本書は、児童文化を専門とし
現在は、同志社女子大学教授であるである著者が
「あなた」という概念について論じる著作です。
筆者は「おひとりさま」ブームなどに疑問を呈した上で、
それらが前提とする哲学的な「他者」概念とは異なる
日常の感覚に根ざす「あなた」概念の重要性を解説します。
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「あなた」概念が、「怪物」としての「他者」とは対極に位置するという指摘や
フーバーやニーチェの訳をめぐる考察など
興味深い記述は多くありました。
なかでも、個人的に印象深かったのは、
認知症の妻との生活を描いた、
耕治人の小説『そうかもしれない』に関する箇所です。
著者は「あなた」という観点から、
当事者に寄り添うような、温かみのある「読み」を展開しますが
そうした解釈とは異なる「読み」も紹介されています。
私はその作品を読んだことがなかったので、
この機会に読み、自分がどの解釈をとるのか決めようと思います。
「あなた」概念を通じ、人と人とのつながり説きつつも、
家族は大切という安易な一般論に帰着しない本書。
いわゆる「哲学」的な議論に疑問を持つ方はもちろん
多くの方におススメしたい著作です。