ハーラン・コーベンのレビュー一覧

  • エージェントは二度推理する

    Posted by ブクログ

     ハーラン・コーベンの第一の魅力は、どのページに至っても、どの文章に至っても、とにかく読んでいて楽しいことだ。気の利いた描写力も素晴らしいが、何よりも会話の絶妙さが素晴らしい。セリフが素晴らしいということは、そのセリフの持ち主であるキャラクターたちが、おのおの個性的ということだ。いわゆる<キャラが立っている>。それがこの作家の一番の特徴である、と言っても過言ではあるまい。

     最近は独立作品が多いコーベン。ポライター・シリーズの共演者であるウィン(時には主人公を食ってしまうくらいの強烈な個性)を初の主人公とした『WIN』という待望の作品が2022年に邦訳されたときは小躍りして喜んだものだが、マイロン・ポライターのシリーズ(すべて早川文庫で翻訳は中津悠)としては4作の未訳作品を残したまま、第7作『ウィニング・ラン』(2002年邦訳出版)でシリーズ翻訳作品の出版は途切れ、その後はコーベン作品は独立系のものばかりが講談社や小学館から邦訳されることになる。いずれも一癖も二癖もある素敵な作品ばかりではあるが、ぼくらにはシリーズ主人公であるポライターの行方は杳として知らされないままであったのだ。

     そして邦訳としては24年ぶりのマイロン・ポライターとの再会機会を本書でぼくらは得ることになった。小説世界は現実世界に沿って時間がそれなりに流れたようだ。マイロンもウィンもどちらも現実世界に沿って年齢を重ねている。

     本書は、犯人の側の殺人描写というバイオレンスでいきなりスタートする。フォントを変えた犯人側の描写は作中に挟み込まれるまま、それらの殺人事件に取り組む側であるマイロン・ポライターとウィンの捜査や、二人の絶妙なコンビネーションと個性が光るのはお馴染みの光景。もし、シリーズに初めて接する方であっても、独立した作品として読んで頂いて構わない。そもそも4作未訳のまま連続しない形で昔からの日本語版読者は未来へとタイムスリップしてきたのだから。

     登場人物たちはそれなりの時を超えて今の作品内に配置されており、マイロンとウィンの関係も昔のままとは言えないまでも円熟味を増したかたちで犯罪に挑む。

     ちと難点がある。登場人物のあまりの多さである。巻頭のキャラクター表のページが擦れるくらい何度も参照しなければならず、それに苦労したのはきっとぼくだけではあるまい。時に、ぼくはキャラクターが複雑に絡まり合う恐怖を避けるために(汗)それぞれの関係図を描き、それを手元に置きながら読むことがあるのだが、今回はそれをサボってしまったがために、何度もページをめくり返す羽目に陥った。最初からそれをすればよかった、と反省しきり。

     とは言え、ミステリーとしての骨格があり、複雑な人間関係と意外性のある犯人と、読者を惑わすばかりのあまりに想定外な決着の付け方。すべてがコーベン節と言おうか、エンタメのためなら何でもやる的サービス精神(?)と言おうか(汗)、その辺りは独立作品もそうだが変わってないな、元気だな、と思わせられる一冊であった。

     古いこコーベン読者だけでなく、新しいコーベン・ファンにも是非読んで頂きたいし、もしこのダブル主人公マイロン&ウィンに興味を持たれた方は古い作品(けっこう入手困難?)たちにも接して頂きたいと願ってうやまないものである。

    これを書いている時点では本作の翻訳を手掛けている田口俊樹さんからの本作紹介文もありますので、是非ご一読を! 

    0
    2026年06月22日
  • ランナウェイ

    Posted by ブクログ

    私は推理小説を読む時、犯人当てをするのが好きだ。
    むしろ犯人当てをしたくて、推理小説を読み漁っているが、当たったためしはない。

    今回もいい線はいった(と思う)が、当たらなかった。
    そんなことよりも、もっと大変なことが物語では起こっていた。

    読み終わった後、私はどうしていいかわからなくなった。
    モヤモヤが止まらない。

    どうしてこんなにモヤモヤしているのか、自分でもよくわからない。
    家族ってむずかしい。

    おもしろかった。

    0
    2026年05月28日
  • エージェントは二度推理する

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    大好きなシリーズ。四半世紀ぶりのマイロンは、期待を裏切らない極上の一冊でした。泣いちゃった。

    マイロンがウィンをおまえさんと呼ぶのは以前もそうでしたっけ?おじさんになったからですかね。

    0
    2026年05月04日
  • THE MATCH

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    前作「森から来た少年」の主人公ワイルドが活躍するシリーズ第2弾。本作でもワイルドは自分の親族を探している。物語はいくつかの遺伝子鑑定会社(ネットサイト)を使って調査しているシーンから始まる。

    ワイルドの親族探しが1本の大きな柱、もう1本の柱がリアリティ番組で有名になった男の行方探し。この2本柱がくっついたり離れたりしつつ、SNSの異常偏執投稿やリアリティ番組での人格や価値観崩壊(日本でも自殺者でてたヤツ)、警察などを挟みながら、物語が進んでいく。

    前作との一番の違いは、伏線回収の見事さ。置いてけぼりにされてる問題はほぼなく、前作で拾えなかった伏線も綺麗に回収していく。あまりに見事すぎて「え、ワイルドシリーズはもう終わりなん?」と心配してしまうほど。

    メインキャラクターがとても魅力的なので、できればこのシリーズは続いてほしいなぁと思うのだが

    0
    2026年04月25日
  • WIN

    Posted by ブクログ

    “手短に”書こう
    とても面白かった。

    〈マイロン・ボライター シリーズ〉は知らない。でも、主人公ウィンはとても小気味が良い。

    小説なんだから“出来すぎ”って、言っちゃダメ。
    執事やお嬢様の謎解きもあるし、猫だって謎解きする。

    面白かった。

    0
    2025年08月22日
  • 捜索者の血

    Posted by ブクログ

    怒涛のサスペンスで、読む手が止まらなかった。スピーディーなのに重厚で500ページを越える作品もあっと言う間で、逆にもっと主人公達と共にいたいと思う程だった。
    幼い我が子を撲殺した罪で刑務所にいる「私」。死んだ筈の息子の成長した写真を見せる義妹。脱獄を助ける刑務所長、「私」を追うFBI捜査官。逃亡しながらも真相を見い出そうとする「私」。
    Netflixで映像化が決まってるらしいが本当に早く観たい。

    0
    2025年04月06日
  • 偽りの銃弾

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    マイロン・ボライターシリーズで有名なハーラン・コーベンのノンシリーズ作品。

    暴漢に襲われて死んだ夫ジョー。妻である元軍人のマヤは、戦時中のある行動が世界中にリークされた過去がある。葬儀を終えて友人からの助言に従い、日中のベビーシッターの行動を隠しカメラで録画するが、そこには死んだジョーが映っていた。。。

    読み進めるほどに意外な事実が出てきて、誰一人信用できないストーリー…なんだけど、案外展開が遅いので中弛みするところもないではない。ただ、終盤の畳み掛けが、その辺りをどうでも良くしてくれるほど素晴らしい。
    マヤの、あまりにも周りに頼らない性格が好きではなく、途中モヤモヤさせられることが多かったが、それもエピローグでぶっ飛んだ。それくらいいいラスト。ドラマ版も見てみたい。

    0
    2025年02月23日
  • 捜索者の血

    Posted by ブクログ

    ★5 かつて殺害された息子、成長した姿が写真に撮られて… 超怒涛のサスペンススリラー #捜索者の血

    ■あらすじ
    三歳の息子マシュウを殺害した容疑で逮捕され、終身刑となって五年間も服役しているバロウズ。守ってあげることができなかった後悔を胸に、日々刑務所の中で暮らしていた。ただ実は… 彼は殺害していない。

    そんなバロウズの元へ、元妻の妹レイチェルがバロウズに面会にやってくる。彼女はバロウズにある写真を見せるためにやってきたのだ。その写真には、殺害されたはずのマシュウの成長した姿が写っており…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    これぞサスペンス、これぞスリラー、これぞエンタメ! おもろいっ ★5

    まさにハリウッドドラマのようなストーリー、次々と物語が展開してワクワクドキドキがとまらないという作品。

    いきなり序盤から引き込まれます。息子が亡くなってしまったことについて後悔しまくりの終身刑の男の元に、実は生きてるかもっ!て、情報が与えられたら、そりゃもう大騒ぎですよ。

    とは言え刑務所から出ないとどうしようもない。主人公バロウズはいきなり人生賭けた大勝負に出る、そしてそれを支援する仲間、妨害する敵たちがワラワラ現れて、早くもクライマックスなんですよね。

    中盤以降は、息子が殺害されたときの証拠や証言を追求することになる。しかし彼は逃亡者の身、差し迫る追手からいかに逃げきるかってのも読みどころでして、あーもうサスペンスが止まらねぇ。そして登場人物の物語への関わり方が上手なんだよな~、人とバックグランドを繋ぐのが映像で入ってくるんですよね。

    お気に入りのキャラクターはFBIの二人、彼らがナイスコンビなんですよ。彼らの鋭い推理で少しずつバロウズを追い込んでいくんですが、いやーこれがまたヒリヒリしておもろいの!超エリートの頭脳派なんだけど、煮ても焼いても食えない奴らで、もはや事件捜査の変態マニアなんですよね。絶対関わり合いたくない人種だと思った。

    いよいよ終盤、一連の事件の真相が明かされるのですが… この事件の動機、そして亡くなっていた子どもは誰だったのか。これがもうね、なんも言えない状態ですよ。自分が想像していた以上の出来事で、もう脳みそが完全に沸騰しました。読んでいただき、同じ気持ちになって欲しい。

    さて息子マシュウは生きているのか、会えるのか、会えたとしても父バロウズのことを覚えているのか。これも何も言えません、ぜひ読んでいただき、同じ気持ちになって欲しいです。

    本作は「人を愛するために、どんな行動が必要なのか」を描いている作品だと思います。主人公バロウズはどういう行動をするのか、そして犯人はどういった行動をしてきたのか… 結果は物語のラストで感じることができると思います。

    ■ぜっさん推しポイント
    本作はセリフ回しが超カッコイイんですよ。ほんと映画やドラマで見たそのまま、映像が目に浮かんじゃうんです。

    本書引用---殺人犯の受刑者のセリフ
    「いいか、俺が殺すのは赤の他人だ。他人なんてものは人生の小道具にしか過ぎない。舞台の装飾品だ。自分が作り出す内なる世界にとってはただの背景にしか過ぎない。」

    痺れるーーー!

    こんなのは序の口で、主人公バロウズ、元妻の妹レイチェル、FBI二人が吐き出すセリフは書き留めておきたいくらいCoooolなの! 本作、NetFlix映像化もされるらしいので、絶対に見てやろうと思っています!

    0
    2025年02月19日
  • THE MATCH

    Posted by ブクログ

     『森から来た少年』は、奇想天外なアイディアで生まれた、いかにもコーベンらしい奇作であった。森に棲んでいた非文明的少年ワイルドは、40代にさしかかっている。彼は超奇妙な私立探偵存在として現代文明の中に沸き起こる現代的事件を解決に導いてゆく。解決できていないのが彼の正体。彼はなぜ独り森で育つことになったのかという謎。

     またワイルドとダブル主人公的に活躍するのが、何作ものシリーズや単発作をまたいで登場する女性弁護士ヘスター・クリムスティーンである。そう。このシリーズは続編である本書と併せてワイルドの出生の秘密に迫るのが本書なのである。なので『森の中の少年』を読んだ人はこれを読まなくては完結しない。そう言われて読まない人がいるだろうか? 一方でヘクターの家族の歴史が重要な分岐点を迎える物語でもある。ヘクターおばちゃんのファンであってこれを読まないなんていう読者が果たしているだろうか?

     さて本書。主人公ワイルドがDNA鑑定を通じて近親者を探していたところ、DNAが50%マッチした人物がいることを知るが、特定には至らない。一方、ワイルドにメールを送ってきていた人物が母方の血縁者と知り、こちらでもDNAのマッチ確立を探るが、その人物がTV番組で名が知られた挙句、ネット内で追われ失踪中とワイルドは知る。ワイルドの追う人物がリアリティ番組の参加者がネット世界で怒りや攻撃の的となり炎上したと言う。そんななか、ワイルドは警察官らの悪辣な暴力に曝され瀕死の状況に追い込まれる。彼をも巻き込む闇ネットの存在は何か? スリルと謎の深さが半端ではなく、ジェットコースターなみのストーリー展開と、錯綜の複雑さが混乱とミスリードを呼ぶ。

     読み進むにつれもつれた人間関係がほどけてゆくのだが、真偽や正邪の判断もつきにくい過去と現在の状況がネット情報とリアルの隔たりの狭間に溢れ、ワイルドとともに読者も混乱に突き落とされてゆく。何よりも見た目通りではない人物の多さと、何層もの虚実を剥いてゆくストーリーの複雑さが混乱を呼ぶ。

     一気読みに近いが、登場人物が多く複雑に互いが絡み合っていることもあってキャラクター表での確認作業が読書中とても大変であった。リアルとバーチャルの多次元的ストーリー進行もあまりに現代的なので、コーベンの作品中最も難読度の高い作品であるように思う。森で育ったこどもが大人になってこれほどの多次元バーチャル化した世界に対応してゆく才能とその知性には驚かされるが、ワイルドという個性の持つたっぷりと溢れかえるヒューマニティが作品の殺伐さを根底で救っている物語であるとも言える。

     いずれにせよ、設定も進行も奇才ハーラン・コーベンならでは個性に満ちている。語り口は平易で、場面転換も豊かで相変わらずのリズミカルなミステリーである。魅力的なヒーロー&ヒロインの悲劇と喜劇の多重構造の謎で構築されたこの世界。それらをしっかりと味わいながら是非とも丁寧に読んで頂きたい力作である。

    0
    2024年01月06日
  • WIN

    Posted by ブクログ

    マイロン・ボライターシリーズの大ファンで、続編が翻訳されなくなって永らく寂しい思いをしていたところ、この本の存在を知りました。ウィン、ハイスペックで冷血で、暴力を愛する男。最高です。歳を重ねてほんの少し丸くなったか。ストーリーも申し分なく面白かったです。

    0
    2023年09月24日
  • WIN

    Posted by ブクログ

    人生は悪くない ビールも悪くない
    いつも正しく行動する、それでも望み通りになるとは限らない
    人間関係は決してフィフティフィフティにならない、それを受け入れ構わないと思え

    0
    2023年05月21日
  • WIN

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    初のハーラン・コーベン。
    90年代に出版されたマイロン・ボライターシリーズのスピンオフで、ワトソン役のウィンザー・ホーン・ロックウッド3世が主役。
    本シリーズの方は流石に絶版状態で手に入らず。著者のことも寡聞にして今回初めて知りました。

    スピンオフ作品ということで付いていけるか不安だったが、そんな心配は全くなく、冒頭から主役のウィンに惚れ込んでしまう。
    いや、容姿端麗、超がつくほど大金持ち、冷血王子と言われていたほどのクールさ。それでいて狼のような獰猛さも垣間見える。こんなん惚れるやろ。
    作者と訳者の方の力か、ウィンの匂い立つような色気が読んでいても感じられた。

    富裕層用のビルで死体が発見されるところから始まり、フェルメールの絵の盗難事件、学生運動家が引き起こした事故、“恐怖の小屋”と呼ばれた暴行事件など、時代を跨いだ事件が複雑に絡み合うことになる。
    若干後出しジャンケンなところはあれど、意外な事実がこれでもかというテンポで提示され、登場人物のキャラ立ちもあってあっという間に読み終えた。

    個人的には、おすすめの一冊。続編も期待しつつ、そもそものマイロンシリーズの復刊もお願いしたい。

    0
    2023年01月13日
  • WIN

    Posted by ブクログ

     『カムバック・ヒーロー』を読んで間もなく『WIN』を読む幸せ。もちろん偶然。それも、なぜか神がかり的な偶然! 何と25年の時を経て刊行されたのは、スポーツ・エージェントのマイロン・ボライターを主人公にしたシリーズのスピンオフ作品。マイロン・シリーズに欠かせない相棒のウィンザーホーン・ロックウッド三世にしっかりと齢を重ねさせ現在形の主人公として起用あいなったのである。Wao!!

     ウィンはマイロンのシリーズでも相当魅力的な主人公であるばかりでなく、とても重要でインパクトのある仕事を果たす。知のマイロン。力のウィン。よくある私立探偵ハードボイルド・シリーズのコンビネーションを、そのままなぞったような、いわばアメリカン・スタンダード。

     どちらかと言えば無口な主人公であるウィンのなのに、なぜか本作は彼の一人称で語られる。減らず口の得意なマイロンですら与えられなかった叙述法。感情を示さない(感情が希薄と言った方が正解かな?)ウィンの一人称。これは、ある意味、謎めいた存在でもあるウィンの内面が改めて覗けるという点で、とても興味深いのだが、作者がこの手法を敢えて取ったこの作品。コーベン・ファン、さらにはウィン・ファンの関心を、強烈に惹きつけること請け合い。何せタイトルそのものまでが、”WIN”。

     あまり感情が動かない様子、プラス、ウィンの生きる方程式のようなものは、随所で本人によって語られるから、ウィン・ファンの読者には相当そそられる作品になるだろう。無論、ぼくもその一人。

     さて事件そのものは、けっこう時間枠でも空間枠でも大スケールなもの。1970年代に世界を騒がせながら、誰一人としてその後の行方がわかっていないテロ・グループ6人組のジェーン・ストリート・シックス。テロ行為の結果である某バス襲撃事件では、かつて多くの被害者が出ている。世界中が彼らを探し回ったのに、その後の行方は、一人として杳として知られぬまま。

     本作では、まず謎の「貯蔵家」の遺体が、発見される。事件現場では、ロックウッド家から失われた二枚の名画のうち一枚が発見される。フェルメール『ピアノを弾く少女』。もう一枚ピカの名画は『本を読む人』は何処?

     ウィルの父、亡き叔父など、ロックウッド財閥を巻き込むために、ウィルの家族、過去の謎めいた事件などが、この作品では改めて明らかになってゆく。中でも、森の中の小屋で監禁放置状態で汚物まみれになりながらも脱出を果たした従妹パトリシア・ロックウッドの存在は、最近のコーベン作品によく似た独特の奇妙さを有して不気味だ。この森の少女連続監禁事件では、パトリシアの脱出とともに他にも多くの少女が遺体で発見された。パトリシアは唯一の生き証人であった。しかし、それも22年前の未解決事件である。

     現在のフェルメール殺人事件が、過去の未解決事件とどうやって繋がってゆくのか。ウィンの捜査や冒険により、様々なもつれが徐々に解かれてゆく。その真実たるや、なかなかに重厚で複雑な人間絵模様とも言える。ウィンの視点で、彼自身の運命をも象ってゆく真実を、どちらかと言えば淡々とユーモアすら交えつつ(本人が意図しているかどうかはともかく)描かれ、読まされてしまうのはいつもながらのコーベン節。ウィンの性格をよく活用しているとも言える作品である。

     一ヶ月ほど前に読んだばかりの『カムバック・ヒーロー』ではラストシーンがウィンの行動で終わるのだが、これについては本作p494でウィン自身が振り返っているので、いわゆるネタバレ。なので未読の方は『カムバック・ヒーロー』を先に読んで頂いてから本書にかかるのはどうだろう。それ以外のマイロン・シリーズのどれか一冊でもよいのでそれを読んで頂いてからでもよいと思う。これを単体で読むよりもずっと深く、楽しく、ウィンの現在の物語を重層構造的に読むことができる。

     何であればウィンの個性を、この作品の後にマイロンのシリーズで追尾してみては? 楽しみは単なる二倍はなく、十倍にも二十倍に、いや百倍にも膨らむはずである。

    0
    2022年11月26日
  • 偽りの銃弾

    Posted by ブクログ

    おもしろかった!
    これは結末を知ってしまったら読む意味なくなっちゃうのであれこれ言えないけれど、なかなかインパクトのあるラフトだった。

    ジュリアロバーツがマヤをやるみたいだけど、アマプラ落ちてきたら絶対見よーっと。

    0
    2022年08月19日
  • 森から来た少年

    Posted by ブクログ

    テンポもいいしキャラクターもいい。
    読後にもやっとした部分が残らない。
    この作者の作品は初めて読んだが、他の作品も読んでみたい。

    0
    2022年06月26日
  • 森から来た少年

    Posted by ブクログ

     前作『ランナウェイ』の主人公サイモン・グリーン、またこちらも前作に登場した女性弁護士ヘスターのTV番組収録シーンが序盤に展開する。ヘクターおばあちゃんは、本作では何と、そのままダブル主人公の一翼を担ってしまう。サイモン・グリーンの事件『ランナウェイ』と、本書は時期的にかぶっているらしい。

     連作ではないのだろうが、ファンサービスか、作者の遊び心なのだろう。ちなみにハーラン・コーベンのノン・シリーズ2001年作品『唇を閉ざせ』では50代のへスターが登場するらしい。へスター・ファンとしては、件の作品は早速取り寄せねばならないだろう。

     前作に続き、本書も全編に渡って作者の遊び心に満ち溢れているように見える。むしろ、それこそが円熟期とも言えるハーラン・コーベンの真骨頂なのかもしれない。

     『ランナウェイ』では十代男女の殺し屋コンビ、アッシュとディーディーの殺人街道が、本編とは何の関わりもないかのように、本編に挿入されていた。そうした独特な場面転換によるあの不思議な構成は本作でも生かされている。

     多数の多次元的な物語が、一つの小説のうちに交互に展開されるというディープかつ卍な構造が、徐々に全体を縦糸と横糸で編み上げてゆく構成と相まって、総体的に何とも言えぬ緊張感をじわじわともたらしてゆく。視点の転換。仕掛けられたいくつもの伏線と意外性。

     本書のタイトルともなる主人公、その名もワイルドは、6歳から8歳と思われ、文明と離れた森の中で育った野生の少年として発見されたにせよ、本作スタート時点は、その34年後、文明社会に馴染み切った中年の男性として登場する。元は野生の生い立ちであったにせよ、今では孤独という名のこれ以上ない警戒心を抱え込んで、先端技術である警備システム、スマホと種々のアプリ、機械類など、野性とは真逆と思われるあまりに現代的な道具を駆使するテクニカルな隠遁者のような生活を送っている。

     生活各所における警戒心と緊張と危機管理意識の細やかさは並ではない。日々の生活は、ゆるめては緊張させ、またゆるめる。異性との楽しみ、文化・技術への渇望、そうしたことへの躊躇は見えない。発達した独立自我のリズムで奏でられる見事な生活を信条としているかに見える。

     一方で描かれるのは彼の生きる世界が、多くの瑕疵で綻びを産んでいる事実。少年少女たちの間で生まれる差別、虐め、失踪、暴力。大統領選を見据える野望を持つ男。取り巻き連のそれぞれの立場。TVメディア。メディアを操る者たち。過去の殺人。人種差別を下地とする冤罪事件。あってはならぬ悪と、未だ遂げられずにいる正義。本書のなかの世界は、様々な矛盾と不安定ささで燻り過ぎている。

     野生の少年であった今や中年男のワイルドは、その中でひたすら優しさと明るさを維持しているかに見える。かくも頼もしく信じられるキャラクターの存在が、ともすればダークになりがちな作品を救済していくように見える。それは作者の優しさなんだろうとも思える。だからこそ多くの布石を回収してゆくストレートでカタルシス豊富な揚力があるのだろう、本作には。

     本書ではワイルドと同等、あるいはそれ以上に印象的な闘志を見せるヘスターが目立つ。前作『ランナウェイ』でも頼り甲斐のあるベテラン弁護士として活躍して見せた彼女は本書ではワイルドと主役を分け合う存在感と魅力に満ちている。ハーラン・コーベンの最大の創造力を形に表した存在として、象徴的な存在だと思う。

     本日、札幌オンライン読書会で様々な情報を仕入れました。ハーラン・コーベン初心者としては相当参考にさせて頂きました。深謝。

    0
    2022年03月12日
  • ランナウェイ

    Posted by ブクログ

    サイモンは大学生の長女ペイジの行方を捜していた。娘は恋人に薬漬けにされたあげく、学生寮から姿を消したのだ。ある日刑事から殺人事件の報せを受けたサイモンは、妻イングリッドと共にペイジと男の塒へ踏み込みが…。著者のフェアな目線と巧みな構成に唸り、奴涛の伏線回収に目を瞠る。そして衝撃過ぎる結末。米国屈指のヒットメーカーが放つ、極上のドメスティック・サスペンス!

    圧倒的。今まで読んだコーベンの作品ではベスト。  
    またまた、あの弁護士が登場。

    0
    2022年03月12日
  • ランナウェイ

    Posted by ブクログ

     家族、親子、夫婦、ドラッグ、暴力、ネット、メディア、拡散、殺人、失踪、新興宗教、携帯、遺伝子、etc. etc。現代のミステリーは、犯罪の内容も、手段も、情報も、捜査方法も、過去のそれとは大きく異なってきている。そのことを嫌というほど感じさせる作品。

     ハーラン・コーベンを読むのは実は初めてなのだが、本書を読む限り、本物の香りを芬々とさせる、濃厚なテイストの、誠実で間違いのない作家、と言うに尽きる。

     グリーン家という家族で構成されるユニットを、さらに父、母、兄弟、姉妹、という具合に、それぞれの関係を多角的に描きつつ、あくまでも主人公は長女を探す父サイモン、という設定で貫く。副主人公とも言える女探偵エレナ・ラミレスもまた、亡くなった恋人の想い出が深く心の中で生き続けているという誠実この上ない人物で、大変に魅力的である。

     個性的なキャラクターもいっぱい。魅力的で頼りがいのあるお婆ちゃん弁護士ヘクター。謎多い兵士上がりの助っ人コーネリアス。胡散臭い売人のロッコとルーカス。<心理の聖域>なる宗教団体。それぞれの個性や集団がストーリーによく絡み合う。

     極めつけは、次々と狙う獲物のリストがミステリアスな、十代男女の殺し屋コンビ、アッシュとディーディー。彼らの不気味な殺人ツアーの有様は、とりわけ物語にどう繋がってゆくのかわからない伏線として作中に挿入される。その他の警察、病院、シェルター等々での多様な伏線も、たっぷりと物語を盛り上げながら、危険の匂いをそこかしこにまき散らしつつ、読者の視点はサイモン・グリーンの内と外を行き来しながら、大都会の裏と表、延々たる荒野とを彷徨させられる。

     最後に、重ねられた謎が一つ一つ順序立てて明らかにされてゆくのだが、その時のカタルシスは、ある意味快感ですらある。家族という難しくも永遠の課題。愛憎と秘密に絡み取られた魅力的な果実を、苦みとともに噛み締める勇気が試される骨太の傑作長編である。

    0
    2021年04月30日
  • 偽りの銃弾

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「ステイ・クロース」が面白かったので、ハーラン・コーベンの他の作品も読んでみようと、手に取った作品。

    いやーこれは上手い小説だ。謎また謎の積み重ね(解説の堂場瞬一さんに曰くたまねぎ小説)その重ねようにページを繰る手が止まらない。
    詐欺の手法で、次から次に説得力のあるような根拠のあるような逸話挿話ショートメッセージを怒涛のようにしゃべりたて、返事する間を与えずいつの間にか聞き手の意思を操る手法があると聞いたが、まさにそれ。

    テンポよく次から次へ、不可解な事件や不審な登場人物やあれやこれや出てきて衝かれるように、読み進める。ちょっと余裕が出てきて疑問符が浮かんで、その疑問符を持ち込んだまま、クライマックスを読んだ時の衝撃。

    うわぁ、そう来るか。性根がヒネてない素直な読者なら、驚天動地。一番最後、主人公のモノローグで少しソフトランディングさせてくれるものの、解説まで読み終わってもドキドキは止まらない。

    ハーラン・コーベン。こりゃ、エラい作家に出会ってしまったぞ。過去作含めて追いかけ必至である!

    0
    2019年01月22日
  • 偽りの銃弾

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    前評判も高かったがさすがのハーラン・コーベン。わたし的には今年読んだミステリーの暫定1位。

    アメリカ的な嫌なところも見事に回収。「戦火の勇気」のメグ・ライアンぽい主人公もカッコいい。え、ジュリア・ロバーツで映画化なの?

    解説で堂場瞬一氏が結構な字数を割いてマイロン・ボライターシリーズへの愛着ぶりを書かれていて、ウインザーホーン・ロックウッドⅢ世の大ファンで、最近事あるごとにマイロンシリーズをオススメしている私としては援護射撃を得たような気持ちだ。(堂場氏のファンではないが)

    0
    2018年07月19日