【感想・ネタバレ】色の物語 青のレビュー

あらすじ

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青について深く知りたい人に。青の歴史をたどる旅

◆巨匠たちが好んだ青の秘密
葛飾北斎の好んだ青の秘密。ゴッホが神の色とあがめたコバルトブルー。ピカソによる美しくも陰鬱な青。モネの青い睡蓮は、多くの作家に影響を与えました。
美術史において、青という色の影響力は計り知れません。本書では、青を用いた著名な美術作品のビジュアルを多数掲載、青色と美術作品の切っても切れない関係を、気鋭のフランス人美術史研究家が解説します。

◆青の成り立ちと歴史を知る
ラピスラズリのような鉱石、インディゴやパステルといった植物による青など、さまざまな青色の由来について紹介。
主要な青色色素のルーツを世界地図上で俯瞰できるほか、天然色素や合成色素からどのように絵の具として使える色になっていったのかまで、図解でわかりやすく紹介しています。

◆構成(抜粋)
アートの中の青/青の世界地図/青のバリエーション/アメンホテプ3世のスフィンクス/手紙を読む青衣の女(フェルメール)/神奈川沖浪裏(葛飾北斎)/星月夜(ゴッホ)/大水浴図(セザンヌ)/自画像(ピカソ)/青い睡蓮(モネ)/青い裸婦 III(マティス)/とても大きな水しぶき(ホックニー)/空の青(カンディンスキー)ほか

◆「色の物語」シリーズ
その色はどこから来て、どこへ向かうのか。古今東西文明のなかで、さまざまな意図で使われてきた「色」の歴史とストーリー、影響力を、名だたるアート作品の美しいビジュアルでたどる。地図や図解、年表等のグラフィックも豊富に盛り込み、多彩な角度からの解説が特徴。本書はその第一弾。続編として「ピンク」「黒」「赤」「ゴールド」刊行予定。

【著者について】
ヘイリー・エドワーズ=デュジャルダン
美術史・モード史研究家。エコール・デュ・ルーヴル、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション卒業。キュレーター、フリーランスのライターとして、ヴィクトリア・アンド・アルヴァート美術館の調査事業や展覧会に協力するほか、個人コレクター向けのコンサルタントとしても活躍する。ギ・ラロッシュのメゾンのアーカイブ部門の設立を手がけた。パリでモード史、ファッション理論の教鞭をとる。

【翻訳者について】
丸山有美 Ami MARUYAMA
フランス語翻訳者・編集者。フランスで日本語講師を経験後、日本で芸術家秘書、シナリオライターや日仏2か国語podcastの制作・出演などを経て、2008年から2016年までフランス語学習とフランス語圏文化に関する唯一の月刊誌「ふらんす」(白水社)の編集長。2016年よりフリーランス。ローカライズやブランディングまで含めた各種フランス語文書の翻訳、インタビュー、イベント企画、イラスト制作などを行なう。

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Posted by ブクログ

絵画での青の顔料を取り上げ、その変遷と青を顕著に使った絵画、美術品を様々に紹介している。
青の植物由来の天然色素は、木藍、パステル(ウォード)、鉱物由来の天然色素は、ラビスラズリ、アズライト、合成色素は、エジプシャンブルー(エジプト)、ウルトラマリンブルー(フランス)、コバルトブルー(フランス)、インディゴブルー(ドイツ)、プルシアンブルー(ドイツ)。
古代エジプトで既に合成色素のエジプシャンブルーが作られていたのには驚いた。スフィンクスの置物が鮮やかな青なのである。ジョットが高価なラビシラズリを使うことができずに、アズライトを使っていたとか。おいおい、教会は資金を出してやらなかったの?葛飾北斎がドイツで1706年に開発されたプルシアンブルーを、あの神奈川沖浪裏に使っていたそうな。ほうほう。オランダから輸入したやつなんだろうな。
様々な絵画が紹介されているが、青という色彩が持っている清冽さや神秘性、静謐さなどが徐実に現れていて感心する。フリードリヒ、ホイッスラー、ルドン、スタールなどにとってはかけがえのない色だろう。ホックニーやホッパーの絵の青は、なんだろう、虚無の厳しさ、圧力などを示していて、強烈だ。

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2025年05月04日

Posted by ブクログ

借りたもの。
副題通り、古代エジプト(エジプシャンブルー)からイヴ・クライン(IKB/インターナショナルクラインブルー)まで。
青という色を得る事の困難さ。
木藍(インディゴ)などの天然資源に頼らざるを得ず、鮮やかな青はラピスラズリやアズライトといった宝石・貴石類が原材料だったため、高貴な身分ないし宗教的なものに使われていた。
1704年に初めて合成された人工化合物・プルシアンブルー(紺青)の登場がいかに画期的であったか……
葛飾北斎《神奈川沖浪裏》についても言及されていた。
日本人としては嬉しい限り。
そしてこのダイナミックに誇張された波のインパクトは「なるほど(海外にとって日本の)ポップアイコン(となっているん)だなー」と、納得というか感心?してしまった。藍と比較して紺青の鮮やかさは、本当に目を惹くだろう。

合成色素で容易に手に入るようになり、風景画では壮大な空や海を描く事に大活躍し、19世紀末以降は、リアルな表現をするための色から精神性や感情を表す色へと変化していったという指摘に納得。ピカソの青の時代とか。

前半の解説の後、青が効果的に使われている美術作品、工芸品について、個別の解説がされている。
現代に近くなればなるほど、心象風景の世界に、作品が移行していくような掲載順。

写真で掲載されている、イヴ・クラインの作品は、青が暗いような印象を受けたけど……
前に何かで見た作品は、背景の金と相まって、輝くような鮮やかな青の印象だった。顔料もそんな感じがしているのだが、それは私の思い出補正か?

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2024年09月19日

Posted by ブクログ

青ってどんな色?空や水の色、悲しい涙の色、神聖な色、高貴な色…など、時代でも、地域でも異なる意味を持ち、そして異なる青が用いられてきました。この本では、前半は青の歴史について、後半では青の持つメッセージについて紹介しています。作品によって暖かい、冷たい、明るい、苦悩など全く違った意味を持っていることがとてもおもしろいです。

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2025年05月25日

Posted by ブクログ

仕事とかで疲れている時に見ると、ウルウル来ちゃうんだろうなー。
どの青も目に訴えてくるかのように眩しくて、美しくて。「青が目にしみるぜ…」と、「神の色」とも呼ばれた奇跡の前にひれ伏すしかない。

自然界において青色は、空や海に代表される。本書ではそれが人類の手に渡り、様々な「品種改良」を経て、商品やアートに投影されていく過程が簡単にまとめられている。青色を創り出すための素材や色のバリエーションをサラッと紹介したのちには、古今東西のアート作品を時系列順にディスプレイ。
まさに、青をテーマにした展覧会場を歩いている感覚だった。展覧会ならではの観覧疲れや、終盤にかけて間延びしている感じがあったのは否めないけど…。

個人的に興味深かったのが、古代史における青の系譜だ。
紀元前2,500年頃に「エジプシャン・ブルー」という(何と!)合成色素が開発され、そこから他の文明に青が伝わるまで随分待たなければならなかった。エジプシャン・ブルーが使用されたものでは青いカバのオブジェが有名で、自分は本書のスフィンクスよりも真っ先にカバ君の方を想起した笑
しかし古代ローマで青色は敵の民族を想起させるもので、野蛮な色だと認識されていたという。確かにローマやギリシャ美術で青を見たことがない…気がする。彼らの文明で青を確認できないことから、「青い色調を判別できない視覚障害にあったのだ!」という説まであったらしい。

そんな中で自分の目を引いたのが、「ディアナ」というフレスコ画。
紀元前1世紀の作品で、発掘場所は何とヴェスヴィオ火山の麓!目にも鮮やかな藍色をバックに弓矢を構える、美しいシルエットの女性。この青もエジプシャン・ブルーと言われており、確かに青みがカバ君やスフィンクスのそれと近い。ポンペイは古代ローマの一部だったはずなのに、何故青が使われているのか。交易が盛んな地域だったから、外部から入ったものも自然に溶け込んだのかな?
考古学者さながらに、ここまで想像力を掻き立てるとは思わなんだ。

日本人としては北斎のページを見逃すわけにはいかない。そう、富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」だ。(そうドヤっておいてなんだが、今まで正式名称を言えずにいた…)
フランス人の著者視点では、あの大波が「ポップアイコン」にも映っているのがまた面白い。「都市に暮らす豊かなブルジョワジーの嗜好を満たすために浮世絵が作成された」という見方も独特だなー…と笑

ワシリー・カンディンスキーの「空の青」(1940年)に描かれているのは、空に浮かぶカラフルなオブジェたち。全体的にビジュアルが可愛いから目に留まったのだが、制作背景は戦時下の鬱屈した世相から来ている。
何かの手記でひめゆり部隊の女学生が「戦争が終わったら両手を広げて青空の下を駆け回りたい」と遺していたのを思い出し、目の前の「空の青」と重ね合わせていた。

「天上と地上をつなぐ色と言ったら?ー 青をおいて他にはないでしょう」

青は神の色。それは時に、地上の苦悩を包み込んでくれる。

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2024年06月07日

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