四季報を20年以上読み続けてきた著者が四季報から10倍株を見出すためのノウハウをまとめたもの。真新しい指標がない分、信頼性の高さを感じた。その中で各指標に対して定量的な数値での見極めを提言しているところは参考にしたい。
増収率20%以上(売上高が4年で2倍)、営業利益率10%以上、海外売上比率50%以上、オーナー企業、上場5年以内、PER,PBRが高いものを選ぶなど。
また下落相場では、日経平均やTOPIXよりも下落率が大きいもの、業績を出しているもの、自社株買いをしている銘柄を推薦。
・10倍株探しで、私が一番重視しているのは「急成長」だ。そもそも成長とは何かだが、成長とは売上高の伸び、つまり「増収率」であり、その数字が20%以上のものか急成長していると考えている。ただし急成長の目安である増収率20%以上を簡単に見極めるコツがあり、それは売上高か「4年で2倍」になっているかどうかである。
・またピーター・リンチ氏も著書の中で、株を①低成長株、②優良株、③急成長株、④市況関連株、⑤業績回復株、⑥資産株の6つに分類しているが、このうち急成長株については「年に20-25%の成長を遂げ、うまくすれば株価は10から40倍、あるいは200倍にもなりそうな積極性のある小企業」と述べている。
・成長が「持続的」であるかどうかもポイントで、急激に上げ下げを繰り返すケースは成長株とはいえない。
・なぜ注目すべきが利益ではなく売上高なのか、疑問をもたれる方も多いだろう。その答えはいたってシンプルで「売上高なくして利益は存在しない」からだ。
・海外売上比率が50%を超えるタイミングは、国内企業がグローバル企業に転換するときであり、マーケットが日本から世界に広がるという成長ストーリーが描けるときでもある。
・10倍株を見つけるときに最重視してほしいのは、成長性を示す「増収率」の高さだが、稼ぐ力を示す「営業利益率」にも着目してほしい。つまり「営業利益率は本業で稼ぐカ」と考えてよい。一般的には1O%以上あれば「稼ぐカ」のある優良企業と判断してよい。
・工場を所有しない、いわゆる「ファブレス」企業は、コストを抑えて売り上げを伸ばし、利益は高い報酬として従業員に還元することができる。
・私の経験則だが株価が右肩上がりの企業には、創業者もしくは創業家出身の経営者(創業者の資産管理会社を含む)が株主1位の筆頭株主、という共通点がある。
・10倍株は、上場から「5年未満」が61%、経営形態は「オーナー系・同族」が80%と大半を占めていたこと。
・「PERが低い株を買え!」ではなく、真逆の「PERもしくはPBRか高い株を買え!」になっていたのだ。これは利益の期待値という一面を持ち合わせているからである。
・多くの人は、「株価が上がったら売る」「下がったら売る」と考えがちだが、それは違う。その銘柄を最初にもつとき、どのような想いで成長のストーリーを考えたのかを思い出してほしい。売るタイミングは、そのストーリーが崩れたときだ。例えば成長株の目安である「毎年増収率20%以上」というストーリーを想定して買った場合、株価が下がったからという理由で売ってはいけないが、増収率に鈍化の兆しが見えて、20%以上という想定が崩れたときには売ったほうがいい。
・ソニーを例にすると、「新進」の企業で、「独占的地位」にあり、「新分野を開拓」し、「成績(業績)順調」で、「配当」を維持し、「増収増益」だったことがポイントである。その後の四季報でも、「売上急増」「増収増益」「成績続伸」などのコメントが並び、業績が好調だったことを伝えている。
・成長性である「増収率」が高いこと
・稼ぐ力の「経常利益率」も高いこと
・配当を出していること
・積極的に投資をしていること
・海外展開をしていること
・増資と株式分割を行っていること
・経営陣が二人三脚であること
・バリュエーションはPSR、PER、PBRがともに高いこと
※ただし成長の源泉である「増収率」に陰りが見えたら投資判断を見直す必要あり。
・株式投資は「上がってなんぼ」の世界。株価が上がることが一番大事で、その「きっかけ」があるのかどうか、そしてそれは何かを考えることが重要になる。この上がるきっかけを株式市場では「カタリスト」と呼んでいる。「カタリスト」は直訳すると「触媒」だが、株価変動のきっかけ、またはその要因という意味で使われる。
・PERが切り上がることは、期待値が上がることである。例えばその銘柄が、実際に利益が出るかどうかは別として「テーマに乗っている」あるいは「新製品が出そう」「経営陣が交代する」「中期経営計画の目玉がある」など業績拡大の期待が高まればよい。
・次に利益(EPS)が上がるということは、文字通り増益ということだ。連続増益や業界平均を上回る増益など、実際に業績が拡大することが株価を押し上げる要因になる。
・このように考えれば、株価が上がる「カタリスト」は「テーマ」であり、新製品や経営陣の変化や中期経営計画などの「期待」であり、「増益」であることもわかる。PBRも同様に考えればよい。
・相場論でいえば、期待先行によりPERが切り上がり、つられて株価が上昇する相場を「理想買い相場」や[テーマ相場」といい、業績拡大が株価を上昇させる相場は「現実買い相場」あるいは「業績相場」という。
・「理想買い」の場合は、業績の裏づけが不十分なため「ハイリスクハイリターン」になりやすいが、リスクをとった分だけ大相場になる傾向がある。2013年のバイオ株相場も「理想買い」相場だったため、利益は出ていなくても大相場だった。その後の「現実買い」相場は一部では見られたもののバイオ全体が最高値を更新するような相場は出現していない。いずれ業績がついてくるころに「現実買い」相場がスタートするのだろう。
・テーマや期待は身の回りにいくらでもある。これらは「理想買い」につながる重要な「カタリスト」になり得るので、世の中のちょっとした変化でも見逃さないとう普段から気を配って過ごしていくのがよいだろう。
・3月決算企業は5月上旬から中旬にかけて、前期決算と合わせて今期の会社予想を発表することになる。それを受けて、証券会社の企業アナリストや四季報記者は鉛筆をなめなめ、今期あるいはさらに翌期の業績予想をどうするかをそれぞれ独自にまとめ上げていく。それらが四季報3集「夏号」に反映され、業績数字は前期実績値、今期予想、新たに出てくる来期予想の3期分が大きく入れ替わるのだ。
6月中旬に四季報の夏号が発行され、新しい業績予想が一般に知れ渡るまでには1カ月の空白期間がある。この1カ月が勝負で、ほかの人が気づく前に先回りして、魅力的なまま放置されている銘柄を見つけ出せる可能性が高い。
・相場が大きく下落したときの銘柄選別として、まず1つ目に注目したいのは下落局面で日経平均や東証株価指数(TOPIX)の下落率を大きく上回って下落した銘柄である。これは相場が大きく下がった分だけ、戻しの相場も大きくなるという可能性を狙った、いわゆる「リターンリバーサル」銘柄といわれるものだ。
・2つ目に注目したいのが、下落相場でもしっかり業績を出している企業である。
・3つ目の注目は下落局面で自社株買いを実施すると発表した企業だ。自社株買いを実施する企業の中には業績を下方修正したところもある。しかし、それでも自社株買いに踏み切るのは、短期の業績はともかく中長期的の展望には自信がある証拠である。これは暗に、企業が自社株の「買い推奨」をしているようなもので、何に投資するべきか悩む局面では、非常に明確なメッセージを発していると見てるよいだろう。
・中でも有名なのが「人の行く裏に道あり花の山」だ。これは、皆と同じことをしても儲けは少なく、他人がやらないことをやってはじめて大きな成果が生まれるということを教えている。多くの人が不安や恐怖を抱く株価下落時に勇気を出して買い向かえる投資家こそ、その後一番大きな利益を手にすることができるときうわけだ。
これらの格言から、単純に直近株価が一番大きく下がった銘柄を選んで買うというやり方が見えてくる。
・移動平均線は、「過去の平均」なので遅行指標であり、あくまでトレンドを確認するチヤートとして見るとよい。
①直近のローソク足は白(陽線)が多いか、黒(陰線)が多いか(ぱっと見の直感が大事)
②移動平均線は上向きか、下向きか
③ローソク足は移動平均線の上にあるか、下にあるか
・例えば、白の陽線が多く、移動平均線は上向きで、かつローソク足が移動平均線の上にあれば、株価は上昇トレンドにあると考えてよい。特に白の陽線が連続して出現する場合は、かなり強い上昇トレンドと判断してよいだろう。
・四季報で「キャッシュフロー」の欄も確認しておきたい。筆者はシンプルに営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローを見ている。フリーキャッシュフローについては四季報に掲載されていないが、「営業CF」と「投資CF」を足したものだと考えればよい。営業キャッシュフローも、フリーキャッシュフローもプラスなら「◎」としてスクリーニングした表に加えている。中には営業キャッシュフローはプラスだが、フリーキャッシュフローはマイナス、という銘柄もあり、この場合は「△」にしている。いずれもマイナスの場合は、そもそも候補には加えない。