三森ゆりかのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本は、『論理的な表現を身につけるための日本語レッスン』であるべきなのではないか、と思う。
もし、そうだったら、本書に対して素直に納得できたし、星も5つ、躊躇することなくつけただろう。
もちろん、本書で紹介されている言語技法は、どれも大事だ。
身につけておいて、損をすることはないものだろう。
だが、外国語を学んでいる立場からすると、違和感を感じる部分がある。
私が最も違和感を感じるのは、外国語は論理的なコミュニケーションを重んじると一元化した議論が繰り返される点だ。
例えば、質問を具体的にせよ、という内容。
くどいようだが、もちろん、その技術を身につけることの大切さは、よく分かる。
それは、相手から情報を効率よく引き出すという、そういう目的がある場合において、だ。
けれども、筆者が力説する外国語の中でも、例えば英語であったとしても、「How was the concert?」、「What is he like?」などと、アバウトな質問は可能だ。
むしろ相手に好きなことをしゃべってください、と下駄を預けてしまうような聞き方が、彼女が論理的だと力説する英語にさえある。
私にとって疑問でならないのは、どんな状況でも論理的なコミュニケーションのモードであるのではなく、場合によっては、相手に下駄を預けるようなアバウトなコミュニケーションのモードもあるのではないか、ということだ。
更には、外国語の学習にとっては、その言語ではどういう状況で論理モードになり、どういう場合はアバウトモードでいいのかという、コミュニケーションのモードの切り替えという慣習自体も、学ぶべきところなのではないか、ということなのだ。
論理的コミュニケーションの大切さはよくわかる。
その必要性を力説する余り、なのだとは思うが、言語という文化についての理解があまりにも単純化されるのが、どうにも残念。
ゆえに、星一つ減。 -
Posted by ブクログ
日本の教育には、言語技術(language arts)が足りない、という、ぼんやり感じていたことを明らかに書いてくれた本。
内容は至極納得。外国語を身につけるため、だけでなく、仕事を円滑に進めるために必要なコミュニケーション技術と思いました。日本人でも、仕事ができる人はできている。と思う。
私の周りに、言語技術スキルの高い人がいて、なぜ自分ができてるか理由を教えてくれた。ハードな登山が趣味なため、緊急時に即座に必要なコミュニケーションが取れないと命に関わる、というシーンがあって鍛えられているから、だそうだ。とすると、緊急病棟の先生も同じなんだろうな。
自己理解のツールである、MBTIの先生が、緊急病棟の先生の教育を行っていると言っていたが、その話はこの本で言っていることと関係しているように思う。この本の中に、言語技術スキルを高めるためには自分の意見を持つ必要がある、とあったが、自分の意見を持つには、自己理解が必要だと思うので。
この本に望むことではないかもしれないが、根拠となる統計情報が欲しい。どの国では言語技術の教育がどれだけなされていて、どこではなされてないのか。違いは何か。など…。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ題名「外国語を身につけるための日本語レッスン」から、なぜ日本語の学習が外国語に必要なのかの疑問が出てくる。
その疑問から本書は始まる。
その答えは、「英語を話すときにまず日本語で文を組み立て、それを英訳しさえすれば話が通じるものと思ってしまいがちです。ところが、それではなかなか通用しない(P7)」からだ。
なぜ英訳しただけでは、通じないのか。欧米の言語や英語は、文法や文の構造が異なる。ものの考え方も異なる。その違いが文の組み立て方にも影響している。日本語の文の組み立て方は、欧米の言語と違うのだ。
では、日本語のどんな学習が必要なのか。本書ではそれを「言語技術」だと言っている。言語技術は、日本ではほとんど知られず学校でも教えられていない。しかし、欧米では違う。「欧米の言葉を母語とする人々は、言語の習得には技術が必要と考え、国語の授業は「言語技術」を学習する場であると考えられています。(P7)」
欧米式の言語技術を身に付け「翻訳できる日本語」を習得すること。これが、必要と説かれている。
日本語と外国語は、何が違うのか?本書では具体的に書かれている。私も読みながら、なるほど大きく違うと納得した。外人がなぜ変にうつるのか、あるいは日本人はなぜ変と言われるのかも分かり面白い。
まず、私が面白いと思った点。P26のあたりを引用する。
スキーのジャンプ競技でインタビューを聞いていると、アナウンサーは(略)「おめでとうございます。今日のジャンプはどうでしたか?」すると、ベテラン通訳は「今日のジャンプは、すばらしい大ジャンプでしたね。このジャンプについて、あなたはどう考えていますか?」と、即座に言葉を補って、具体的な質問に変化させていたのです。選手が長々と「今日のジャンプ」についての自分の考えを披瀝すると、通訳はすました顔で「自分も会心のできだったと思っています。最高の舞台でベストを尽くせたことを嬉しく思います。」などとはしょって
以上の部分を読みながら、以前から感じていた私の違和感が何だったのか分かった。外国人のインタビューのときに、外国人は1分くらいしゃべっているのに、通訳は一言二言の10秒ほど話すのを見て、不思議だった。実際は、はしょっていただけだったのだ。しかも、質問もそのまま訳さず、変化させていた点にも驚く。
なぜ、通訳は、「おめでとうございます。今日のジャンプはどうでしたか?」を、そのまま訳さなかったのだろうか?英語に「どうでしたか?」は訳せないわけではない。そのまま訳しても良い。しかし、どうでしたか?と質問しても、外国人は困ってしまうらしい。「今日のジャンプはどうでしたか?」は、日本人同士では通用するが、よく考えるとあいまいな質問だ。例えば、今日のジャンプは練習の時と比べてよかったか?とも受けられる。また、今日のジャンプのフォームはどうだったか?、今日のジャンプの風はどうだったか?などいくらでも解釈できてしまう。だから、ベテラン通訳は、
「今日のジャンプは、すばらしい大ジャンプでしたね。このジャンプについて、あなたはどう考えていますか?」と具体的な言葉を補い質問したのだ。
このように外国語では、あいまいな言葉が通用しない。日本語では、あうんの呼吸や空気や雰囲気で通じる。このあいまいさを止め具体的な言葉に変換しなければならないのである。 -
Posted by ブクログ
英会話を習った事がある人は講師から”Why?"とよく聞かれて返答に困ったことがある経験があると思う。自分もその一人であるが、講師がよく理由を尋ねるのは英会話のレッスンの一環だと思っていたが、この本を読んで外国語習得という以前にコミュニケーション文化や言語技術に対する認識の違いにあるようだ。
本書の著者はドイツでの留学経験をもち、つくば言語技術研究所を運営する三森ゆりか氏。三森氏は中高生時代にドイツの学校での経験から、日本の国語教育に言語技術(コミュニケーション・スキル)が不足していることが外国語の習得の障害になっていることを指摘している。本書は6つの言語技術(説明、描写、明確化、質問、返答、分析)を日本語で理解することで、日本語と外国語の橋渡しとなる「中間日本語」を身につけることを目的としている。
本書の内容は「クリティカル・シンキング」や「ロジカル・シンキング」とも共通する内容を含むが、これらが外国語学習に必要であるとはこれまであまり意識したことはなかった。実際に「察しの文化」を共有している日本人はあえて言語化しないことを美徳とし、日本人同士ではコミュニケーションが可能である。しかし、外国語ではそうはいかない。この当たり前のことを気付かせてくれることに本書の最大の意義があるだろう。 -
Posted by ブクログ
母語以上の能力を外国語で発揮することはできない。
気づいてはいたものの、痛いところをつかれた。
ある程度のレベルまでは外国語が日本語を引っ張っていってくれることもあるが、
そこからさらにレベルをあげるためには、その外国語にまつわる文化と歴史を理解するとともに、母語のレベルもあげなくてはいけない。
ただ、この本に書かれていることは、日本語のレベルを挙げるためのテクニックではなくて、
より外国語を通してのコミュニケーションを円滑にする為のスキル。
日本語を鍛えるというのとは少し違う。
とはいえ、いまの世の中で学ぶにせよビジネスシーンにせよ、曖昧さを潰してコミュニケーションを円滑にするスキルは必要不可欠。
その為には具体的でわかりやすい方法が書かれている。 -
Posted by ブクログ
日本語の言語の構造と様々な外国語の構造を比較しつつ語学学習について語る的な本かな?と思って読んだら方向性が違った。
外国語の文法や単語や発音を学んだとしても、言語技術、つまり思考と表現の方法論も学ばなければその言語を使う人々と対等に意見を交わすことは難しい。自分の意見を適切に主張できるようになるために、まずは母国語である日本語で言語技術を身に付けるべき、というような本。
筆者の主張には概ね賛成だけど、タイトルと本書の内容は少しズレている気がする。どちらかというと「(外国語を身につける前にやっておくべき日本語での)言語技術レッスン」ぽいイメージ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ<目次>
第1章 言語技術=グローバルスタンダードな母語教育
第2章 対話~質問を発しながら対話を展開する
第3章 説明~わかりやすく情報を組み立てる
第4章 記述の型式・パラグラフ~報告・連絡・相談の基本の型を身につける
第5章 絵の分析~「見る」から「観る・観察する」へ
第6章 テクストの分析~文字情報から証拠を集める
第7章 漫画の分析~高度な分析力で人生が変わる
終章 対話に戻る~さらに多彩な活用方法へ
<内容>
日本人は説明が下手。職場において職員の説明も心もとないことが多く、これでは生徒に伝わっていないのではないか?しかもその自覚に欠けている…と感じている。この本はタイムリーだった。かなり分析的に説明をしているので、「言語技術」のテキストとして有効な気がする。絵画から小説や漫画の分析まで。役に立つだろう。