清水幾太郎のレビュー一覧
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身構えて読んだけど、翻訳が優秀であるせいか、非常に読みやすかったし、ウィットに富む著者の筆使いには親しみさえ感じる。著者は、懐疑論にも独断論にも偏らないよう心掛けているように思える。また、主観-客観図式における「どちらが先か」という議論よりも、相互作用の概念を用いることの方が有用性があると認識しているように読めた。冒頭から終章まで、“An unending dialogue between the present and the past.”のテーマが底を流れ、とても一貫性があり読みやすい。多くを学ばせて頂いた。
ただし、メタ的な話だが、この本を読むにあたっても本来ならば「当時」との対話が必要 -
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「論文」となってはいるが、論文に限らず作文技術全般に関するエッセイ。エッセイなので作文技術を体系的に論じたものではないけれど、それでも長く読まれているだけあってたくさんのヒントが記載されているし、エッセイならではの含蓄もある。
著書の文章作成における心得は、結びに次のようにまとめられている。「文章を機械のように作ろう。文章を建築物として取扱おう。曖昧な「が」を警戒しよう。親骨を見失わないようにしよう。経験と抽象との間の往復交通を忘れまい。日本語の語順に気をつけよう」。とくに「曖昧な「が」を警戒しよう」は、本当に大切な60年前の本だけど、文章を書くことの要諦はぜんぜん変わってない。 -
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筆者の文章は、私たちの世代なら、大学受験国語でおなじみ、読解練習をよくさせられたものである。当時はそのつもりで読んでいるので、感想も何もあったものではなく、ひたすら正解だけを求め続けて読んでいたが、それから数十年、改めて「読書」してみて、当時のそんな読み方は非常にもったいに読み方だったのだなあと痛感させられた。
さすがに岩波新書の青版、近年相次いで出版されているお手軽新書とは違い、読みごたえがある。が、私が年を取って筆者の年齢に近くなっているからか、時々垣間見える筆者の愚痴に親近感もわいたりした。若いときには大家からのありがたいお言葉という感じでの受け止めだけで終わっていたかもしれないが、年を -
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Twitterだったかどこかで、文章を書くには云々の話が出ていた時に本屋さんでみかけ、なんとなく読んでみたもの。
なにせ昔の本なので、現代に通じるかといえば全てがそうとは言いがたい。今の時代、美文を書いて成長した子などいやしないのだから。
それにしても清水幾太郎にしろ、三島にしろ、小学生時代に書いたと言われる文章が恐ろしく統率が取れている。まさに美文。これができるからこそ、後世に残る文章を書くことができたのだろう。時代の差を感じる。現代は「好きに書くがよい」だけを優先し、美しい文章を書くことに注視することが疎かになってはいまいか。
美しい文章は、それを伝えたい人に高精度で内容を伝えることがで -
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清水幾太郎「論文の書き方」岩波新書
文章の書き方や本の読み方について書かれた本に傾倒していたときに買い、清水幾太郎は他の本を読んだからと積ん読していました。
なぜもっと早くに読まなかったのか!
おもしろい!
著者が文章を書く上で自分に課しているルールを本軸に、哲学、思想、文化、社会学方面の「知的散文」を中心とした論文の書き方について述べられています。
しかし、論文に限らず、人に伝える文章を書く上で、気を付けなければならないことや、書き始めるまでに必要なことなど、「知的散文」以外にも役に立つのではないでしょうか。
ただし、あくまで、これまでにある程度の文章を書いてきた人、これからある程 -
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多くの読書論の中でも人気のある一冊。
教養書と呼ばれる合理的に考えると直接は役に立たない本を読むことの進め。
というよりも、そういう本を読むという贅沢を他の人に教えるといった趣旨の本。
もちろん、本を読むというそのことの楽しさも見逃してはおらず、バランスの良い読書論。
本以外にも様々なマスコミが誕生し、大衆の間に普及している現代にとって「本を読む」という労力を多大に消費する行動の優位性を説く。
結果的には、全てのメディアの立体的協力を必要とするという所に落ち着くが、それでも大衆がテレビなどの楽なメディアに傾倒していき本が消滅してしまいはしないかという危惧を捨て去ることはできない。
電子 -
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この本は論文の書き方を親切に手ほどきする本ではない。基本的に著者の経験やエピソードを通して、文章を書くいくつかの原則を挙げていったものである。そのためどちらかと言えば読み物としての性格が強く、この一冊だけで文章がうまくなるとは思えない。あくまで文章をテーマにした話集である。
しかしその内容がとても面白い。引き込まれて、一気に読んでしまった。やはり文章がうまい。一読の価値はある。
参考までに出てきた文章の原則を挙げておく。
・文章を機械と思え。
・ 文章は建築物。
・ 「が」は多用しないように。
・ 骨の部分を常に意識する。
・ 経験と抽象をバランス良く。
・ 語順に気をつける。 -
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まず全体として、書き方が自伝的なので、帯に昭和を代表する知識人と書かれるような人物でも、このように数々の試行錯誤を泥臭くやってきたのだな、というのが分かって、とても面白かった。
読書論の部分では、以下の二点が印象に残った。
一つは読み方のスピードについての部分。
「そばを食べるように」「相当なスピード」でと書いてあるが、決していわゆる速読を勧めているわけではない。
本を書く人は「観念の急流」に突き動かされるままに相当なスピードで書いている人が多いので、同じ空気感を共有した方が、筆者の言わんとしていることの全体感がより理解しやすいということらしい。
本を書く人には巨大な伝えたいことがまずあって -
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教養書なんて読む必要があるものではないけれど、
「立派に」生き、「立派に」死ぬために読むのだとする。
この「立派に」というのが、どういうことなのか。
というのは、それこそ読書を通して自分で定義づけることなのかな、と解釈した。
それから本を読んだら、当たり前かもしれないが「考える」ことが大事。
読んで、理解した、だけではなく、そこから何を感じ、考えたか。
それがないと本の内容が自分の力にならないよなあと反省。
読むことだけに重きを置いていたので、
「考える」ことを意識したい。
そこを意識すれば、それはたった一行でも考えるに値する部分があれば、
その本は自分の役に立ったということだ。
逆にそこ -
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ネタバレ[ 内容 ]
論文やリポートは、なかなか書けないものである。
もとより「いかに考えるべきか」を離れて「いかに書くか」は存在しえない。
著者は当代一流の文章家。
その文体の明晰暢達はひろく知られている。
読者は、著者の多年にわたる執筆経験に即しながら、文章というものの秘密を教えられ、文章構成の基本的ルールを興味深く学ぶことができよう。
[ 目次 ]
1 短文から始めよう
2 誰かの真似をしよう
3 「が」を警戒しよう
4 日本語を外国語として取扱おう
5 「あるがままに」書くことはやめよう
6 裸一貫で攻めて行こう
7 経験と抽象との間を往復しよう
8 新しい時代に文章を生かそう
[ POP -
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本は、面白くなければやめていい。現在の自分に引っかからないならば、読む時期ではなかったというだけなのだ。自分を責めなくて良い。面白さは、その時の自分の環境・精神・流行など、状況によって変わるのだから。
著者は、いろいろな読み方を経た結果、ある時、書物に忠実な態度-客観主義-で読みノートを書くと内容が自分を素通りしてしまう事に気づき、
自分の心に残った事、関心のあるテーマのみを自己中心的に主観主義によりノートにまとめることで、大いに役立つものとなったという。
また、最後のページに700字程度の感想をメモすることの紹介もされている。分量としてはこのくらいがちょうど良いとのこと。記載内容の取捨選 -
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総じて難しい本で書かれていることを理解しきれなかった。
歴史とは現在の過去との対話である。歴史的事実は事実そのものということではなく、そこには歴史家の解釈によって歴史的事実となっているということを理解しておくことが大事であると理解できた。
一つの事実自体は、ただのそれにすぎない。例えば、他の人物でも同じようなそれを成していることもある。事実それ自体は取るに足らないものであったりもする。ただそれが、過去や背景、周りからどのような影響のあるものと捉えられていたかによって、後の歴史家に歴史的事実として捉えられるものなのかなと考えた。
また歴史は、良い解釈や功績のみが継がれていることも多く、逆のこと、 -
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私は読書術の本を何十冊と読んできた。
もし、人から、「読書論の本は一冊も読んでいないから、何冊かお勧めな本を教えて」と聞かれた場合、この本を挙げることはない。お勧めの本トップ10にはまったく入らない。お勧めの順位は、かなり低くなる。理由はいくつかある。
1. 表現が固いこと。
2. 実際の方法論が主となってはいるが、著者の経験談が長めなので冗長に感じること。
もっとも大きな理由は、全体をとおして、古さを感じることだ。
本書の目次は下記のとおり。目次だけを見ても古さを感じるのではないだろうか。
【目次】
第1章 私の読書経験から
第2章 教養のための読書
第3章 忘れない工夫
第4章 本と -
Posted by ブクログ
歴史とは、過去から続いて未来へ向かう時間の動的な動きの中で、ある目的に関連し且つ重要と思われる出来事を前後の関係性と共に並べた物であり、すべての事実が歴史になるわけではなく、また無闇に抜き出した事実が歴史になるわけでもない、というのが本書の主旨だと思うが、いやー、冗長。
この講演がなされた時は新奇な発想であり、劃期的な発見であったのかも知れないが、現代を生きる人には正直「何を今更」という感想しか湧かないと思う。
その内容を個別個別の歴史家や神学者、哲学者を挙げて甲はこういった、乙はこういった、丁はこいった、と挙げていって、批判するのかと思ったら、しない。いや、もしかしたら原文ではもっとはっきり