若松宣子のレビュー一覧
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物語の舞台は1930年代の南ドイツ。少年クリストフは、貧しい家族を助けようと大胆な計画を立てる。飛行船に潜り込んで海を越え、アメリカに渡ろうとするのだ。知恵と勇敢さで数々の困難を乗り越えていくクリストフの心踊る冒険のお話だった。
クリストフは確かにお金を払わずに「密航する」んだけど、家族を助けたいという思いからだし、なんとか罪を償おうとがんばろうという思いもある。勇敢さも優しさも誠実さもあわせもつ、クリストフのまっすぐな思いに心を掴まれた。
空の上での命がけの飛行船修理作業をやり遂げ、みんなから認められるクリストフがたまらなく誇らしい。船長はとりわけクリストフを「小さな友人」として認め、最後まで気にかけてくれる温かな存在だった。
ハラハラする冒険の面白さだけじゃない。クリストフや船長はじめ登場人物の魅力が光っている作品。子どもたちに読んであげたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ名作童話を大人になって読むシリーズ
1巻の最後で、頑なだったおじいさんは文字が読めるようになったハイジの聖書からの寓話に心を動かされ、人を受け入れられるようになっていきます。
一方、大事な人を失った悲しみから立ち直れず絶望感で苦しんでいるクラッセン医師がアルプスに行くには体力がおぼつかないクララに変わりハイジの元にやってきます。
彼がアルムの山で生気を取り戻し、クララの山での療養も現実になりました。
クララが立って歩けるようになるくだりは説明の必要は無いと思いますが、日に日に健康を取り戻していく様子に読んでいるこちらもエネルギーが湧いてくるようです。
ペーターの嫉妬心やおばあさんの誤解による悲しみなどもちゃんと回収し、経済的には主にゼーゼマン一家が提供して、最後はなぜかペーターの一家まで将来を約束されて幸せに終わります。
その収め方は信仰による考え方が大きく影響しているのでしょうか、現在の日本では寄付や援助の概念があまりないせいか、スッと入ってきませんでした。
私の心が汚れているのかもしれません。 -
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表紙がとても美しい。
ああ、こーゆー庭をのーんびり歩けたら気持ちいいだろうなあ。
才能ある少女とその才を認め、伸ばす手助けをしてくれる大人と。
目にも鮮やかな花々の色彩と、モーツァルトの軽やかな音楽と。
そーゆー時代だ、とばかりに自分の気持ちとは裏腹な道を進まされそうな
少女。だが、本人の悩み具合とは別に、読んでるこっちとしては
博士の導きを疑うことなく信じていられたので、気持ちよく最後まで安心して読める一冊。
そーゆー意味ではとても恵まれている少女の話、ともいえる。
けれど、都合よすぎだろ、という印象は全くない。
それよりも、少女の草花への愛情や、とある事件で結び付いた青年との
恋、そして庭づくりへの意気込み、など、描かれる細やかな感情の
流れが気持ちよい。
音楽は草花とおなじように身体によいものかもね、というマリーの言葉に
そうだな、と素直にうなずく。
博士たち夫妻は実際の人物をモデルにしているとのこと。
なかなかバイタリティのある、素敵なひとたちだったみたいだ。
にしても、あの庭で彼の焼いたパンを食べたいなあ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ18世紀半ばのウィーンという、時代も場所の設定も好みのど真ん中で、しかも作者がウィーンっ子だというのもあって、当時の風俗が活き活きと事細かに描かれており、読んでいる間は至福のひととき。
少年時代のモーツァルトが登場し、彼が出入りしているメスメル博士のお屋敷の庭師の娘がマリー・フローラ。庭師として非凡な才能を持つマリーだけども、当時の社会では女性の庭師なんてありえないし、そもそもマリーは父の意向で修道院に入る予定。
崖っぷちに立つマリーだけども、雇い主であるメスメル博士をはじめ、周囲の理解者のおかげで庭師として生きてゆく道筋をたてられるようになる物語。
これはまさにジングシュピールだと思った。魔笛みたいなノリの。美しい音楽と庭園があって、ヒロインの行く末にハラハラドキドキしながら、ラストはみんながハッピー。
もちろんこれは児童文学として成立しているので、多少ご都合主義的な筋運びはあっても、時代考証はとても現実的。少年モーツァルトが神童ゆえに大人たちから妬まれ疎まれる様子や事件、女性の生き方が現代に比べていかに選択肢が少なかったか、などが手抜きなくしっかり書かれているし、同時にフランスやイギリスから流れてきた新しい思想が人の生き方や社会のありかたを変えつつあることも巧みに取り入れてあって、なかなか読み応えがあった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ18世紀のウィーンを舞台に、女性の自立を描いた児童文学。主人公が庭師を目指すというところは現代的だけど、そのほかの設定はオーソドックスで、モーツァルト少年が絡まなければ、地味な印象だったろう。当時の人々の服装や生活をきちんと描いているところには好感を持ったし、後味の良い小説で子供に薦めやすいかなとは思う。
しかし。パン屋の跡取り息子と結婚したら、パン屋のおかみさんとしての仕事が当然あるわけで、(当時としては)前衛的なデザインを売りにし、依頼主の庭を転々とする庭師の仕事と両立できるとは思えず、生活や風景描写がちゃんとしているだけに、その現実味のなさが浮いているように感じられる。そのあたりはいかにも現代の作家らしいとも言える。19世紀の作家なら、主人公は庭師を目指さず、修道院からの解放と恋愛の成就を前面に出してハッピーエンドとするだろう。
庭を描いた児童文学としては『秘密の花園』や『トムは真夜中の庭で』を思わずにはいられないが、そこまでの物語的面白さはない。昔の少女が自立して職業を勝ち取るという点では『アリスの見習い物語』の方が良い。
当時の様子や、モーツァルトの幼少時代の雰囲気(あくまで作者のイメージだが)が分かるし、ちょっとうまくいきすぎる感じはするが、こういうのもたまにはいいかもしれない。
中村悦子の表紙の絵がとても美しく、内容にも合っている。