長谷川修一のレビュー一覧
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宗教を批判的に検討することは難しい。なぜなら、信教徒でなくとも情報が溢れる今日では多かれ少なかれ、バイアスがどうしてもかかってしまうからである。本書も、そのような断りをいれつつ展開していく。
自分は、歴史についても、聖書についても詳しい知識を持ち合わせていないが、そんな人間でも読み解けるほど解説が丁寧であり、歴史的な考証も論理的で読みやすい。現時点において解釈するに足る資料が不足している場合はその旨をはっきりと記載している部分がさらに信頼性を高めている。
さらに、豊富な写真資料が掲載されており、こちらも当時のイメージを想像し、時代的背景を整理することに一役買っている。
教養として語られ -
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ユダヤ人の成り立ち、どういう民族なのかということを、ヘブライ語聖書(いわゆる旧約聖書)の内容を足がかりにして紐解いていく。聖書には全然詳しくないので、ヘブライ語聖書の主要な出来事にも触れてくれるのはありがたい。
古代〜中世の歴史は神の意思を自分達に都合のいいように解釈する歴史したし、それで民族がまとまっていった。
ヘレニズム時代、「みだりに神の名を唱えてはならない」を遵守した結果、もう神の名の正式な発音は失われていたってちょっと面白歴史すぎる(ヤハウェは「主」のギリシア語聖書の発音)
歴史から神の意思を解釈して教義に組み込んでいく過程も面白すぎる。ざっくりメモしたかんじ、本書の解釈は以下の流 -
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『歴史学者と読む高校世界史』の第01章が面白かったため、長谷川修一の過去作として手に取った。旧約聖書の記述の全てを原理主義的に信じることは(信徒でないこともあり)元からしていなかったが、では実際にはどこまでなら史学的・考古学的に一次史料から確かめられるのか、という点について良い概説を提供してくれた。ダビデあたりの伝承が境界例であり、分裂王国時代以降に少しずつ考古史料が増えてゆく過程について学ぶことができた。読んでいて興味深かったのは、聖書考古学におけるシュメール文明とアッカド語の重要性の高さ。古代ヘブライ語や古代ギリシャ語以外にも、アッカド語が読めるかどうかが、古代オリエント史におけるイスラエ
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西洋美術を入口に聖書に興味を持って何冊か読んでみいる中で、学問的な色合いの本を探しているときに本書に出会った。
本書は考古学、歴史学の見地から旧約聖書の記述を検討していて、その史実性を跡付けようとしている。
決して宗教の虚偽や欺瞞を暴露しようと意図しているわけではなく、あくまで学問的に何が実在しているといえるか、と批判的で冷静な学問的立場を維持している。
神によるこの世の創生からではなく、アブラハムから始まる族長時代からが検討対象で、聖書の中であまりメジャーではない(?)ソロモン後からバビロン捕囚までの時期の歴史に割と多くのページを割いているのは、史料と発掘物に語らせる姿勢の表れかもしれない。 -
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帯の宣伝文句のような「本書は現地調査に従事する研究者の、大いなる謎への挑戦である」といった派手さやワクワク感はないが、読んでいて楽しい本だった。
考えてみると、自分も含めて多くの日本人の聖書の知識はお粗末と言わざるをえない。本書にもあるが、高校の教科書にはモーゼは実在の人物として登場し、出エジプト記も史実のように書かれている。史実だと思っていたことについて、フィクションの可能性が高いと指摘されるのは知識の修正という意味で有意義と思う。
「聖書考古学」とは、「聖書の歴史記述の深い理解に達するため、特に聖書の舞台となった古代パレスチナを中心とした考古学」という。そして、本書では、「信仰の対象として -
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啓蒙思想の考えから、聖書を様式史として研究するアプローチに対して、聖書考古学では、考古学の発掘などのアプローチによって聖書の史実を検証しようとしている。この分野の本は、訳本ばかりだったので、日本人による新書で発刊されてよかったと思う。
本書の内容は、1.2章で、一般的な聖書の解説、考古学の手法の基本的な説明と、オリエントの地独特の考古学についてまとめている。3~6章で、アブラハム、カナン征服、王国からバビロン捕囚、キリスト教へ(死海文書まで)をまとめている。7章では、今後の考古学、今後の聖書学についてまとめている。
3~7章は、聖書のあらすじの説明や聖書からの引用が多いとは思ったが、入門書 -
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ネタバレ"アッシリアの碑文には「ビート何某」という単語で王国を指す言い回しがよく使われている。「ビート」というのはアッシリアの言葉で「家」を指す言葉の変化形であるから、言い換えれば「何某家」という意味になる。この「何某」の部分にはその家を興したと考えられている人物の名前が入るのである。「何某王朝」と同義であると言ってもよいだろう。" p.153
さて。まずは、この手の書物に物申したい。文章で説明したがりすぎ。年表なり一覧なり、理解しやすい形式の視覚表現はできんものかと。
閑話休題。
明き盲とはよく言ったもので、たしか『B.C.1177 古代グローバル文明の崩壊』を読んだ時に、 -
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楔形文字は、非セム語のシュメール語のためのものだったが、古代セム系民族はこれらの文字を採用した。代表的な言語はアッカド語
シュメル語の洪水伝説、ギルガメシュ、アトラハシースの3つが洪水伝説として有名
メギドでギルガメシュ叙事詩の粘土板断片が発見
上エジプトのベニハサンには、紀元前19世紀のへきががあり、そこにはセム系遊牧民がアビシャルという名前の指導者に率いられて連れてこられるシーンが描かれている
古代エジプト王朝は自分が負けた記録は残さないことで有名
もしこうしたらこうなる、という条件法はハンムラビ法典など幾つかあるが、十戒にあるような、父母を敬え、殺すなという人類全体に対する絶対法は