西野智彦のレビュー一覧
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これが経済小説だったらどんなに面白いエンターテインメントだったろう。しかし残念ながらこれはドキュメントだ。こんな無謀な社会実験に日本国民を巻き込んで、結果トヨタを始めとする輸出産業と、海外に生産子会社を持つグローバル企業、そしてインバウンドに関わるごく小さな業界を為替誘導で潤しただけ。おまけにトリクルダウンも起こらないから、アベや黒田が待ちに待ったインフレや円安が逆に多くの国民を困窮に追い込んでいる。これで実験成功という認識なら政治家、政策責任者として失格と言わざるを得ない。
この十年の異次元緩和で得た最大の成果は、デフレはインフレと違って貨幣現象ではなく、所詮は日銀が操作できるものではなかっ -
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第2次安倍政権は2012年12月26日に始まり、安倍元総理の体調不良による2020年9月16日の辞任まで、約8年間続いた。安倍政権の経済政策は「アベノミクス」と呼ばれた。それは、①異次元の金融緩和②機動的な財政政策③民間の成長戦略という、いわゆる「三本の矢」から成っていた。本書は、そのうちの、「異次元の金融緩和」を扱ったドキュメント、ノンフィクションである。「異次元の金融緩和」は、日銀総裁に黒田東彦氏が就任してから始まった。それは、2%のインフレターゲット・物価上昇目標を置き、その達成に向けて、日銀が、ほとんど無制限に国債やETFを購入し、国のマネーサプライを増やすこと、すなわち、貨幣の価値、
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黒田さんが日銀総裁に就任する少し前から植田さんが総裁になった少し前までの期間のドキュメントです。
2年、2%、2倍というフレーズに決まった時のことや、イールドカードコントロール、YCC導入の経緯などが書かれていて、とても面白かったです。
結局、10年にわたる壮大な実験はあまり効果がなかったのかな、というのが私の感想です。
今の日本が物価上昇しているのは、ウクライナとロシアの戦争がきっかけだったように思います。
そう考えると、インフレは貨幣的な現象だから中央銀行の政策で克服できるけれども、デフレは貨幣的な現象ではなくて、社会構造的な現象なのではなかろうか、だから日銀が一生懸命頑張ってもデフレを克 -
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「日銀」を中心とした、平成日本経済金融史2021/02/11
1990年代バブル崩壊から、停滞の30年 日本金融の記録
1997年金融危機の最中に、日本銀行法の改正が行われ、日本銀行は待望の「独立」を果たすが、他方、政治や世間と直接向き合うことの責任の大きさは望外に大きなものとなった。
2020年コロナ禍のアベノミクスは金融政策を難しくし、結果的には徒に金融緩和を続ける、「日銀漂流」の事態に陥ってしまった。
日銀総裁を時代区分とするまとめ方も「理念・思想」による経済政策史としてユニークであり、成功していると思う。
2021/02/16日銀漂流 西野智彦☆☆☆
1997年6月日銀法改正 戦時法「 -
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「平成金融史」だけど「平成金融破綻史」の方がふさわしいかもしれない。本書に書かれた時代、既に働き始めていて、その頃のことを思い出しました。思えば平成の金融、特に金融行政は、初めて市場というものとの対峙を余儀なくされたのでしょう。本書の中でも有名な大蔵省証券局長が、別館で合宿して証券会社の破綻スキームを練って上機嫌で記者会見までやったものの、コール市場が干上がっちゃってあらら、という話なんかは象徴的でしょう。その中で、比較的市場を学んでいた日銀が、アベノミクスに絡みとられ、市場の機能を削いでいく姿はなんとも哀れで泣ける(特に白川総裁の辞任)。