唐仁原多里のレビュー一覧
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小説みたいな奇跡や不幸って、生きていても正直そんなに起きない。でも生きていれば、ちょっと気になることとか、モヤっとすること、小さなハッピーは起きたりする。それをこんなに上手に言語化できる人がいたんだと感動した。
短編になっていて、登場人物が少しずつつながっていく、よくある形式だけど、どの登場人物の気持ちもちょっと分かる気がした。
「夜が暗いとは限らない」というタイトルは、「夜は当然暗い」という前提が含まれている。毎日前向きに!と無理しなくても良いよと言ってもらえているようで、気持ちが楽になった。
以下フレーズを抜粋。
朝、という言葉はたいていは良い意味でつかわれる。たとえば「朝の来ない夜は -
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どんな人にも、ぱっと見ではわからない一面があり、
深みがあり、感情があり、ドラマがある。
その一つ一つを丁寧に掬い上げて、
人のあたたかさを、手ずから渡すように
ぬくもりや、やわらかさを
そっと崩れないように渡された。
そんな読後感。
どれも、あぁそんな感情あるな、と
胸の奥で共鳴したり、あまりの教官に
涙ぐんでしまったり。
どのお話もとてもよかった。
過ぎていく日々が、とても嬉しく
ありがたく愛しくなるような短編集。
>>備忘録として
P263
生きているあいだに誰かをじゅうぶん大事にしたと、だから別れは辛くないと、そんなふうに言える人はすくないと思う。そこまでの覚悟を持 -
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あかつきマーケットを中心にした町で暮らす人々を描く群像劇。
3章仕立てで、第1章はプロローグを含めて9つの短編、第2章は5つの短編で構成され、第3章のみ単独でエンディングとなっている。
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閉店決定的のマーケットや、起死回生策として作られたゆるキャラ「あかつきん」のイマイチのイメージによくマッチした、垢抜けない町の垢抜けない住民たち。
その1人ひとりに温かな光を当て丹念に描いた、いかにも寺地はるなさんらしい作品だったと思います。
また、各話の主人公がリレー形式でつながっていくのもよかったけれど、章題がシャレていて感心しました。
住民たちの悩みや困 -
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ネタバレ☆3.5
癒やされる本、のような検索をかけて行き着いた作品だったと思う。
のだが個人的には毒親やらモラハラ夫・妻やらそんな家庭で育った人の歪みの連鎖やらがリアル過ぎてもうグロテスクという単語が浮かぶくらいだった。それくらい生々しくて『癒やしはどこだーーー!!!』と思いながら読み進めた部分も多々あった。
決定的な虐待とか暴行とか、目に見える放置とか、そういう他人の介入の隙が少しはある(とは言え難しいのが現実だけども)歪み方ではなくて表向き良い親子・良い家庭みたいな有り様の内側で生皮を剥がれたまま生かされているような、中には本人さえそれに気付いていないいわば洗脳状態の中にあるような、そういう人間関 -
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めっちゃ面白かった!
めっちゃ好きな終わり方!
まずはそんな心の叫びで。
色々な人が登場します。
そしてゆるゆると繋がります。
このパターン、好物です。
そして安直な方向に行かないあたり、リアリティがありぐっときます。
ラストシーン、大好きです。
良い人ばかり出てくる訳ではありません。
うんざりするお母さんや夫に自分の身上を重ねる事もしばしば。
でも不思議とスッキリしました。
着ぐるみの「あかつきん」はずっと出てはくるものの、あかつきんが主役という訳ではなく、結局は各々が各々で主役なんだと思います。
ティッシュ配りの男の子のお姉さん、幸せになって欲しい。 -
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大阪近郊に位置する暁町にある「あかつきマーケット」が物語の舞台…様々な店舗が軒を連ねて営業していたが、時代の波に飲み込まれる形で閉店することとなる…。「あかつきマーケット」のマスコット的存在の「あかつきん」はイベント途中に失踪(!?)するも、その後町の至る所に出没し困った人を助けていた…さらに「あかつきん」のしっぽをお守りにする人も多数現れたが…。
「あかつきん」だけにしぼったストーリーかと思いきや、実際は「あかつきマーケット」で働く人々やその近隣に住む住民やその家族など、様々な年代の人たちが主人公となる短編集でしたね…。日々の生活の中でどんな人とつながり、どんなことを思い、今後どう生きてい -
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星は4.8ぐらい。
タイトルに惹かれ、また、なんともいえない愛嬌のある表紙のマスコットに心を癒やされる気持ちで読み始めたら、この表紙の「あかつきん」が重要でした。
登場人物が多い、と書かれている方がいますが、一つ一つ独立した話としても十分で、私にとっては一冊でとても得した気分になれました。
とはいえ読後、改めて登場人物の相関関係を図にしてしまいましたが。
最初は子どもを持つ母親の気持ちに深く共感し、その後、父親の立場で書かれたものを読んで少し自分の態度を反省。
寺地さんの本は2冊目ですが、立場の違う登場人物がとても丁寧に書かれていて、私は好きです。