリカ大陸の熱帯地方はアフリカと違い、人類の居住を妨げる程ではなかったのか」 2019/5/27 #感染症は食物連鎖に組み込ま...続きを読むれた一部であり、バランサー #技術の発展がバランスを一時的に破壊したが、近年感染症の逆襲が始まった #感染症の根絶は難しいし、被害をコントロールするのも難しい。被害を最小限に抑えるには過大なコストが必要。 #感染症と宿主は持ちつ持たれつで、絶滅させると感染症側も絶滅してしまう可能性がある。だがそれを考えてやるのではなく、失敗を繰り返しトライエラーで結果的にバランス状態となる。
歴史を理解する上で、気候変動と人口動態は考慮しなきゃならんと思っていたが、そこに疫病も追加せねば。。。 疫病は身体的にだけでなく、精神的にも人、社会を打ちのめす。(だから、南米の古代帝国はスペイン人に屈した) 日本では、人口が十分になり、疫病が風土病として固定されるまでは、社会に免疫がつかず、1...続きを読む世代ごとに疫病が流行した(平安頃)が、これを乗り越えると、人口が倍増した(平安末期~鎌倉)
世界史の大家であるウィリアム・H・マクニール先生による、疾病が及ぼした影響から世界史を読み解こうとする野心作。大変ざっくりした展開で驚くが、古今東西の具体例がふんだんに盛り込まれているので、納得できる。 「マクロ寄生」と「ミクロ寄生」に挟まれる「宿主」。バランスをうまくとることで、この三者は存在し...続きを読む続けられる。この平衡状態の網目は、環境によって変化する。例えば、熱帯では密度が高いため、外来種や資源以上の生命を養うことができない。反対に、より寒冷乾燥な気候になればなるほど、密度が低いため、外来種が入る余地がうまれる。 宿主と寄生体の間には、緊張した関係がある。寄生体に対して免疫を持たない宿主は、寄生体から破滅的な攻撃を喰らうことになる。しかし、攻撃が激しすぎて宿主を完全に絶滅させてしまえば、寄生体の生存に関わる。何世代も(本書内では四~五世代とある)かけて、両者が和解しようとするプロセスをたどる。結果、宿主は免疫をもち、寄生体の暴力性はマイルドになる。 これらの仮説を駆使して、上巻では原始時代~モンゴル帝国勃興以前の世界史を読み解いている。
世界史を疫病の面から考察していて面白い。ぱっと思い付いたのは中世ヨーロッパのペストと新大陸の疫病くらいだったけど、至る所で病気の流行と人口減少は発生していたのだろうと考えさせられた。 ジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』と合わせて読むとより面白いかも。
原書が執筆されたのは1970年代の半ばで加筆されたのは1998年。新型コロナウィルスが猛威をふるう20年以上も前のことだが、「序」で述べられる、グローバルな社会では感染症が一瞬で世界中に広がるだろうとの記述は、コロナで苦しむ現代社会を予言しているかのよう。 著者は感染症が及ぼす破滅的な影響の例として...続きを読む、生き残った者たちが精神的打ちのめされることを挙げている。新しい感染症が、特に社会の青年層に対して最大の威力を振るう場合が多く、感染症に続けて何度も襲われると共同社会は崩壊してしまう。また、死と隣り合わせの住民たちが精神的な救いを求めるため宗教が広がっていく理由にもなる。 天然痘やはしかなどの前代未聞の疫病が人間社会に与える大きな影響、人口密度の大きいエリアで小児病として定着していく過程がたいへん興味深かった。
疫病・感染症との関わりという視点でみたW.マクニール先生の世界史講義。コロナウィルスが拡大を続けているから、ということではないけれど、なんとなく手にとった一冊。上巻は、原人たちの存在した時代、歴史時代から、モンゴル帝国の勃興の前頃までを扱っている。 上巻では、私たちが文明を持つずっと昔から、私たち...続きを読むの先祖は感染症とともにあり、まるで人類の歴史のすぐそばを伴走するように、感染症も種類や姿を変えながら、脈々と時を刻んでいたことがよくわかる。 全体として巨視的な記述というか、抽象的な記述が多いが、大昔のことで記録も十分に残っていない時期のことであり、致し方なかろうと思われる。しかしそれだけに、感染症が都市から周辺地域へ広がっていく様子や、国を越えてユーラシア大陸をダイナミックに拡散していく様子をみることができ、極めて興味深い。マクロ寄生とミクロ寄生の間で、私たち人類がいかに生き延び、発展してきたかをみることができ、興味は尽きない。 歴史は流れ、マクニール先生の世界史講義も下巻に突入していく。
実証的な裏付けをさほど重視していない点で時代を感じるところはあるが、それにしても40年前にこんなものが書かれていたとは。
著者のマクニール氏は当然歴史家ですが、これを読むと科学者でもあると思うのです。 この本では「世界史」で詳細に触れていない疫病について述べているのですが、数少ない古書を紐解くにしても医学や生物学などの自然科学の知識がないと、感染症ついては到底推測できないからです。グローバル化した現代社会では地球の裏側...続きを読むで発生した感染症が忽ち全世界を脅かす危険に曝されています。最近ではパンデミック寸前だったエボラ出血熱が記憶に新しいところです。今日の人間を脅かす感染症の元となる出来事は、人類の祖先がはるか昔、アフリカの大地から各地に移動していったことに寄ります。熱帯雨林での多様なミクロ寄生の網の中で他の生命体と絶妙なバランスを維持してきた環境から抜け出した人類は、各地で様々な特異な性質を現し、他の動物を圧倒し食物連鎖の頂点に立ちます。爆発的に人口も増えて行くのですが、これにより人体内部の寄生体(微生物)の多様性も失っていたのです。宿主と寄生体のアンバランスが病気を発症させるという基本的な考え方を思い出すと、脆弱なミクロ寄生の環境に身を置いた人類がその後、幾度も目に見えない病原体の侵入に曝され、急激な人口減少を繰り返したのも必然の成り行きなのでしょう。冒頭でアステカ帝国が少数のスペイン人により制圧された要因が疫病にあると推測していますが、これまでの歴史家が焦点を当ててこなかった部分で学際的で納得がいきます。疫病の流行がキリスト教や仏教の布教に影響したというのもなるほどね〜と思いましたし、以前に読んだ孔子の時代をテーマにした小説で南部の地方の医者が薬の処方や治療に長けていると言う記述があったのは理由があったことに気づきました。マクニール氏によると、天然痘の根絶に成功したとWHOが高らかに宣言したとしてもそれは「人類の手による生態学的な混乱のひとつ」であるから、われわれは「依然として地球のエコシステムの一部」であるという人間の本質的な条件に変わりはないといいます。微生物側からするとちゃんちゃらおかしいということなのかもしれません。下巻では 黒死病など具体的な疫病についての考察があるようなのでこれも楽しみです。ネイサン・ウルフの「パンデミック新時代」という本とこの本を並行して読むと尚理解が深まるのでお勧めします。、
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疫病と世界史
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ウィリアム・H・マクニール
佐々木昭夫
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