ユーディト・W・タシュラーのレビュー一覧
-
読書備忘録673号。
★★★★★。
作者の実力が遺憾なく発揮されたミステリー。
時代も舞台もばらばらな場面が入れ替わり繰り広げられ、徐々に全体像を描いていく手腕。しかし、そこに間違いなく感じる違和感。そして巧妙に仕組まれたミスディレクションの罠。さすがとしか言いようがない。
★5つに飢えていたので...続きを読むPosted by ブクログ -
子供たちが誕生日パーティーに招いたのは、かつてのカンボジアを共に生き延び、この地で共に暮らしていた1人の女性。
一体なぜ、疎遠になってしまったか。
回想と現在を行き来しながら語られていく。
最初は、カンボジアの描写が辛くて辛くてページが重くて、違和感に気づけなかった。
あるところで、あれ?と違和感...続きを読むPosted by ブクログ -
16年振りに再会した元恋人の作家と国語教師
二人の会話と回想に加え、作中でお互いが披露する物語を通じて、二人の過去と現在を行ったり来たりする。
帯にミステリーとあったが、所謂「探偵、刑事」物ではなく、すれ違った愛する二人のやり取りで進むストーリーが新鮮だった。
表現が合ってるか分かりませんが、文...続きを読むPosted by ブクログ -
読み終えた後、3回以上、メイ家の章を中心に読み返して、やっと状況が理解できました。
口数の少ない上の弟、これがキムなのですね。
パーティーの場面から、ずっと明言が避けられ、まるで、キムが語っているかのように物語が進み、ずっとずっと騙されながら読み進めました。
カンボジアに暮らす、2つの家族、
オー...続きを読むPosted by ブクログ -
クメール・ルージュのあまりの残忍さ凄惨さに、何度も途中で読むのを止めようかと思ったほど。しかし、(訳者あとがきにもあるように)ピースが足りない感がずっとあって、中程からはもう一気読み。終わりのほうで、そうだったのかー!とか、だから〜〜〜だったのか…とかやっとピースがはまり、また子世代の若者たちの明る...続きを読むPosted by ブクログ
-
本邦初訳となる前作『国語教師』で度肝を抜かれた作者の最新作。50歳の誕生日を迎えるキムに、末息子が用意したサプライズとは……。多数の登場人物、様々な場所、過去や現在が頻繁に入れ替わり何が起きているのか把握しづらいが、クライマックスですべてが明らかになり呆気にとられた。うーん、これは再読したい。Posted by ブクログ
-
唐突に提示される父親の誕生日パーティーへの誘いのメール。
まさに前作『国語教師』の始まりような感じだったので、似たような話かと思いきや、まさかの負の歴史の悲劇と教訓、罪と後悔の物語。
物語への吸引力、読後の胸に残る思いは間違いなく星5つ級。
だが、クメール・ルージュ時代の描写が辛すぎる。
辛すぎて...続きを読むPosted by ブクログ -
読書備忘録550号。
★★★★★。
物語はメールのやりとりから始まる。
クサヴァー・ザントなる男性から、マチルダ・カミンスキなる国語教師へ。どうやら、学生時代恋人の間柄だったようだ。
クサヴァーは売れっ子作家で、マチルダが教師を勤める学校で創作ワークショップにゲスト講師として招待されるという構図。ク...続きを読むPosted by ブクログ -
かつて恋人どおしだった作家のクサヴァーと国語教師マチルダ。
マチルダの勤めるギムナジウムで開催を希望した「生徒と作家の出会い」ワークショップで2人は偶然の再会を果たすことになる。
再会までのメール、過去の2人の過ごした時間、再会後の2人の会話、2人の語る自作の物語で構成される本書は結末に至るまでの...続きを読むPosted by ブクログ -
謎解き部分は浅い、これじゃミステリーじゃないやん…と思った。しかし、実は謎解き部分がミステリー核心じゃない、犯人捜し事件の真相に迫っていく2人のやりとりの過程と結果が見事な、実に見事なミステリーという…
自分でも何を言ってるのかよくわかってないが、とにかくこういう機軸でミステリーを構成できるのか!...続きを読むPosted by ブクログ -
2014年、ドイツ語圏のミステリー賞フリードリヒ・グラウザー賞受賞。
2020年ミステリが読みたい、海外編4位。
偶然(?)再会した元恋人同士の54歳の男女の話です。
二人は1980年の19歳の大学での出会いから十六年間の交際を続けますが、国語教師となった女性マティルダが、強く子供を望むのに対し、...続きを読むPosted by ブクログ -
オーストリア・ミステリー。クサヴァー・ザントは作家。生徒とのワークショップに招かれる。派遣先の担当教師はマティルダ・カミンスキーだった。実は二人は昔同棲していた。しかし16年前にクサヴァーは突然マティルダのもとを去っており、その事を彼女はかなり深く根に持っている。彼女のもとを去った後彼は金持ちと結婚...続きを読むPosted by ブクログ
-
16年の交際を経て破綻した国語教師の女性とかつての人気作家の男。2人が共に過ごしたのと同じ16年の空白を経て、男の許に創作ワークショップへの参加依頼が届く。彼が訪れることになった学校の担当者はかつての恋人だった……。なんとべたな展開だと思わせるが、次々に暴かれる2人の関係はとてもそんな甘いものではな...続きを読むPosted by ブクログ
-
いじめられたくないから、いじめる。
世界共通の子供心。
そして子供ゆえの残酷さ。
はじめは、自分達の正義のためだったのに、心にも身体にも、国土にも、傷を残してしまう。。。
Posted by ブクログ -
ポルポト暗黒時代のカンボジアと、その地獄から生還した者たちのその後を描く。過去と現在を往来しつつ、次第に伏線が回収されていく結構。それにしても、偏った情報しか与えられず、間違った思想に流されていくさまとか、一部の狂気が圧倒的な犠牲者を生むさまとか、今これを読むと、どうしてもロシアを思い浮かべずにいら...続きを読むPosted by ブクログ
-
思っていたのと、いい意味で全然違っていて、まずは読んで良かったです。新しい作家さんとの出会いを嬉しく思います。
元恋人同士の男女の再会。男の方が正直最低で、何だこの男という感情を最後までぬぐいさることができなかったです。それにひきかえ女性(マティルダ)のなんと献身的というか最後まで無償の愛を貫いた...続きを読むPosted by ブクログ -
多層的なテクストの重奏を楽しむのかと思ったら、そこは存外シンブルだった。そのような実験的な作品ではなく、また、ミステリーでもなく、ラブストーリーだった。Posted by ブクログ
-
文芸ミステリと帯にもあるが、文芸色が強いためか私のミステリ新作探しの網にかからず危うく読み逃してしまうところだった。
昔の恋人に執着する度合いは男の方が強いらしいが、納得させてくれる内容だった(個人差があります)
両親、祖父母の人生をたどる中でのさまざまな人びとの家というものへの執着、あり得たは...続きを読むPosted by ブクログ -
これは傑作!
16年ぶりに再開した元恋人の作家と国語教師。交わすメール、会話だけのやりとり、ふたりが互いに語り聞かせる物語、そして過去の追憶など、時系列と文章作法をさまざまに織り交ぜながら話が進むうち、明らかになる事件とその真相。
筋書きは最終的ににはちょっと甘酸っぱいんだけど、さまざまな文体を駆使...続きを読むPosted by ブクログ -
別れた昔の恋人と再会し、過去と現在について語り合っていくうちに、未解決のある事件をめぐる闇が明らかになっていく。典型的なクズ男と不幸体質みたいな女の組み合わせがしんどい。が、Eメールの文面、警察の事情聴取、恋人同士が互いに語り合う「小説」の内容など、様々な文章スタイルを駆使して過去と現在をいったりき...続きを読むPosted by ブクログ