井上廣美のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
前々から気になってはいたんだが、フォロワーさんが読んでいるのを見てついに手に取った。
タイトルはかなりインパクトがある。「男はクズ」という言葉は数年前にSNSで大きな反響を呼んだ。インフルエンサーの女性がセクハラ批判でSNSに書き込んだ。
当然ながらこの投稿には男性(おもにミソジニーを持つ)たちからヘイトスピーチだと批判された。
しかしそれはヘイトスピーチなのか。社会の権力勾配や男性優位社会の状況をふまえながらヘイトスピーチたりえないと訴える。
”男らしくない”というフィードバックを受けた男性は戦争や男性の優位性やホモフォビアに対する支持が強くなった、という実験結果の話で別の書籍の『マチズモの人類史』では産業革命により男らしさを維持できない環境になってきているという話があったことを思い出した。いま色んな国で、若い男性層の一部には、急激なジェンダー平等の推進によって「自分たちの機会が奪われている(逆差別)」と感じる層が生まれ、「保守・右派(あるいはポピュリズム)」への支持が広がる傾向がみられる、ということとつながるのではないかと思った。男らしさを維持することが難しくなってきている、自分は男らしくあることができない。そういう意識と男性性優位な社会への支持が接続してしまうのではないのかと考えた。
また驚いたことはアフリカ系への人種差別でサッカーのスタジアムではサポーターからの人種差別的なコールなどがなくなったから、という理由でコロナ禍でのアフリカ系の選手のパフォーマンスが向上したというところだった。そこまでひどいのか、と愕然とした。なんというかひいきのチームを応援するにあたって、人種差別を野次に使うのは全然サッカー関係ないじゃんとか思ってしまったんだが。そういうことも通じないということだろう。
この本には性差別のほかにも人種差別、ポリティカル・コレクトネス、犬笛が飛び交うことの問題、ブラック・ライヴズ・マターに対するオール・ライヴズ・マター、マンスプレイニング、キャンセルカルチャー、構造の不正義、それらに私たちはどう立ち向かっていくべきかを述べている。
最終的には人種差別的な資本主義を崩していかねばこの世界を席巻する問題は解決しないだろうという結論だったが、それらを解体するには途方もなく、またその途方もなさをどう抱え、どう生きていくかというところまで述べているのがよかった -
Posted by ブクログ
アメリカ建国の父の一人として、アメリカ合衆国設立のベースとなる思想をまとめた「The Federalist」の著者であり、初代の財務長官として現代のアメリカ資本主義の礎を築き上げたアレクサンダー・ハミルトンの伝記の上巻。
カリブ海の小さな島で生まれ、上流階級とは全くことなる環境で育ちながらも独力でのし上がっていき、最後は決闘によって49歳で生涯を終える彼の数奇な半生を描く。
一つの国の設立は、通常、かなり長期間の歴史的な背景に基づく。しかし、アメリカ合衆国は独立戦争を皮切りに極めて短期間の間のそのベースが形作られたことから、どのように国家が設立されるのかが、本書を読む事で追体験できる。ハミルトンの天才的な思考能力と政治力を目の当たりにしながら、アメリカという国が徐々に成立していく様子は非常に面白い。