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イスラエル国家の暴力性には,いかなる歴史的背景や国内要因が横たわっているのか.統合と分裂のはざまに揺れ動く多文化社会は,これからどこへ向かうのか.シオニズムの論理,建国へと至る力学,アラブ諸国との戦争,新しい移民の波,宗教勢力の伸張など,現代史の諸局面を考察.「ユダヤ国家」の光と影を見つめる.
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Posted by ブクログ
イスラエルという国は、成り立ち、現状共に恐ろしく複雑であることがわかった。国民国家として今後やっていけるのかとすら思ってしまった。
日々のニュースでイスラエルをめぐる報道は多いが、イスラエルの歴史と社会を理解するには、「今」を切り取っただけのニュースでは足りず、かといって専門書を読む時間も機会もない普通のオトナにとって、これはまさにうってつけの好著。 「イスラエル=シオニスト」という単純なイメージは過去のもので、波状にやってく...続きを読むる移民、それによる多文化・他民族化、選挙のたびに壊される和平への試み・・・と、本著がひも解く「イスラエルの今」は、ページをめくるガブに、しみじみと無力感や閉塞感を覚えさせ、オスロ合意(あの日、朝刊に載ったあの写真に、新しい希望を感じた人がどれだけいたことか!)がどれほど「無」となっているかを実感させた。 まず「選挙ありき」の民主主義の下、相次ぐ政権交代や連立政権、経済低迷と「不公平感」、「和平」より「治安」重視の内向きの世論・・・と、イスラエルとはまったく異なった国であるはずの日本にも、他人事とは思えないキーワードが並んでいることもまた、読者をなんとなく居心地悪くさせる点で、読後のもやもや感こそが、この本が日本人向きに書かれた好著であることを示しているような気がする。 著者は以前ガブが読んだ『異文化理解の倫理にむけて』(名古屋大学出版会)に「宙づりにされた人々 イスラエルのアラブ」という文を書いていたことを思い出した(「臼杵」とは珍しい苗字!)。今後も注目していきたい現代の書き手の一人である。
イスラエルについて包括的な本である。イスラエルを知るには必須の本であろう。読むのにかなり時間がかかるほど、イスラエルの政治は複雑である。イスラエルと周囲の国、米国との関係などが単発的に新聞で報道されるが、そう単発的なことではないことを本書は示している。
難しすぎる国だよね。 民族国家でもないし、これで民主国家と言えるのかどうにも理解できない。それにも増して「反ユダヤ主義」が分からない。世界(特にヨーロッパでは)の嫌われ者なのはなぜ? まだまだ勉強不足だ。
2.3章を読んで。 ナチス・ドイツとの闘いの中でいかに自分たちの安全地帯を確保するかが急務だった建国期、それを阻むアラブやイギリス、ひいては国家存在について国連という名の元他国からの多数決で決められる状況は不安定極まりないものだっただろうな、とシオニストを同情してしまう。そんな状況を乗り越え軍事力の...続きを読む圧倒的な差で隣国にも打ち勝ち、国連による国家承認を経ていくシオニストの逆転ストーリーには圧巻させられた。しかし、ユダヤ国家と民主主義という矛盾を抱えた状態でのスタートが今後70年の歪みを作り出していったのだった。。。
イスラエルという国は我々にあまり馴染みがないが、IT系のスタートアップ企業が多く輩出されている。私も仕事で使うサーバ機器などのディスク装置の設計者がイスラエル人の方であったり、家にはソーダストリームがあったりする。そう、ソーダストリームはイスラエル企業だ。中東情勢ではイスラエルは常に周辺のアラブ諸国...続きを読むと争いが絶えず、今もガザ地区へ侵攻中にある。これらニュースを見ていると、単に強国イスラエルが弱者であるガザ地区を一方的に攻撃する悪者のようにも見えてくる。歴史上、ナチスによるユダヤ人の虐殺の記憶が新しいが、それ以前にも定まった土地を持たず世界に離散するイメージのユダヤ人。そしてイギリスの二枚舌外交など紆余曲折を経て1948年に今の地に足を下ろした。従来からそこに暮らすアラブの民を追いやり、その場所をあたかも自分たちの安住の地とばかりに根を下ろし、かつ国力を上げながら周辺諸国の脅威として君臨してきた。事実これまでに何度もイスラム勢力と戦いを繰り広げてきたし、その度に双方に甚大な人的被害を負ってきた。今のような強気かつ強大な軍事力を持つ体制になったのは、かつてのユダヤ人虐殺などから離れ離れに暮らしたユダヤ人への同情からくる諸外国支援もあるだろうが、一度今の地に落ち着いたイスラエルは、各国に散らばるユダヤ人達を呼び寄せ離散状態の解消に努めてきたことに由来する。人口の増加と共に、元来計算が上手く、金融知識に富んでいた事から、着実に資金を増やし国力、軍事力までも脅威的に増強させてきた。 それによる弊害としては、アメリカ同様人種の坩堝と言われる様な多民族制、多様性からくる内政不安を常に抱えてきた事。そして内政不安と共に外交的にもいつ暴発するかわからない不安の種になってしまった事だろう。周りは敵だらけ、過去からの記憶に深く刻まれた迫害の記憶などイスラエルという国が自らを守るために、自身を強靱化せざるを得ない状況にする要因の一つだろう。 本書はその様なイスラエルの成立を内外との関係性から紐解いていく書籍だ。特に国内に生まれてくる様々な主義主張を持つ政治勢力、それらが外国とのいざこざ、戦争を経て様々に移り変わっていく。経済的な立場から、宗教的な思想・観念から成り立つ多種多様な勢力が、国内政治に於いては入れ替わり立ち替わり主役を演じていく。その様な状況にあっても、自らのユダヤ教的考え方とユダヤ教を信仰する民であるという不変かつ強固な舞台を持ち、何があろうとその舞台が崩れる事は無い。彼らを結びつけるユダヤ教という信仰。日本人からすると中々理解し難い独特の教義にも映るかもしれないが、一国を結び続ける強固な思想であることには変わりない。 最近ではアメリカのトランプ大統領の親族もユダヤ教徒であるそうだが、イスラエルを強く支え続ける立場のアメリカがいる限り、彼らイスラエルはガザを想いのままにしようとするだろう。 単にイスラエルを悪の中枢の様に見ることもできるが、彼らから見た世界やパレスチナ人が一体どの様に見えているかなど、背景を理解するにはちょうど良い内容である。
イスラエルの政治的歴史、現在の事情などを簡潔に理解できる。ホロコーストの否定がディアスポラの否定、つまり自由主義の否定につながっていて、それが社会主義的勢力であるシオニズムによって利用されているという指摘が興味深かった。ユダヤ人はホロコーストを受けたかわいそうな民族であるという思いは民族主義を強める...続きを読むことができる。しかしその一方的な感じがまたテルアビブ大学内で見たディアスポラミュージアムで感じた君の悪さみたいなものの理由なのだろう。恨みは克服できるならした方がいい、暴力的勝利ではなく平和と共存を求めているならば。
広河さんの「パレスチナ」に対応する形で読む。 イスラエルがエスニック国家なんて 知ってましたか。 なかなか日本人には、中東の状況や歴史は理解しがたいが、自分が、日本人で、日本に住んでいることを感謝する。最近だいぶ危ういが・・・
やはり、テレビだけじゃ知らないことが多いと実感した。 イスラエルのユダヤ教徒が一枚岩ではないこと、そして建国当初、ホロコーストは教育現場では伝えられてすらいなかった事実。 私たち日本人からすると、ホロコーストの犠牲を前にユダヤ人は団結しているのだとばかり思っていました。 そして、アイヒマン裁判。 ...続きを読む耳慣れない言葉が多く、読みやすくはなかったけれど、イスラエルという国家の歴史をユダヤ人側から見た本としては、的を得ていたのでは?
『イスラエル』(臼杵陽、2009年、岩波新書) 1948年のイスラエル建国後の政治の動きがかなり詳細に記述されています。イスラエル史の勉強になりますが、少し難しいかもしれません。 (2009年6月3日)
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