【感想・ネタバレ】色の物語 赤のレビュー

あらすじ

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特別な色「赤」の名作を堪能できる

◆文化と伝統に深く結びついてきた色
火と血の色である赤は、人間が最初に名前をつけた色と言われています。洞窟壁画に始まり、生命の輝きから死の哀悼まで、赤は人間のあらゆる感情を宿す特別な色です。古今東西のアーティストたちは赤に魅せられ、興味深い赤の使い方をしています。

◆あらゆる原型となる色
赤はさまざまな宗教において善と悪を象徴し、両義性をもちます。そして王の特権を表した色は、革命を象徴する色にもなっていきました。本書では古代の壁画にはじまり、マティスやゴーギャン、モンドリアンやロスコらが描いたさまざまな赤を用いた作品を堪能できます。

◆構成(抜粋)
アートのなかの赤/赤の世界地図/赤のヴァリエーション/赤いターバンの男(ヤン・ファン・エイク)/赤い服を着た女性の肖像(アーニョロ・ブロンズィーノ)/妻に嘲笑されるヨブ(ジョルジュ・ド・ラ・トゥール)/アレアレア(ポール・ゴーギャン)/赤いアトリエ(アンリ・マティス)/恋人たち(エゴン・シーレ)/赤のコンポジションB (No.II)(ピエト・モンドリアン)/Untitled(マーク・ロスコ)/Red Dots(草間彌生)/肉屋(アンニーバレ・カラッチ)/マリー・ド・エレディアの肖像(エミール・レヴィ)/朱色のフォルム(フランティセック・クプカ)/The Hull(ハイマン・ブルーム)/夏の真昼(マルク・シャガール)ほか

◆「色の物語」シリーズ
その色はどこから来て、どこへ向かうのか。古今東西文明のなかで、さまざまな意図で使われてきた「色」の歴史とストーリー、影響力を、名だたるアート作品の美しいビジュアルでたどる。「青」「ピンク」「黒」好評発売中。続編「ゴールド」刊行予定。

【著者について】
ヘイリー・エドワーズ=デュジャルダン
美術史・モード史研究家。エコール・デュ・ルーヴル、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション卒業。キュレーター、フリーランスのライターとして、ヴィクトリア・アンド・アルヴァート美術館の調査事業や展覧会に協力するほか、個人コレクター向けのコンサルタントとしても活躍する。ギ・ラロッシュのメゾンのアーカイブ部門の設立を手がけた。パリでモード史、ファッション理論の教鞭をとる

【翻訳者について】
丸山有美 Ami MARUYAMA
フランス語翻訳者・編集者。フランスで日本語講師を経験後、日本で芸術家秘書、シナリオライターや日仏2か国語podcastの制作・出演などを経て、2008年から2016年までフランス語学習とフランス語圏文化に関する唯一の月刊誌「ふらんす」(白水社)の編集長。2016年よりフリーランス。ローカライズやブランディングまで含めた各種フランス語文書の翻訳、インタビュー、イベント企画、イラスト制作などを行う。

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Posted by ブクログ

原色オブ原色!赤は特にお気に入りで、今履いているルームソックスも赤だ。

本書曰く、赤は人間の視覚が最初に捉えることのできる色調で、人類が最初に命名した色でもあるとの事。そんな由緒正しきお色だからか、ある時は権威、またある時は不道徳の象徴だったりと、実に様々な意味合いを赤は含んでいる。
本書で取り上げられている作品群の雰囲気も、今までのシリーズと比べると、アップダウンが激しかった。元は同じ赤なのに、ここまで印象が違うもんなの!?的な。

副題の「ポンペイからロスコまで」。
ポンペイの街を襲った悲劇には心が痛むが、火山灰が残してくれた遺産はミラクルと断言して良い。建物や彫刻は原型を留めているし、『秘儀荘』(P 20)のような壁画も、当時のカラーのままで残っている。
…と言いたいところだが、実はこの『秘儀荘』で使われている背景の赤は、元々は黄土色だったという説があるらしい。何でも、火山ガスと画に使用された鉛と水銀が反応し、赤へと変色したのかも?…って。
鉛と水銀を使用していた絵師さん?たちの健康状態を心配しつつ、むしろ変色後で良かった!と感嘆した。

「色と形の関係のようなことには興味がありません。わたしが関心を持っているのは、人間の基本的な感情、悲劇、陶酔、破滅を表現することだけです…」(マーク・ロスコ、P 52)

マーク・ロスコって画家の名前は初耳だったけど、『Untitled』(P 52、1961年)の赤は、視界がじんわりと温かくなった。
いわゆる抽象画で、朱色がかった赤が二段に分かれてキャンバスいっぱいに塗られているだけ。なのに本書の中では好きな作品の部類に入っている。
今までのくっきりとした赤を見慣れていたせいで、このトマトスープのような優しい赤に惹かれているのかも。

権威的なものでいうと、中国の鼻煙壺(びえんこ、P 74)が強く印象に残った。
上流階級が嗅ぎタバコを嗜む際に用いる壺で、フタについた小さなヘラでタバコをすくい、親指の爪の上に乗せて吸い込むという。
とにかく、ビジュアルがおどろおどろしい。ほぼ全面赤の漆器で、その光沢は高級感よりも毒々しさを引き出している。一体、お貴族様たちはどんな顔して吸っていたのか…どうしても平穏な光景が浮かんでこない汗

日本人枠では、草間彌生と塩田千春が選ばれていた。
草間彌生(P 56)の”Red Dots”(2011年)は、彼女の代名詞とも言える水玉模様が、これまたキャンバスいっぱいに散りばめられている。集合体恐怖症だが、勇気を振りしぼり目を凝らしてみると、水玉同士がくっついていたりなど色々と発見があった。
塩田千春(P 104)は、現在ベルリンを拠点に活動されていて、ご出身は岸和田とのこと。
無数の赤い糸がボートに絡み付いていて、私にはたぎる血のように思えた。(だんじり祭りの時のような笑) ボート単体では無機質だけど、そこに糸が加わることで、ボートが生きているような錯覚すら覚える…。


それにしても、原色オブ原色の作品なんて、この世にごまんとある。他のシリーズもさることながら、その中から一体どうやって作品をセレクトしたのだろう?
インタビューできるんだったら、真っ先に聞きたい!

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2025年03月31日

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