やまとけいこのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
夏から秋の間だけ開く薬師沢小屋で働く著者は書く。「山小屋の暮らしはまるで旅のようだ。毎日、何が起こるかわからない。シーズンになれば、お客さんが入れ代わり立ち代わりやって来て、旅に出ずとも旅がやって来る、そんな感じだ。」
山小屋は自然に囲まれたのんびりした時間を味わえる場所ではあるが、働く人にとってはたくさんの登山客に忙殺され不便を工夫しながら狭い空間で少人数で過ごすところでもある。そこで必要とされるのは働く仲間とのささやかな積み重ねだという。
「自分のことよりも相手のことをまず考える気持ち。それを当たり前だと慣れてしまわない、ありがとう、という感謝の気持ち。人の悪口をいわないこと。朝の「おはよう」の挨拶。みんなでおいしいね、と一緒にご飯を食べる幸せ。」
自然の美しさと厳しさの中で多忙な夏を乗り越えて秋の終わりを迎える。濃密な時間を過ごしたのちに今年も小屋を閉めて山を降りる。そのときのさびしさと清々しさに想いを馳せた。