佐藤亜紀のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大好きな作家さんの佐藤さん、今回は、ドイツ第三帝国下のスウィングボーイズの物語。
佐藤亜紀さんは、不幸な事件のせいもあって、あまり話題にはされてませんが、実は好きな人がメチャ多い作家さんです。最近だと黄金列車もすごく良かった。
ナチスに頽廃音楽とレッテルされた音楽や美術作品は多々あるなか、ドイツに浸透していたスウィングジャズにハマった悪ガキの物語、ゲシュタポの排斥が進むなかで、隠れてスウィングスウィング、ある意味楽しい青春譚が繰り広げられるものの、時代の流れは暗雲立ち込め、ハンブルク大空襲を山場に生活瓦解となるなかで、そのような陰鬱さを感じさせないスピードで悪ガキが走り続けた物語。悪ガキベース -
Posted by ブクログ
再読。
一度目に読んだときが佐藤亜紀作品デビューだったので、落ち着いて読めていない部分も多かったと思う。
一度目も楽しかったんだけど世界観への順応とか歴史の知識とかにエネルギー使ってしまい本編を純粋に楽しむ余裕なかったかもしれない。双子であるにも関わらず身体がひとつという設定にいちいち興奮していたみたい。
そういう基本設定と話の筋もわかった上で改めて読んでみたら、メルヒオールとバルタザールはじめ登場人物をより深く理解することが出来たと思う。
注釈もないまま当たり前のように引き合いに出される馴染みのない文学作品とか演劇の台詞とかには「分からないやつは読むな」と言われているような気持ちになるけど -
Posted by ブクログ
戦時下の青春小説。
日に日に締め付けが厳しくなっていく戦時下、敵性音楽であるジャズをどうにかして聴き続けること。この話を貫いているものは反戦の精神でもなく戦争がもたらす教訓的なものでもなく、ジャズという名の人間性ではないかと思う。
主人公エディがつるんだり巻き込んだり丸め込んだりする人達は、ユダヤ系、ユーゲントのスパイ、戦争捕虜、ゲシュタポなど立場を問わない。
エディにはイデオロギーはなく、ジャズを聴き続けるため、前線行きを逃れるためにあらゆるものを利用し、あらゆる理不尽に心を痛める。
ジャズを含むアーリア的でないもの全てを根絶やしにしようとイロニーのかけらもなく愛国精神を説くナチス。
-
Posted by ブクログ
舞台は第一次世界大戦前後のヨーロッパ。
サイキック集団が跋扈する魑魅魍魎の中を泳ぐように生き、したたかに漂流するゲオルクエスケルス。
登場人物が全員オーストリア人とかロシア人とかだから名前が覚えにくい事おびただしい。
人物相関図付けてあげようとは誰も思わなかったのか。
何回もコイツ、誰だっけ?と読み返した。
でも読み返すことで面白さは倍増する。
ギゼラが最後の最後に出てきた時は快哉を叫んだ。
初登場から一体何年経ってる設定なの?
そしてちゃんと結ばれるのね。
ハッピーエンドなんだ。其れにも吃驚。
読み応えあります。
読んだら疲れます。でも心地よい疲れです。
500頁以上有りますがオススメです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレエネルギーを要する作品でした。歴史的な背景がわからないと迷子になる。知らない用語が当然のようポンポン出てきて「ちょっとまって、これ何のこと言ってんの?」ってなる。検索しながら読んだ。
主人公たちの使う特殊能力を脳内で再現するために五感を総動員して第六感的な感覚を何とかして創り上げるという作業が必要だったんだけど、これが癖になるほど楽しかった。(私としては泥酔したときの感覚がいちばん役立った)
登場人物がやたら多いがみんな魅力的なのでさほど混乱しなかった。小狡いキャラクターすら心から憎むことができない魅力を持っており2作品を通してそれがジワジワ漏れ続けいつの間にか何となく好きになっている。
-
Posted by ブクログ
「西暦二○○○年の人間はまた別な風に弾くだろう、って先生は言ってる。今みたいな音楽を普通に聴くようになった人たちには、ベートーヴェンはまた別のものに聴こえるだろう、先生が聴き始めてからでもずいぶんと変わったって。それはいいことでも悪いことでもある、って。得るものと失うものがあるから」
2017年に日本人の作家が大戦末期のドイツを描く。綿密なリサーチが彼らのステップを“歴史”から開放する。自由なステップは素敵な飛躍を生み、それが祈りを携えた小説となる。読者は史実の手触りと自分の足元が変容する感覚を味わう。読み終えた僕が思いを馳せたのは、遠いドイツの風景ではなく、もっとそばにあるファシズムの過去 -
Posted by ブクログ
この本は実在したスウィング・ボーイズの話です。私はスウィング・ボーイズなる存在を知りませんでした。ナチス体制のハンブルグで、ジャズによって規制に抗った少年たち。ナチスに抵抗した若者というと私は白バラしか知りません。スウィング・ボーイズもエーデルヴァイス海賊団も知りませんでした。だから小説としての面白さだけでなく歴史を知るという意味でも興味深く面白かったです。
白バラは反戦のビラを撒くのに対して、スウィング・ボーイズはただカッコいいことをしたかったり好きな音楽を聴いたり踊ったりしたいだけ。自由でいたいだけ。ビラを撒く恋人にエディは「それってユーゲントとどこが違うの?なんで青年が先頭に立って旗を掲 -
Posted by ブクログ
ブンゲイ批評
かかった時間もこまぎれなのでわからない。というか、読み終わったのは半年くらい前だと思われる。
小説とは何か、が、ずっとわからなかったのだが、この本でようやく、なんとなく「小説で書き手は何をやりたいのか」がぼんやりと見えてきた(遅い)。
筆者の、小説というコミュニティに参加することに対する、それを必要としない人へのあっさりした突き放し方と、そうでない人に対するあくまでも知的に作者と対峙する姿勢の要求とが、小気味よい。
早稲田かどこかの講義録だそうだが、大学ってこういうことするところだったよな、そういえば、と、思う。まあこの話が成立する学生さんも、きょうび少なそうだけど。 -
Posted by ブクログ
当初、岩波書店『陽気な黙示録』や四谷ラウンドから発刊されたエッセイ集の再録集かと思っていたのですが。
読んでみて「おおおっ!」その後、新聞や雑誌に寄せた文章が初収録されている!!
これは購入した甲斐がありました!(嬉)
内容は相変わらずといおうか、なかなか辛辣で、時々ふっっと考え込んでしまったり落ち込んでしまったりするんですが。
それでも、こうして読む事ができるのはやはり嬉しいものです。ふふ。
という訳で、…まぁ、多分佐藤亜紀が好きな人は絶対購入済だとは思うんですけど。当初のワタシのように、「ああ、書籍でもう持ってるよな」なんて思った人は、ぜひ購入してみてください。 -
Posted by ブクログ
怠惰な金持ちが投げやりになって落ちぶれていく物語
第一次大戦から第二次大戦の間のヨーロッパの雰囲気は世界史の教科書でしか読んだことがなく、世界観がなかなか掴めない。インディージョーンズやサウンドオブミュージック、チャップリンの映画の世界観をイメージしながら読み進めるが、なんとなくピンとこない。
読み進めるまで一人の体に二人の人格という設定がなかなか理解できず、登場人物の名前も覚えづらく感じられてなかなか読む勢いがつかなかった。
後半に差し掛かってやっと設定が理解でき、SFを読むような感覚で最後まで一気読む。
何が面白かったのか、うまく説明できないが、面白かった。設定を理解できた二度目、