樋田毅のレビュー一覧
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女帝と囁かれた村山美知子の華やかな生涯と創業家として朝日新聞と対決する晩年の話。
著者が本当に村山美知子という人間に惚れ込み、だからこそ朝日新聞による法的に疑問なレベルでの株式譲渡を許せないという熱意がノンフィクションとして素晴らしい。まるで中世ヨーロッパの貴族の様に気高く気品に溢れ、芸術を愛した村山美知子。何もかも持ち合わせて生まれたはずの村山だが、生涯の伴侶は得られず社主の座も追われてしまう。金持ちは金持ちで苦悩や困難があるということか。
また、いまの朝日新聞の筆頭株主がなぜ香雪美術館なのか、そのカラクリを解き明かしているのも面白い。
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ネタバレ単行本はもちろん発売されてすぐに読んだ。
ポリタスTVに出演された時の樋田さんの誠実で粘り強く、ジャーナリストとしては常に公正であろうとされていて、正義を追い求めるお人柄が滲み出るお話しぶりだったことに感銘を受けたからだ。
映画ゲバルトの杜の上映後のトークセッションでも、思わず慟哭こみあげる様子を見せられ、本当に地道に真摯に取り組まれている、その中でなにより人間性、人間は自由に生きるべきであるということが感じられこちらも込み上げるものがあった。
文庫では、文庫版のためのあとがきが追加されていて、とりわけ、代島監督の映画を観た後に読むと良いと思うし、当時のことを今も振り返り振り返り生きてこられた -
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ネタバレ1970年代、早稲田で学生運動の真っただ中にいた著者が、経験したことを克明に記したノンフィクション。暴力がキャンパスを支配していた当時の状況を、当事者の目線で書いている。
学生運動に興味があったので読みました。非常に興味深く、読み応えがありました。
単純な感想としては、「大学って、学問をするところじゃないの?当時の大学はいったい何やってたんだ!?」という疑問をもちますね。本書の記述からだと、著者は反革マルのための運動ばかりやっていて、肝心な学問がおろそかになっているような印象になってしまう。(もちろんちゃんと卒業しているんだから、そんなはずないんだろうけど)。さらに単純な感想を加えると、いや -
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津田大介さんのポリタスTV で樋田さんのお話を聞いて大変感銘を受け本書を知った。
ものすごいルポルタージュだ。ルポルタージュの意味は本来のフランス語で探訪と聞いたことがある。
ニホンというクニの近現代史、ジャーナリズム、メディアのみならず文化という観点からもまさに社主美知子さんその父母や祖父母が、生き、世の中に還元されてきたこと、普遍的な愛のようなものが、気鋭のジャーナリストの鋭い眼差し、公平であろうと自らを追い込むような目線で語られており、感動した。
大阪国際フェスティバルとかフェスティバルホールとかそんなことも全く知らないことばかりで大変勉強になった。 -
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【まるで奇跡のような、素敵なおばあちゃんだった、と何度も思い返している】(文中より引用)
朝日新聞創業者の孫にして最後の「社主」となった村山美知子。芸術活動にも身を捧げた数奇な人生を追いながら、経営陣との長年にわたる複雑な関係を描いた一冊です。著者は、自身も朝日新聞社で活躍した樋田毅。
村山美知子という一人の人物を丹念に取材したノンフィクションとしての価値はもちろんのこと、「経営と資本」の関係を考える上でも大変に示唆に富む一冊でした。企業にチェック・アンド・バランスをもたらす機能としての経営者一族の役割は改めて見直されても良いのかもしれないと感じた次第です。
「そういえばあの時・・・」と -
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色々考えさせられる1冊。
以下自分メモ。
男社会サラリーマン社長と、家と名誉を背負う前提がある生まれながらの金持ちオーナー一家では、前提とする価値観も利害も違うがために、どこかでもめるのは必然だったんだなーと。モメそうなポイント全てでもめていて、誰かなんとかできなかったのか?とさえ思いました。でも現実はこんなものだよね。
著者である、元朝日新聞新聞記者が異動でオーナーの宮仕え?になったことで見聞したことを書き残した貴重な1冊。サラリーマンならわかる。これは出版にあたりたくさん敵を作ったことでしょう。ほんとに執念深くて面倒なのは女ではなく(以下略)。
でも、記者として、自分が書き残さなかっ -
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統一協会の幹部でありながら協会の反社会的な行動を諌め、自身の懺悔としてその反社会的行動の実態や教団の様々な疑いに対して私的見解を述べている。
統一協会に対しては櫻井義秀 著『統一協会』を読み、教祖の文鮮明の軌跡や統一教会の実態などを知ることができたが、本書においてそこでは著述されていないことも赤裸々に書かれていて、統一教会が権力に対していかに食い込んでいたのか改めて確認することが出来た。特に、私兵隊が組織され自衛隊の訓練に参加していたということと、ソ連などの共産国家に対する諜報活動を行っていたという事実は、統一教会が武力を厭わず目的を遂行する姿勢や、彼らの組織力の強さを改めて実感し、この -
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本当ならクラシック音楽に関心のある人が読むとよいのだけど。
3代目の社主が日本のクラシック音楽にもたらした功績が描かれている。朝日新聞社の社主だからできたことだと思われていたようだが、欧米の音楽家を日本に招いて満足のいく演奏をしてもらうのは、目利きと経営能力と愛がなければできなかったことのようだ。
そういう、音楽プロモーターとしての伝記であればよかったのだけど、朝日新聞社社主としての生涯も描かなければならない。
圧倒的な株式を保有する創業家一族と経営陣の冷戦が描かれる。
朝日経営陣は陰に陽に社主(や創業家)の力を削ごうと働きかけており、著者はそれに対してネガティブである。まあ確かに、株主がう -
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元朝日新聞記者で、阪神支局襲撃事件を長年取材している著者。社主担当の「大阪秘書役」で、最後の社主、村山美知子さんの側で見聞きしていたことを記録したのが本書だ。神戸の高級住宅地、御影に香雪美術館を抱える大邸宅に一人暮らし。著者が「最後の令嬢」と称する通り、有馬や麻布などに別荘も抱え、昭和初期の上流階級の暮らしぶりを興味深く読んだ。甲南小から甲南高等女学校、東京の自由学園に通い、終戦直後に元海軍大尉、武田光雄氏と結婚するが、お家柄の違いですぐに離婚してからは、子供もいない。父の村山長挙は、旧岸和田藩主の華族岡部家の家系で、京大卒業後に村山龍平の娘於藤の婿養子となる。兄弟には、終戦時の侍従で、玉音放
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★消えた日本の貴族★上野家を上回り朝日新聞の最大の社主であった村山家。貴族のような育ちをした最後の社主、村山美知子氏の晩年に仕えた元朝日新聞記者の記録。
朝日にとって、目の上のたんこぶであった社主をいかに排斥するかは長年の課題だったろう。著者から見ると、その対応は特に亡くなるタイミングで礼を欠いていた。貴族的な美知子氏にほれ込んだという面はあれど、義憤から朝日経営陣の対応を記した。朝日と社主の関係を理解するのに分かりやすい。
一方で美知子氏は音楽プロデューサーなど芸術家のパトロンとしての役割や能力は高かったのだろうが、支えるだけの実務家が乏しかった。姉妹の仲が必ずしも良くなく、子もいなかっ