天野忠幸のレビュー一覧
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ネタバレ三好長慶の忠実にして優秀な部下であった久秀が書かれている。その能吏っぷりは、梟雄として日本人の全ての人がもつ先入観を吹き飛ばした。
改元という重責を懈怠する、将軍資質に欠けたる義輝は、度重なる邪な動きをするものの、永禄元年には一応久秀と友好関係を結ぶが永禄5年には対立となる。
永禄6年には大和支配がかなうが直生に後見的役割をしてきた三好長興が若くして亡くなり、三好家は義継が後継となる。大殿長慶が亡くなり、久秀は息子の久通に家督を譲り、義継と久通の若い主従関係に後を任せるのだが・・・
永禄8年、実質幕府であった長慶・久秀の統治体制をさらに権威づけを試みたのか、三好三人衆と義継・久通は足利幕府を打 -
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ちょうど織田信長やら武田信玄やらの、有名な「戦国時代」の前日譚を、三好一族に焦点を当てて解説した本。三好長慶が地元にゆかりのある人物って所から手に取っただけだったけれど、応仁の乱から戦国大名が群雄割拠するまでの間の殆ど知らなかった穴が埋められて良かった。室町時代後期って思っていた以上にしっちゃかめっちゃか。前まで敵対していた勢力と手を結んで前まで味方だった勢力と対立したりしたみたいで、かなり面白い時代だなって思った。三好長慶はその評価が見直されて、最近の戦国シミュレーションゲームとかだと、能力値がかなり高く設定されているらしいのだけれど、その理由が良くわかった。
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三好一族と松永親子、足利将軍家のイメージが変わる本。通史なのでサクサク進み読みやすい。畿内の地名が次々に登場するので、巻頭の地図を適宜見返すと良い。
以下、印象
・ドラマやゲームと異なり、合従連衡激しい戦国時代では単純な君臣や敵味方で括れない関係性が多々ある。三好長慶がまさにそれで、親の仇である細川晴元に従ったり見限ったり、足利将軍を追い出したり戴いたり。
・松永親子は基本的に三好家に忠実で、信長離反についてもライバル筒井順慶の風下に立てないプライドが原因との分析。後世であれほど嫌われるポイントがどこにあったのかが気になった。
・三好松永を評価する本なので仕方ないが、足利義輝の評価が低い。 -
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最近の中公新書は、歴史好きにはたまらないラインナップが続いている。2021年10月刊の一冊は、近年織田信長の先駆けといった評価もされている三好長慶を始めとする三好一族を扱った、タイトルもそのものずばり『三好一族』。
明応の政変以降の足利将軍家の分裂、加えて細川政元暗殺後の細川京兆家の後継者を巡る争い、敵味方が入れ替わり、信長登場以前のこの時代の歴史は人名を追うのに精一杯で、あまり良く分かっていなかった。
本書は、細川家の家来として台頭してきた、三好之長(長慶の曽祖父)、元長(長慶の父)、長慶とつながる三好本宗家を軸に、三好一族の動向を叙述していく。
将軍義輝を京から追い、将軍不在の中 -
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織田信長が主役となる歴史においては、三好一族は近畿地方の土豪で足利義輝を殺害した三好三人衆が印象にあるくらいだが、本書によれば三好一族は信長や秀吉に先んじて京の都を含む畿内を統一し、将軍の責を果たさない義輝に成り代わって征夷大将軍の役目を果たしていたという。
いわば室町幕府後の世界を先取りした、当時の政治状況を踏まえると極めて先進的な勢力だったらしい。
楽市楽座や馬揃えといった信長の実績として知られる事柄も、実は三好政権が先んじて実施していたものが大半という。
本書は応仁の乱以後の複雑怪奇、有為転変な政治状況を追うのに忙しく、三好一族の先進性についてはごく控えめに総括されているに留まる。