石川伸一のレビュー一覧
-
購入済み
ありふれた食文化の本ではない
ありふれた食文化の本ではなく、食の歴史 文明史 技術史をできるだけ分析的、自然科学的に捉えようとした著作である。料理と科学の関係を一種の哲学的に考える手法はとても新鮮であった。自然科学でも調理でも、偶然ではなく再現性を重んじる点で共通している。いろいろな新奇なテクノロジーが紹介提案されているが、3Dフードプリンターとその基礎情報となる「録食」が印象深かった。
途中に挟まれた手書きっぽいイラストが微笑ましくてとても良い。 -
Posted by ブクログ
人口爆発に備えた食にまつわるテクノロジー
の進化を紹介します。
最近耳にする「代替肉」や、さらには最小の
細胞から組織培養して人工肉を造る「培養肉」
さらには3Dプリンターによる食品なるのも
まで紹介されています。
そこではご存知の昆虫食や、農業での技術革
新、我々の料理という行為を手助けするとい
うより、全てをこなしてくれるロボットの紹
介までと幅広いです。
特に興味を引いたのが3Dプリンターです。
食材をペーストした「インク」を積み上げる
のが3Dプリンターです。
介護食とは、このペースト状でないと喉を通
らない人のための食事です。
しかしペースト状の食物では食欲も湧きませ
ん -
Posted by ブクログ
食の過去と未来について、社会・文化的な側面も踏まえて、刺激的な記述が続く。
新書の見本のような本。
・瓶詰め、缶詰、レトルトなど食の保存が飢餓の恐怖心からの解放をもたらした
・人が肥満した仮説。1.節約遺伝子説。2.料理仮説
・ストレスを引き起こすと、女性はエネルギー摂取過剰に向かい、男性はエネルギー摂取抑制に向かう
・世界の絵本や昔話の約8割が食べ物がらみ。
・食も性も「交流性・一体性」と「攻撃性・非攻撃性」の領域に分かれている。
・おいしさ弱者:幼少期・高齢期・災害時
・動物で人間だけが共食をする
・日本のフードマイレージは世界一
・レシピサイトの検索窓に一番登場したワードは「簡単」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ食の学者さんの、優しい語り口と深い洞察で食べ物の過去・未来を語る書。
人間という動物の本能。
食べるものの変化による人体の変化(調理することになったため、他の動物に比べて消化吸収の良いものを食す―そのためにヒトの腸は短くなった)
一家団欒という絵姿は、1950年代から作られた、実は最近のもの。
色んな切り口で書かれている。日常の「食」に対しての考える視点が増えた。
だからどうすべき、という断定はない。
最後の、すごく共感したのは、「…小さな頃に、アニメやマンガ、…などでワクワクさせてくれた大人たちのありがたみを感じるようになりました。その一方で、私は、次の世代に何かワクワクするものを提 -
Posted by ブクログ
どうしてか分からないか、人を魅了する生き物がいる。タコとイカもその中の1つだ。ページをめくるといろいろな種類のイカとタコに出会える。
写真ばかりでなく、どのような生き物かという説明もありわかりやすい。
あのぐにゃぐにゃした形、何本も生えた足、飛び道具として使う墨など好奇心がわいてくる。
中には生きていて拝む機会のないタコやイカも登場している。
タコやイカからヒントを得て作られるテクノロジーまである。あのタコの腕をまねる試みがロボット工学の世界で行われている。
ただ食べられたり、観賞されるだけの存在ではなかった。
パラパラめくっていくといろいろなことを -
Posted by ブクログ
「「食」の未来で何が起きているのか」に続いて、
こちらの本も読んでみました。
(著者が同じだと思っていたけど、
「「食」の未来~」の方は監修になっていたので、
著者は別にいるのかも。。)
「食」をテーマに、歴史的・科学的・心理的…など様々な側面から、
「食」を見てみた本。
これ読んで、どうこうって言うのはないのですが、
結構面白く読めました。
著者はアカデミアの人のようですが、守備範囲が広く、
「あ~、食が大好きなんだなぁ」というのが伝わってきます。
「食」も深掘りしていくと、色んな側面から分析だができるんだな、
というのが分かり、包丁もまともに扱えない料理オンチですが、
少しは食に対する -
Posted by ブクログ
ネタバレ歴史とともに『食べること』の過去と未来について述べられた1冊。人間と食の関わりがよくわかる。ところどころある筆者のイラストや、章末の漫画が可愛らしかった。
体調や好みを入力すると3Dフードプリンタがそれぞれの栄養や好みに合った個別化食が生み出される。
録音するように料理を録食。
こんな未来が来るかもしれない。
東洋の医者のトップは内科医でも外科医でもなく食医だった。食と健康のつながり。
食べるという行為は生命維持のためだけでなく、アイデンティティの構築の役割もある。所属する集団を結束させる一方で、枠から外れる人は排除される。
世界の食肉生産は40%が牛であるのに、スペインは豚の生産高 -
Posted by ブクログ
「科学道100冊2021」の1冊。
「食」は生きることから切り離せないものだ。生命を維持するために必要であるし、また単に栄養補給の面を越えて、生きる「楽しみ」の1つともなりうるものである。
「食」は時代と共に変遷してきた。「食」が人を変え、人が「食」を変えてきた。
著者は、料理を形作る3つの要素は、食材と調理法と思想だという。どんな食材をどのように調理するか、そしてその背後には必ず、調理する人がどこに重点を置くかという要因がある。
進化の過程で、人類は狩猟や採集などの手段で食物を手に入れてきた。ヒトは基本、雑食性であり、その時々に手に入るものを食べられるように適応してきた。食物を限定してし -
Posted by ブクログ
「どんなものが作れるようになるのか」という技術的な話だけじゃなくて、「食べるときの心理・おいしさの感じ方」という側面も大事にしながら総合的に「未来の食」について予測を立ててるのが新鮮。
培養肉やフードプリンタを用いた料理なんかは今後確実に抵抗を感じた人たちからの反発はあるはずで、そういう人たちの不安を少しでも払拭するにはデータを示すだけではなくて、この本で示されているような心理面へのアプローチは欠かせないものになってくると思う。
コロナ禍で会食しなくなったり家でごはん食べる機会が増えた昨今。
自分にとっての「食べること・料理をすること」についての価値観を見直す良いヒントになる本だと思います。