中島隆博のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
哲学史というと、普通、ギリシア哲学から始まり、西欧の「大陸系」と英米の「分析哲学」という西洋哲学の流れの説明というのが一般的で、日本、アジア、イスラム圏というのがでてきても、それは「思想」、というか、西洋哲学との比較で論じられてきたのだと思う。
それを「世界哲学」として、時代ごとに論じていこうというチャレンジ。そして、これがその1巻目。
といっても、こうした「古代」においては、文明圏間の交流、影響関係はあまりなさそうなのだが、不思議なことに同じような時期に、同じようなことが当時の先端の文明の各地で問題として浮上してくるということが不思議。
もちろん、問題に対する答えは違うのだけど、、、、なんだか、「人間」とか、「人間」と「人間」の関係性といったことが問題になってきているんだね。
「世界はどのように始まり、どのように動いているのか」といった問いは古代哲学にもあるし、今だに哲学の重要な問いなんだけど、フォーカスはより「人間」「人間の内面」「人間関係」に移っていく。
「汝自身を知れ」ということか。
世界哲学といっても、やはりこの1巻目の中心は、ギリシア時代。そして、それがヘレニズムとなり、最後は、ヘレニズム哲学とインド哲学との対話というところでこの巻は終わる。
このシリーズは8巻なんだけど、プラトンやアリストテレスといった西洋哲学の始祖、そして東洋哲学の始祖というのは変だが、ある種の徹底した認識の転換を行なったブッダがさらっとしか言及されずに、どんどん次に議論が進んでいくところがすごいと思った。ちょっと新鮮というか、爽快。
次の展開が楽しみ。 -
Posted by ブクログ
2026/10/16
人口統計学者、哲学者、政治学者etc方たちのインタビュー。
戦争、テクノロジー、ヒューマニティのそれぞれの視点、未来に向けての考え方。
民主主義は衰退しつつ、資本主義も崩壊の途中。混沌とした世界はどのような未来に行き着くのだろう。互いに価値観の違いを尊重できれば、それが理想だけれど、それには『違う価値観を尊重する』という価値観が根底になければならない。
「日本は移民を受け入れる必要がある」(エマニュエル・トッド)と言われても、価値観の違う土地にやって来て、自分たちの価値観を押し付けてくる人たちには辟易する。嫌悪を催す。これは当然の反応だと思う。
共存の根本的な問題を棚上げしたままでは、国が内部から崩壊する。いや、侵略による変貌か。移民の問題は簡単に決めてはならない。簡単に言ってほしくない。
AIに関して、サム・アルトマン氏やイーロン・マスク氏の「本当に恐ろしい。人類存続の危機になり得る」との言葉に「いささか大げさだ」との考えはお花畑過ぎると思う。
本書は2024年刊なのに、有識者の人たちの楽観的な意見にはびっくりした。確かにシンギュラリティはもっと先の予測だったけど、危機感がなさ過ぎるように感じた(私がビビり過ぎてるのかなぁ)。
サム・アルトマン氏が非公開で語った、
「進化とは暴走列車であり、なにものもそれを止めることはできない。もしかしたら、これは天国まで伸び続ける木のようなものかもしれない」
この言葉は本当にただ、暴走列車が行き着くのは「人間の仕事の大半をこなせるAI(理解して学習して実行できる知能)」ということだけなのかと、不安になる。
そこまでの進化でストップするとは思えない。
-
Posted by ブクログ
『世界哲学史』シリーズ全8巻は、時間的には古代から現代まで、空間的には世界全体を視野に入れて哲学史を叙述するという壮大な企図の下に編まれたプロジェクトであったが、本巻では、十分論じき切ることのできなかった問題を取り上げるということで、新たに13の論考が収録されている。
「デカルト『情念論』の射程」「インドの論理学」「イスラームの言語哲学」「イタリアの現代哲学」「ポスト世俗化の哲学」「正義論の哲学」など、タイトルを見ただけでもバラエティに富んでいるのが分かるが、その内容自体難しいことに加え、それぞれの論考が分量の制約もあり短めなので、なおさら一般読者には敷居が高い。自分の興味が湧く論考に付されている参考文献を読んで、その内容の理解に努めていくのが良いのではないだろうか。
加えて本巻では、編者による振り返りの鼎談があって、各巻のエッセンスや各論考の関連性、編者自身の考え方などについて言及がされているので、各巻を読むに当たって大変参考になると思われる。
一度や二度読んだくらいでは歯が立たないというのが、全巻を通読しての正直なところだが、西洋偏重だった ”哲学” というものについて、どういったことが問題とされているのか、どういった試みが行われているのか、多少なりとも理解することはできたかと思う。 -
Posted by ブクログ
戦争やAI、資本主義と民主主義など現在のさまざまな論点についての識者の発言をまとめた一冊。
大国の覇権ではなく、各国・地域の利害に基づく多様なつながりが増えている現代、米中問題とか対ロシアという近視眼的な見方では追いつかないというのはよく分かる。
個人的に面白く読んだのはAIの話。人間を超えるか、という問いの立て方になんとなく違和感を持っていたけれど、素人にはそれがうまく説明できず、漠然とした危惧にあおられたままだった。その違和感を詳細に言葉で説明してくれた感じ。
たとえば人口「知能」というネーミングが導く恐怖感とか、AIの背後でデータを学習させるために単純作業をする労働者たちが抱える問題、データやツールを独占する国家や大企業の権力の問題の方が、AIそのものよりもはるかに深刻な危惧だ、と。
一方で、そもそも「知性」を外から入った情報を処理して何らかのアウトプットをすること、と定義すると、人間の知性とAIは確かに似たような作業をしているようにも見えるし、「創造性」についても、人が過去の経験や学習を基に作品を創り、AIはデータを基に「創造的な」作品をアウトプットすると考えると、やはり類似性は見える。
それでもなお、本質的な問題は人間の側にある。バイアスがかかったり誤った情報が出てきた時に、それを見分ける能力を持ち得るか、拡散されるフェイクにどう対応するか。現在進行形の課題をしっかり考える足掛かりになる。 -
Posted by ブクログ
【分析哲学の興亡】一ノ瀬正樹
エルンスト・マッハの要素一元論@世紀末ウィーン
思惟経済
→ウィーン学団の「論理実証主義」
→分析哲学
カルナップの原始的、AJエアの倫理
ヒュームの法則であるからべきへ→自然主義的誤謬
べき=論理的規範
クワイン「経験主義の2つのドグマ」→オースティンの言語行為論
【ヨーロッパの自意識と不安】檜垣立哉
ベンヤミン「暴力批判論」「複製技術時代における芸術作品」
【ポストモダン、あるいはポスト構造主義の論理と倫理】千葉雅也
現代思想=否定神学システム(東)
思弁的実在論
フランソワ・ラリュエル
→非標準哲学=メタ・メタ哲学
カトリーヌ・マラブー
→外部なしの内在的な変化を求める破壊的可塑性
【フェミニズムの思想と女をめぐる政治】清水晶子
【世界宗教者会議】冲永崇司
「仏陀による教えとしての因果の法則」釈宗演
創造者ではなく発見者
【哲学と批評】安藤礼二
シャルル・ボードレールからなるフランス象徴主義
→ランボー、マラルメの象徴の詩学
→ベルクソンの記憶、サルトルの想像力の詩学
【現代イスラーム哲学】中田考
【現代資本主義】大黒弘慈
【中国の現代哲学】王前
【AIのインパクト】久木田水生
【日本哲学の連続性】上原麻有子
多元的対話
【アジアの中の日本】朝倉友海
【現代のアフリカ哲学】河野哲也
アルジェリア独立運動におけるフランツ・ファノン
プラシド・タンペルのエスノフィロソフィー
【ラテン・アメリカにおける哲学】中野裕考 -
Posted by ブクログ
昨年の前半は、「世界哲学史」が月1冊出るので、読まないと次がまたくるという強迫観念があった。というわけで、せっせと読んでいたのだが、第8巻がでたら、そのプレッシャーはなくなり、昨年末にでた別巻をようやく3月に読んだ。
前半は、編者による対談での振り返りと編者による追加的な論考。そして、後半は、全8巻のなかで扱えなかったトピックをカバーするという構成。
もともと20世紀以降の哲学は1冊しか割り当てられていないので、仕方のない面はあるのだが、現象学や実存主義に関する記載はかなり薄い感じがあったのだが、編者はそこは意識しているのだけど、そこはこの別館でもあまり扱われない、というのは、面白いな。(個人的には現象がよくわからないというのもあって。。。。)
今回、面白かったのは、中国哲学のヨーロッパへの影響とか、ナチスの農業思想、モンゴルの仏教みたいな話し。どれも知らない話しなので、新鮮な驚きが。。。。
で、締めは、「正義論」。現代の「正義論」といえば、ロールズを起点とするわけだが、そこに対する批判の視点の視点。そして、それも西洋哲学内の批判ではなく、「世界哲学」という立場からの批判の視点の整理は、納得性は高い。
全体としては、別巻ということで、本巻ほどのテンションはないのだけど、ちょっとリラックスして余韻を楽しむみたいな感じかな。 -
Posted by ブクログ
世界哲学史全8巻が好評だったそうなので、編者のお一人である伊藤先生の発案により、別巻発刊となったそうだ。ただ、伊藤先生がご病気ということになってしまい、本巻の座談会は残りの3名の編者による鼎談となっている。その他、16編の論考を収録。うち13編は「Ⅱ.世界哲学史のさらなる論点」でさまざまな論点が提示されている。個人的には頼住先生の「道元の哲学」や岡田先生の「イタリアの現代哲学」、乗松先生の「ロシアの現代哲学」、そして神島先生の「正義論の哲学」などが興味深かった。もちろん短い論考が多いので、隔靴掻痒というか食い足りないというか、そういう部分も多いのだが。それは参考文献を読んでねということなのだろう。
あとがきでは別巻の続編も考えられているそうなので、期待したい。