佐藤亜紀のレビュー一覧

  • スウィングしなけりゃ意味がない

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    ネタバレ

    ボンボンが悪ガキしてるわー、というところから、時代そのまま地獄のような状況に突き落とされていく、その情緒の行ったり来たりが、『状況に酔う』ということのない視点を通じてなされ、読みふけってしまった。ちょっとだけ、些細なことだが受け入れがたいところはあった、けれども。

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    2022年07月09日
  • 黄金列車

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    第二次世界大戦末期、ロシア軍が攻めて来る中、ユダヤ人から没収した財産を記者に積み込んだ黄金列車がブダペストを出立する!

    主人公は大蔵省の官吏のバログ

    武力も無く、権力もなく、誰が敵か解らない中、知恵と機転だけで窮地を乗り越えていかなければならない!

    黄金列車はユダヤの財貨を守り抜いて終点へ辿り着けるのか!!!???


    黄金列車のバログ現在と、妻を失くすまでのバログの物語が混沌と混ざりながら進みます。




    本作の作者の本は多少の読みにくさはあるものの読み手を引き摺り込む何かがある!

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    2022年05月03日
  • スウィングしなけりゃ意味がない

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    実在したナチス政権下のスウィング・ボーイズ。上流階級のおぼっちゃんのかっこつけ、お遊びでありながら、音楽への熱狂や一体感がすごい。若くして戦況の変化に直面しつつ、己は常に自由たらんと踊り続けるかのような生き方を、ナチスドイツを背景にしながら鮮やかに描き切っているところも見事と思う。

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    2022年03月11日
  • ミノタウロス

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    帯の「目を背けるな。未曾有の時代を生きる現代人、必読の書」に ふ~~ん と思い、読み終わってからは、なんで必読??

    人という存在から獣に近い存在にひたひたと自然の流れの中で移っていくのにすくんでしまった。一度してみると二度目三度目とどんどん平気になっていきエスカレートしていく。面白いわけではなく興奮もせずただしたいからする。あぁこの人たちは刹那の今を思いのままに生きているのかもしれない。同じ世界に生きていたら私もそうなるのかな

    色々あるけれど、今の世界で幸せを感じていられます。

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    2021年11月07日
  • バルタザールの遍歴

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    怠惰な金持ちが投げやりになって落ちぶれていく物語

    第一次大戦から第二次大戦の間のヨーロッパの雰囲気は世界史の教科書でしか読んだことがなく、世界観がなかなか掴めない。インディージョーンズやサウンドオブミュージック、チャップリンの映画の世界観をイメージしながら読み進めるが、なんとなくピンとこない。

    読み進めるまで一人の体に二人の人格という設定がなかなか理解できず、登場人物の名前も覚えづらく感じられてなかなか読む勢いがつかなかった。

    後半に差し掛かってやっと設定が理解でき、SFを読むような感覚で最後まで一気読む。

    何が面白かったのか、うまく説明できないが、面白かった。設定を理解できた二度目、

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    2020年11月04日
  • 天使・雲雀

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    戸惑いの「天使」と、手に汗握る疾走感の「雲雀」。
    話がいきなり飛んで、多数の人物の名が入り乱れたため「天使」を読み終えた時は混乱をきたし、星2だと感じていたが「雲雀」の中盤からどんどん話と登場人物が収斂してきて最後の100ページは一気読みだった。
    ストーリーは抜群に面白いが、文体、構成、いきなりの登場人物名などから、読み手を選ぶ小説かもしれない。

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    2020年10月07日
  • スウィングしなけりゃ意味がない

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    イカした小説だった。ナチスが幅を利かしていた時代のハンブルクを舞台に、ジャズにかぶれた連中(スウィング・ボーイズ)がしたたかにしなやかに生き抜いていく物語。
    レジスタンスのように真っ向から抗うのも尊いけど、この小説のスウィング・ボーイズのように軟派を装ってカッコつけ、相手にしないようでいて器用に裏をかいているようなのって素敵だ。ナチスの時代というとすべてが灰色あるいは真っ黒に思われかねないけど、笑うときもあれば悦びのときもありながら人は生きていたはず。そんな一面を表現してくれているような気がするよ。
    その極めつけのような聡い青年が主人公のエディだと思う(もう一人あげるとしたらマックスだね)。物

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    2019年07月26日
  • スウィングしなけりゃ意味がない

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    ネタバレ

    第2次世界大戦前夜から戦中にかけ、いわゆる敵性音楽であるジャズに魅了されたドイツのティーンエイジャーたち、"スウィングボーイズ"の物語。
    懇切丁寧なガイド付き小説とは違い、あれ、これについてなんか説明あったかな? とポヤポヤしているとあっという間に置いていかれそうな、まさしくインプロヴィゼーションが連なるジャズセッションのような作品で、その音楽的なリズムとテンポが読み進むうちにドンドン心地良くなってくる。
    政治的思想は持たなかったと言われているスウィングボーイズだが、戦時下という特殊な状況だからこそ、純朴な魂が発する叫びには説得力が籠り、物語中盤、ベルゲドルフに収容されたエ

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    2019年06月30日
  • スウィングしなけりゃ意味がない

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    ナチス政権下ドイツの、新たな局面を見せてくれる快作。大戦に突入する中、あくまで自分たちのやりたいことを貫いた青少年。戦時には避けられない不条理や死の描写も出ては来るけど、抑制の効いた筆致の妙もあり、いかにも”戦争もの”というところからは、一線を画す仕上がりになっている。終戦とともに迎える本作のクライマックスも素晴らしく、ならではの読み応えある物語でした。

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    2019年06月03日
  • ミノタウロス

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    1902年ごろのウクライナ地方
    戦争、革命、内戦の頃の話

    広大な土地を謎の男から譲られた父
    成り上がりながらも
    成功をおさめ、次男であるヴァシリも
    きちんとした教育をうけ、
    いずれは農場主となると思われた
    が、時代はそれを許さなかった
    戦争、革命、
    それに翻弄される若者たちが
    暴れ回る
    はじめは傍観を決め込んでいた
    ヴァシリも
    やがて、そうはいかなくなる
    もともと暴力的な部分もあって
    ドイツ兵の仲間を連れて
    自らならずものになっていく

    たいへん疲れる内容で苦労して読んだ

    戦争中
    村を襲って全滅させる
    女性はいたずらされてから
    殺される
    当たり前のように
    行われてきた歴史
    生きていくために

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    2025年09月21日
  • 吸血鬼

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    吸血鬼繋がりで「あの子とQ」の後に
    読み始める
    なんとも重苦しい話しで
    ずっと全身が押さえつけられているような気分で
    読んでいた
    村人の死が続いたのは、はたして偶然なのか
    本当に例の儀式をしなければならなかったのか
    吸血鬼の仕業だったのか
    主人公の葛藤と、悲しみとが
    痛いくらいに伝わってくる

    あの子とQとは似ても似つかない
    吸血鬼でした!

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    2025年07月21日
  • 黄金列車

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    題名のとおり
    ハンガリーの大蔵省が
    ユダヤ人から取り上げた財宝を安全な場所に
    移すための列車
    それに乗り込む職員や、その家族
    戦争の真っ只中
    さまざまな襲撃にあいながら
    止まる駅や、その町の人々との関わり
    いったいなんのために
    これを命懸けで運ぶのか?

    主人公が失った過去の幸せなど
    心の回想を挟みながら
    物語は進んでいく
    ユダヤ系の友人家族の悲惨な結末が
    当時の歴史をあらわしている

    思い出のアパートにも戻らないつもりで
    黄金列車に乗った主人公
    自転車だけを持ってこれからどうするのか?
    激動の歴史の中では
    思いもよらぬ、人生がある
    どっぷり歴史の渦の中に旅してみた

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    2025年07月16日
  • 喜べ、幸いなる魂よ

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    ネタバレ

    奇書というべき作品か。フランドル地方を舞台に中世ヨーロッパのような話が進行し、変な本を選んだかと後悔し始めたくらいで、少女ヤケネがヤンを誘って性に耽りだして、やっぱり変な本だとわかった。この天才のヤケネが修道女に似たベギンになり、ヤンは家の跡をついで、という大河小説な感じで、おおくの学術書を表すヤケネは誰かモデルが居るのかなと思いながら読み進んだが不明。よくこんな作品を書けたなあと感心した。

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    2025年01月13日
  • 吸血鬼

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    ポーランドを舞台にした作品は、革命や蜂起を題材とするものは少なくない。『吸血鬼』も、革命前夜の物語と言える。

    が、単に、帝国とそれに対して反旗を翻す愛国者の話だけではない。ガリツィアという地域に存在する複雑な民族構成と支配関係が描かれている。ルテニア系の農民、ポーランド人の領主、オーストリア帝国。そしてその間に入った役人。

    吸血鬼は迷信でありながら、その迷信の底に猛威を振るうのはいつも人々の恐怖と不満である。

    決して読みやすいとは言えないが、余韻が残る物語だ。

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    2024年12月29日
  • バルタザールの遍歴

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    ネタバレ

    主人公の貴族が絵に描いたように転落していきます。え、まだ落ちるの?というところまで。ですが、本人たちはあまり気にしていないようなので、読んでいて不思議と「辛さ」や「悲壮感」を感じることはあまりありませんでした。また、決して性格が悪いわけではないのですが、ダメ人間です。あそこまでダメになれるのは、自分以外の人間が常にいて、どんなにダメ人間になっても絶対に一人にならないという安心感からなのではないかと思う。だから、実際に一人になった時の絶望感は想像がつかなかった。この後も2人はこれまでのように、彼等らしく思うままに生きていくのだろうなと思った。

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    2023年04月30日
  • 吸血鬼

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    毎回思うのだけど、
    これは日本人作家の小説なんだろうか…
    この人の描く海外の世界はちゃんと現地のもののようだ。
    読みづらささえ、構築してしまう。
    .
    吸血鬼とは誰だったのだろう。
    そこにはまだ科学だけでは納得いかない心情と、理論だけではいかない領地運営、過去の夢が混じり合っている。

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    2023年03月26日
  • 吸血鬼

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    1845年
    オーストリア帝国の支配下にあるポーランドの田舎の村ジェキ!ゲスラーは若き妻を伴い新たな役人として着任した。

    クワルスキーは元詩人の大地主!?
    かつて名を馳せた詩人は自分の現在を燻らせている・・・

    ジェキを訪れる際にアクシデントがおき、ゲスラーはヤレクと言う謎の男と出会う・・・
    謎の男は自らを死人の首斬り人と名乗る!!!?




    ゲスラーが着任した後、村で不審な死が発生する?

    そして、革命の足音が村に迫ろうとしていた・・・



    非常に不気味な物語です・・・

    村人の田舎訛りは少し読みづらかった。しかし、田舎の雰囲気をいい具合に醸し出していた!

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    2022年10月09日
  • 天使・雲雀

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    ある青年の青春と恋をまぁこんなにとっつきにくく書けるなんて凄い!!
    深謀遠慮渦巻く奇奇怪怪な物語
    疲れたー

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    2021年01月18日
  • スウィングしなけりゃ意味がない

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    西欧社会を舞台として純文学と大衆文学の間を自在に往来する独自の小説世界で知られる著者が、ナチス政権下のドイツで、政権への反発心から禁止されたスウィングジャズに耽溺した少年たちの姿を描いた一冊。

    特に明確な政治思想があるわけではない。だが、ヒトラーユーゲントに代表されるようなナチスの姿は余りにも”ダサすぎる”。だから自分たちはクールなスウィングジャズに耽溺する。少年たちを貫く思想はかのように、いたってシンプルである。

    その生き方は当然のように政権から敵視され、収容所送りや一時的な拘留など、政権からの暴力を受ける。それでも、ゲシュタポの目をかいくぐってジャズのパーティーを開催し、終いには密かに

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    2019年08月16日
  • スウィングしなけりゃ意味がない

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    佐藤亜紀さんの作品は10年前に読んだ『ミノタウロス』以来だと思います。相変わらずひとつひとつの文章の密度が驚くほど高くて、相当な力作かつ労作であることは疑いないのですが、自分の場合はあまり物語に入っていくことができませんでした。
    それは一にも二にも登場人物の問題で、現代の「反戦平和」に何となく染まったような学生たちが、そのまま戦時下のドイツにタイムスリップしたような違和感が最後まで拭えませんでした。すぐ近くで空襲が起こっているのに妙に落ち着きはらった行動も?ですし、破天荒さも『ミノタウロス』の登場人物の悪漢ぶりに比べると数段落ちるような気が。もちろんそういう設定がダメというわけではないのですが

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    2019年08月11日