臼杵陽のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
イスラエルはいま、「ユダヤ国家」という理念と多文化化・多民族化する現実とのはざまで切り裂かれ、国家像をめぐって分裂状態にある。
なぜそうした苦悩を抱え込んだのか。
シオニズムの論理、建国に至る力学、アラブ諸国との戦争、新しい移民の波、宗教勢力の伸張、和平の試みと破綻など、現代史の諸局面をたどり、イスラエルの光と影を描く。
[ 目次 ]
第1章 統合と分裂のイスラエル社会
第2章 シオニズムの遺産
第3章 ユダヤ国家の誕生
第4章 建国の光と影
第5章 占領と変容
第6章 和平への道
第7章 テロと和平のはざまで
終章 イスラエルはどこに向かうのか
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
イスラエルという国は我々にあまり馴染みがないが、IT系のスタートアップ企業が多く輩出されている。私も仕事で使うサーバ機器などのディスク装置の設計者がイスラエル人の方であったり、家にはソーダストリームがあったりする。そう、ソーダストリームはイスラエル企業だ。中東情勢ではイスラエルは常に周辺のアラブ諸国と争いが絶えず、今もガザ地区へ侵攻中にある。これらニュースを見ていると、単に強国イスラエルが弱者であるガザ地区を一方的に攻撃する悪者のようにも見えてくる。歴史上、ナチスによるユダヤ人の虐殺の記憶が新しいが、それ以前にも定まった土地を持たず世界に離散するイメージのユダヤ人。そしてイギリスの二枚舌外交など紆余曲折を経て1948年に今の地に足を下ろした。従来からそこに暮らすアラブの民を追いやり、その場所をあたかも自分たちの安住の地とばかりに根を下ろし、かつ国力を上げながら周辺諸国の脅威として君臨してきた。事実これまでに何度もイスラム勢力と戦いを繰り広げてきたし、その度に双方に甚大な人的被害を負ってきた。今のような強気かつ強大な軍事力を持つ体制になったのは、かつてのユダヤ人虐殺などから離れ離れに暮らしたユダヤ人への同情からくる諸外国支援もあるだろうが、一度今の地に落ち着いたイスラエルは、各国に散らばるユダヤ人達を呼び寄せ離散状態の解消に努めてきたことに由来する。人口の増加と共に、元来計算が上手く、金融知識に富んでいた事から、着実に資金を増やし国力、軍事力までも脅威的に増強させてきた。
それによる弊害としては、アメリカ同様人種の坩堝と言われる様な多民族制、多様性からくる内政不安を常に抱えてきた事。そして内政不安と共に外交的にもいつ暴発するかわからない不安の種になってしまった事だろう。周りは敵だらけ、過去からの記憶に深く刻まれた迫害の記憶などイスラエルという国が自らを守るために、自身を強靱化せざるを得ない状況にする要因の一つだろう。
本書はその様なイスラエルの成立を内外との関係性から紐解いていく書籍だ。特に国内に生まれてくる様々な主義主張を持つ政治勢力、それらが外国とのいざこざ、戦争を経て様々に移り変わっていく。経済的な立場から、宗教的な思想・観念から成り立つ多種多様な勢力が、国内政治に於いては入れ替わり立ち替わり主役を演じていく。その様な状況にあっても、自らのユダヤ教的考え方とユダヤ教を信仰する民であるという不変かつ強固な舞台を持ち、何があろうとその舞台が崩れる事は無い。彼らを結びつけるユダヤ教という信仰。日本人からすると中々理解し難い独特の教義にも映るかもしれないが、一国を結び続ける強固な思想であることには変わりない。
最近ではアメリカのトランプ大統領の親族もユダヤ教徒であるそうだが、イスラエルを強く支え続ける立場のアメリカがいる限り、彼らイスラエルはガザを想いのままにしようとするだろう。
単にイスラエルを悪の中枢の様に見ることもできるが、彼らから見た世界やパレスチナ人が一体どの様に見えているかなど、背景を理解するにはちょうど良い内容である。