あらすじ
問題提起の書
本書によって、ベストセラーをもっと有効に活用しましょう。
感動の古典的名作といわれ、漫画とあわせて大ベストセラーになっている吉野源三郎『君たちはどう生きるか』ですが、この本が生き方の模範のようにされていることに異論があります。以下の重要な問題が見逃されていると考えるからです。
★人間観…作品の冒頭、コペル君が発見し、おじさんが科学的なものの見方として称揚する「人間分子観」は、この本の根本的なものの見方になっています。しかし、このものの見方の偏重は、進歩に寄与しない人間を排除し、人間ひとりひとりを尊重しない人間観となります。これを作品にそって具体的にみていきます。もちろん対論を提示します。
★すり替え…「貧困」や「格差」は「労働者」の問題に、「共同の意志」と「個人」の問題が「個人」と「個人」の友情の問題にすり替えられています。こうしたすり替えは作品のいたるところに存在します。
★英雄礼賛…文庫版解説の丸山真男氏もさじを投げ、漫画版では削除された「ナポレオン礼賛」の章。上記の人間観が英雄礼賛に結びつくのは必定です。コペル君・おじさんの発想の危うさが際立っています。
★解決法…事件の解決は、「力」にうったえる方法によっています。本当の解決とはいえません。本書の「いじめ」に対する考え方を明確に示します。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
この本を読んで初めて「君たちはどう生きるか」を読んだともいえる本だと思う。
著者は第二の主人公を北見くんであると言っていたが、私はおじさんであるとこの本を読んで敢えて思った。何故ならおじさんは作者である吉野源三郎が写し出されていて、だからこそ本人の葛藤そしてそれを私達に提示しているからだ。
おじさんは共産主義的な思考を持ちながらもその中に内包するファシズムに無意識的に違和感を持っている。
労働者の素晴らしさを説いたかと思えばナポレオンの虐殺記録を英雄視したりするように
だからこそ、そこを解決する部分はとってつけたような説明をする。つまりは作者自身がその問の解をまだ見つけられていないからだ
私達は、命を投げ売って敵を倒す物語に涙を流す一方で特攻隊をジョークにしている様な2面性を持ち合わしている。そんな今を生きるからこそ、それと面と向き合って「どう生きるか」考えなければならないのだと思う