中島隆博のレビュー一覧

  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    「こんな時だからこそ先人の知恵に学ぼう!」というわけではないけれどもちくま新書から「初の」世界哲学史シリーズが刊行中ということで、シリーズの第1巻。第1巻は「古代1 知恵から愛知へ」。

    世界哲学という概念は、大学生時代にカール・ヤスパースの『歴史の起源と目標』やヘーゲルの『歴史哲学』などを読んでいる身にとっては意外とハードルが低かったが、本シリーズの目標は当然これらの西洋哲学者の「限界」を超えていこうとするところにある。

    第1巻は「哲学の誕生をめぐって」「古代西アジアにおける世界と魂」「旧約聖書とユダヤ教における世界と魂」「中国の諸子百家における世界と魂」「古代インドにおける世界と魂」とま

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    2020年04月11日
  • 世界哲学史3 ──中世I 超越と普遍に向けて

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    第1巻では、似ているところもあるものの、国ごとというか、地域ごとに別々に生まれてきた哲学が、第2巻ではすこし影響しあうところでてくる。第3巻にくると、文化圏間での相互影響関係がさらに高まってくる。

    とは言っても、まだまだ哲学は、文化圏ごとにそれぞれの発展の道を歩んでいる感じかな?

    この巻では、キリスト教関係の話が面白かったな。とくに、東方教会(ギリシャ正教)の発展が新鮮。なんだろう、ここでは身体性とか、神秘主義的なスピリチュアリティとのつながりが重視されている。この傾向は、カトリック的な世界では、しばしば出てくるものの、異端として弾圧された流れだな〜。

    自分のなかに神性があって、それを身

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    2020年03月17日
  • 人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

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    エマニュエルトッドのロシア観、ウクライナ戦争論が独特で、至近のトランプとゼレンスキー対談も相まって興味深く読んだ。本人はロシア寄りの発言をしている訳ではないようだが、そう見える上に一理ある。

    さて、人類の終着点。これは本書の対談に『歴史の終わり』のフランシスフクヤマがいる事からも、何かしらの不可逆的な転換点を示唆したタイトルだろう。こうした不可逆的転換論は、グローバル化が不可逆であり、すべての国が市場経済に統合されると主張したトーマス・フリードマン。「ワシントン・コンセンサス」の経済政策を推進し、発展途上国が自由市場に組み込まれる市場経済が最終形態と主張したジェフリー・サックス、EU統合が「

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    2025年03月09日
  • 人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

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    これからの世界について、今起きている戦争、AIの発展、資本主義、民主主義の今後など重要なテーマについて、複数の知識人たちの語りで展望が語られる。

    ロシアのウクライナ侵攻を西欧ほどそのほかの国々は嫌っていないとか、戦後ロシアとドイツの接近こそアメリカが嫌っているとか斬新な切り口もあり、人口減少する先進国なので第二次世界大戦ほどの拡大戦争にはならないという見方もあれば、それはわからないという意見もある。

    AIによるデータの大企業に寡占される様やソノ、IT企業組織はヒエラルキー型のトップダウンという保守的組織であるという指摘も興味深い。

    ただAIはよくできて効率的なWikipediaのようなも

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    2025年01月09日
  • 全体主義の克服

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    戦前の日本、ドイツが失敗した全体主義化の危険性を、現在ネットが起こしうる危機について述べている。

    中盤から後半は、欧州思想が二者択一論に陥る、それはキリスト教の枠組みを超えられていないこと、中国思想はそこにとらわれずなので、新たな可能性があるとすることなどが語られている。

    最後に人の資本主義、倫理を大企業はきちんと価値にする、そのため弁護士だけでなく優良な哲学者をコンプライアンス部門に雇うべきなど興味深い示唆もあった。

    理解にはまだ及ばないが、興味深い本だった。

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    2024年12月09日
  • 中国哲学史 諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで

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    「中国思想」は耳慣れた言葉であるが、「中国哲学」は私には少々耳慣れない。それは「哲学」が西洋由来の言葉であるからなのだろう。本書では、この「中国哲学」を、孔子から20世紀に至る思想家を時に西洋の哲学を引き合いに出しながら中国の思想を哲学として普遍化することを試みている。単なる概説書を越えた、中国哲学を俯瞰的にまた深く理解できる好著。

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    2024年09月07日
  • 中国哲学史 諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで

    購入済み

    古代の諸子百家や朱子学などなら日本人にも馴染みがあると思うが(近代の胡適もか?)、本書では1949以降の新儒家の思想にも触れられている点が興味深い。一般書でこの部分に触れている書籍ってあまりないのではないかな。
    本書は章分けが非常に多い(21章!)ですが、それだけ中国哲学の「流れ」を重視しているということかと思います。長大な中国史ですから、やはりそれくらいは必要になるのだろうと。それゆえに例えば孔子のような中国思想史上の大人物に割かれるページも必ずしも多くはありません(重要でないという意味ではありません)。
    重要度を増す現代の中国を捉える意味でもぜひ手にとってみてください

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    2024年08月17日
  • 扉をひらく哲学 人生の鍵は古典のなかにある

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    若い子たちに向けての本なので、哲学のハードルが高かった私には少し手の届くものに感じた。

    違う時代に生きていても、人間の本質はあまり変わらず、そして、やはり歴史は繰り返す。

    なぜ生きるのか、親と確執がある、など、学生たちの質問から哲学の話をそれぞれの学者さんが答える方式で、とてもわかりやすい。

    哲学の話を長々と読んだり聞いたりするのは、困難だったので、導入書としてよかった。

    ニーチェや三国志、春の嵐、三四郎、100万回生きた猫…
    まずは、このあたりを読んでみたい。
    いつになるかわからないけど。

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    2023年08月31日
  • 全体主義の克服

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    他の新書系のマルクス・ガブリエル本では見なかった内容もあり、漫然とながら一読するには小気味よいスタイルだが
    対談形式ゆえの読み進めやすさと引き換えに失われるものも感じつつ、実在論などの進行形に踏み入れるには二の足を踏む。

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    2023年04月29日
  • 荘子の哲学

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    17
    老荘の再検討
    20
    チャン「思弁的・観想的な問題系」
    「言語と論証的な理性の相対性に関する、荘子の哲学的考察」をし、のちに残るものを「自然」に提示する

    42
    胡蝶の夢
    寝ているときに魂が交わり、目覚めると形がはたらく
    神が形から遊離し神と神が接する=夢や旅
    形と神は合離するもの
    46


    74
    胡適 荘子とヘーゲル弁証法
    傍観者にすぎない?
    79
    純粋経験
    81
    スピノザの自然神論
    86
    魯迅

    94
    イベザル・ロビネ
    ビルテール
    99
    動物
    105
    人のレジーム→天のレジーム→遊
    107
    グレアム「荘子斉物論」
    111
    チャド・ハンセン
    分析的、言語の適合性
    「語ることは何かを語る

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    2023年01月24日
  • 世界哲学史3 ──中世I 超越と普遍に向けて

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    中世Ⅰ

    古代で3つの枢軸であった3つの文化がついにユーラシア大陸の両端に達するのが中世である

    冒頭に世界哲学史として、中世の特徴を俯瞰する
    ①民族の大規模な移動と侵入が世界を動かした時代(旅人の時代といっている)
    ②古典を形成するのではなく、古典を継承し、それに対する註解を蓄積する時代。
    ③思想の伝達と交換をする時代
    ④神と人間の対立⇒神の人間からの超越


    ギリシア文化⇒ローマへ⇒(アカデミア→修道院、学校へ)西欧へ
          ⇒東方(ビサンチン)へ:コンスタンチノープル、東欧へ
          ⇒イスラム世界へ(シリア語→アラビア語)⇒再びヨーロッパへ

    インド文化(仏教)⇒中国⇒日本へ

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    2022年10月27日
  • 全体主義の克服

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    ネタバレ

    科学は倫理・道徳を推し進めない、哲学を実践する意味はそこにあるという。

    なんでも広告やら資本主義に組み込まれる社会。その中で、民主主義は自壊していくという。
    なんでもSNSやインターネットに公開することで、ある・ないの二元的に自身の行動を捉えられる(公開していないものはないものとされる。)し、Googleに対して個人データや検索履歴などあらゆる行動を与えている。ただそれらの行動自体がGoogleやSNS会社の養分になっている。そして、それらの会社が我々の行動をサジェスト機能等で規定しうる。我々自身が無自覚に巨大ソフトウェア会社に従うことになる。ただ、それらのソフトウェア会社は民主的ではない。

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    2022年08月24日
  • 中国哲学史 諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで

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    孔子、老子、孟子、荀子、荘子、韓非子、朱熹、王陽明、胡適、仏教やキリスト教といった外来思想、その他中国の哲学の歴史。中国の哲学が哲学としての普遍性を持ちうるのか、それともあくまで中国の思想としてのローカルなものなのかといった議論も。

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    2022年08月20日
  • 世界哲学史7 ──近代II 自由と歴史的発展

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    啓蒙の時代を経て発展した「理性と自由」の対立構造が、19世紀に向けてどのように展開されていったかを論じている。
    「自由」の種類、新世界で生まれたプラグマティズム、スピリチュアリスムに焦点。
    功利主義も。

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    2022年03月19日
  • 世界哲学史6 ──近代I 啓蒙と人間感情論

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    17〜18世紀を主な舞台に、「啓蒙」にまつわる思想を展開している。「理性」と「感情」の問題は通奏低音で、現代にも続く議論の背景が丁寧にまとめられている。

    カントの批判哲学を扱った章は特にわかりやすかった。

    終盤、中国、日本に目を向け、「儒学」「朱子学」を起点に感情論を展開した点は、読者の思想につながるいい構成だった。

    ところどころで垣間見えた現代における「理性・感情」にまつわる議論を追ってみたい。

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    2022年02月11日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    哲学=西欧哲学という常識を塗り替え、アジアやアフリカなどを含めた世界哲学の体系化を試みるという壮大な理念を掲げたシリーズである。
    一巻ではメソポタミア文明からヘレニズム時代を扱う。メソポタミア文明を哲学史に組み入れること自体がすでに世界哲学への第一歩であり、その内容も大変興味深かった。
    一点気になったのが、9章と10章の内容の矛盾である。9章ではヘレニズム時代にギリシャ人とインド人が出会ったエピソードを世界哲学の導入にはならないと切り捨てているが、10章ではそのエピソードを丸々取り扱っている。章ごとに作者が異なることに起因した矛盾であろう。
    世界哲学を体系化しようという試みの中でこのような齟齬

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    2021年10月28日
  • 世界哲学史4 ──中世II 個人の覚醒

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    第四巻は13世紀を舞台とした思想群が紹介されている。歴史の流れとして12世紀は成長の時代(騎士道精神、大恋愛)、13世紀は西洋中世の最盛である。本書の目的は哲学の流れはそこに呼応しているのか解明するところにある。際して、都市の発達、商業の成長、教育と大学の発達、托鉢修道会の成功などが論じられ、日本においての大思想家の誕生などまで様々なことが論じられている。中でも「存在と本質」、「普遍論争」に関してはとても興味深かった。
    そこで簡単にまとめてみようと思う。
    存在と本質
    存在はesseとexsistentiaの二つがありそれは明確に区別されている。本質は形相としてそれをそれたらしめているものであり

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    2021年09月08日
  • 世界哲学史2 ──古代II 世界哲学の成立と展開

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    第一巻目がとても面白かったので、楽しみにして読んだ。結果、第二巻もとても面白く読めた。

    第二巻目は古代から古代末までの世界の哲学を取り上げている。今から2000年も前の世界だ。特に、ギリシアの哲学者やその世界観、アウグスティヌスの自由意志、内的超越の話は印象に残っている。仏教や中国哲学、ペルシア哲学(ゾロアスター教、マニ教)の話は、とても難しかった。というのも、それらの章は本の中盤に位置しているのだが、それらの考え方に対して慣れ親しんでいない上にそれらの話がすごいスピードでスイッチするためである。とても頭が疲れたが、マニ教の話はあとの章のアウグスティヌスの話に繋がってくるし、仏教世界が綺麗に

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    2021年08月12日
  • 世界哲学史2 ──古代II 世界哲学の成立と展開

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    キリスト教や仏教、マニ教やゾロアスター教などの宗教も取り上げられる。各地様々な思想が入り乱れる様子を見て取ることができる。

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    2021年07月04日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    ヨーロッパ中心の哲学史を、全世界の多面的な視点から捉えなおすことを試みた8巻シリーズの第1巻。それぞれの章末には関連する参考資料の紹介もあり、興味を深められそう。特に、ソクラテスの「不知の自覚」にまつわる記述には深く頷ける。

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    2021年05月09日