丸山有美のレビュー一覧
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私にとってこのシリーズを読むことは、高級チョコを愛でることに似ている。
各テーマに沿った選りすぐりの作品が世界中から集められ、まるで一つの箱に収められているよう。一粒一粒が珠玉で、我々の目を楽しませてくれる。
青・ピンク・黒・赤、そして今回遂に「ゴールド」まで辿り着いてしまった…!
ゴールドといえば、私はまず「金の茶室」といった権力の誇示を連想する。
昔からゴールドは神の色と相場が決まっていて、神殿といった宗教施設に多用されてきた。また、世界中の権力者たちはそうした神聖な色にあやかろうとするかのごとく、自身の周りをゴールドで固めてきた。
最初に登場する「ツタンカーメンの黄金のマスク」(P 1 -
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絵画での青の顔料を取り上げ、その変遷と青を顕著に使った絵画、美術品を様々に紹介している。
青の植物由来の天然色素は、木藍、パステル(ウォード)、鉱物由来の天然色素は、ラビスラズリ、アズライト、合成色素は、エジプシャンブルー(エジプト)、ウルトラマリンブルー(フランス)、コバルトブルー(フランス)、インディゴブルー(ドイツ)、プルシアンブルー(ドイツ)。
古代エジプトで既に合成色素のエジプシャンブルーが作られていたのには驚いた。スフィンクスの置物が鮮やかな青なのである。ジョットが高価なラビシラズリを使うことができずに、アズライトを使っていたとか。おいおい、教会は資金を出してやらなかったの?葛飾北 -
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原色オブ原色!赤は特にお気に入りで、今履いているルームソックスも赤だ。
本書曰く、赤は人間の視覚が最初に捉えることのできる色調で、人類が最初に命名した色でもあるとの事。そんな由緒正しきお色だからか、ある時は権威、またある時は不道徳の象徴だったりと、実に様々な意味合いを赤は含んでいる。
本書で取り上げられている作品群の雰囲気も、今までのシリーズと比べると、アップダウンが激しかった。元は同じ赤なのに、ここまで印象が違うもんなの!?的な。
副題の「ポンペイからロスコまで」。
ポンペイの街を襲った悲劇には心が痛むが、火山灰が残してくれた遺産はミラクルと断言して良い。建物や彫刻は原型を留めているし、 -
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借りたもの。
副題通り、古代エジプト(エジプシャンブルー)からイヴ・クライン(IKB/インターナショナルクラインブルー)まで。
青という色を得る事の困難さ。
木藍(インディゴ)などの天然資源に頼らざるを得ず、鮮やかな青はラピスラズリやアズライトといった宝石・貴石類が原材料だったため、高貴な身分ないし宗教的なものに使われていた。
1704年に初めて合成された人工化合物・プルシアンブルー(紺青)の登場がいかに画期的であったか……
葛飾北斎《神奈川沖浪裏》についても言及されていた。
日本人としては嬉しい限り。
そしてこのダイナミックに誇張された波のインパクトは「なるほど(海外にとって日本の)ポップア -
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このシリーズ、ジワジワ好きになりつつある…。
一つの色を軸に、古今東西のアート作品を鑑賞していく「色の物語」シリーズ。作品の感想をひたすら並べたりと大したレビューは書けていないが、何が観られるのか毎回楽しみにしている。
記念すべき第3回目は「黒」。
自分が黒と聞いてまず思い浮かべるのは、「無難で目立たない色」のイメージである。
ファッションに困ったらとりあえず黒を着ておけば間違いないし、悪目立ちしない。芸能人の私生活スナップも黒を中心とした暗色を纏っていることが多い。
しかし読後の現在「黒ってあたたかい色なのかも」と、自分の中の固定概念がちょっぴり揺らいでいたりする。
「夜、不幸、死など実 -
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BLEU「青」に続き、今回はROSE「ピンク」の系譜を辿っていく。
著者曰く、ピンクのフランス語は”rose”「薔薇色」で、薔薇の花が持つ豊かな色合いを意味する。(あくまで個人の感覚だが)ブルーと違ってピンクは濃淡の幅が広く、場合によっては電灯の色に溶け込んでしまう。
本書では≪ヴィーナスの誕生≫(P.18)etc...といったアート作品に、幅広いピンクのイメージが散りばめられている。そのためなるべく外が明るいうちに、自然光が降り注ぐ場所で読んでいただくことをお勧めしたい。
最近は疑問視する声もあるが、少し前までは「ブルー=男性」「ピンク=女性」の色と(いつの間にか)定められていた。
しかし -
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中世・ルネサンスまでは、いわゆるピンクは淡い赤と認識されていた。ピンクが意識的に使われるようになったのがロココ。ピンクそのものがひとつの色として言及されたのが1837年。
昔から、絵画においては、いわゆるピンクは絵画の中での効果をちゃんと意識して使われていたのであろう。信仰、喜び、権威、美を表すものとして。ロココはもちろんエロスでしょう。でもねえ、こうやってこの画集でピンクが目立つ形で使われている絵画を見ていくと、はっきり言って違和感の方が多いなあ。ロココやドガが女性を表現するのに使っているのはそうでもないのは、ピンクは女性的な色という固定観念があるのかなあ。ローレンス・アルマ・タデマの「ヘリ -
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仕事とかで疲れている時に見ると、ウルウル来ちゃうんだろうなー。
どの青も目に訴えてくるかのように眩しくて、美しくて。「青が目にしみるぜ…」と、「神の色」とも呼ばれた奇跡の前にひれ伏すしかない。
自然界において青色は、空や海に代表される。本書ではそれが人類の手に渡り、様々な「品種改良」を経て、商品やアートに投影されていく過程が簡単にまとめられている。青色を創り出すための素材や色のバリエーションをサラッと紹介したのちには、古今東西のアート作品を時系列順にディスプレイ。
まさに、青をテーマにした展覧会場を歩いている感覚だった。展覧会ならではの観覧疲れや、終盤にかけて間延びしている感じがあったのは否