佐藤亜紀のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
怠惰な金持ちが投げやりになって落ちぶれていく物語
第一次大戦から第二次大戦の間のヨーロッパの雰囲気は世界史の教科書でしか読んだことがなく、世界観がなかなか掴めない。インディージョーンズやサウンドオブミュージック、チャップリンの映画の世界観をイメージしながら読み進めるが、なんとなくピンとこない。
読み進めるまで一人の体に二人の人格という設定がなかなか理解できず、登場人物の名前も覚えづらく感じられてなかなか読む勢いがつかなかった。
後半に差し掛かってやっと設定が理解でき、SFを読むような感覚で最後まで一気読む。
何が面白かったのか、うまく説明できないが、面白かった。設定を理解できた二度目、 -
Posted by ブクログ
イカした小説だった。ナチスが幅を利かしていた時代のハンブルクを舞台に、ジャズにかぶれた連中(スウィング・ボーイズ)がしたたかにしなやかに生き抜いていく物語。
レジスタンスのように真っ向から抗うのも尊いけど、この小説のスウィング・ボーイズのように軟派を装ってカッコつけ、相手にしないようでいて器用に裏をかいているようなのって素敵だ。ナチスの時代というとすべてが灰色あるいは真っ黒に思われかねないけど、笑うときもあれば悦びのときもありながら人は生きていたはず。そんな一面を表現してくれているような気がするよ。
その極めつけのような聡い青年が主人公のエディだと思う(もう一人あげるとしたらマックスだね)。物 -
Posted by ブクログ
ネタバレ第2次世界大戦前夜から戦中にかけ、いわゆる敵性音楽であるジャズに魅了されたドイツのティーンエイジャーたち、"スウィングボーイズ"の物語。
懇切丁寧なガイド付き小説とは違い、あれ、これについてなんか説明あったかな? とポヤポヤしているとあっという間に置いていかれそうな、まさしくインプロヴィゼーションが連なるジャズセッションのような作品で、その音楽的なリズムとテンポが読み進むうちにドンドン心地良くなってくる。
政治的思想は持たなかったと言われているスウィングボーイズだが、戦時下という特殊な状況だからこそ、純朴な魂が発する叫びには説得力が籠り、物語中盤、ベルゲドルフに収容されたエ -
Posted by ブクログ
1902年ごろのウクライナ地方
戦争、革命、内戦の頃の話
広大な土地を謎の男から譲られた父
成り上がりながらも
成功をおさめ、次男であるヴァシリも
きちんとした教育をうけ、
いずれは農場主となると思われた
が、時代はそれを許さなかった
戦争、革命、
それに翻弄される若者たちが
暴れ回る
はじめは傍観を決め込んでいた
ヴァシリも
やがて、そうはいかなくなる
もともと暴力的な部分もあって
ドイツ兵の仲間を連れて
自らならずものになっていく
たいへん疲れる内容で苦労して読んだ
戦争中
村を襲って全滅させる
女性はいたずらされてから
殺される
当たり前のように
行われてきた歴史
生きていくために -
Posted by ブクログ
題名のとおり
ハンガリーの大蔵省が
ユダヤ人から取り上げた財宝を安全な場所に
移すための列車
それに乗り込む職員や、その家族
戦争の真っ只中
さまざまな襲撃にあいながら
止まる駅や、その町の人々との関わり
いったいなんのために
これを命懸けで運ぶのか?
主人公が失った過去の幸せなど
心の回想を挟みながら
物語は進んでいく
ユダヤ系の友人家族の悲惨な結末が
当時の歴史をあらわしている
思い出のアパートにも戻らないつもりで
黄金列車に乗った主人公
自転車だけを持ってこれからどうするのか?
激動の歴史の中では
思いもよらぬ、人生がある
どっぷり歴史の渦の中に旅してみた
-
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公の貴族が絵に描いたように転落していきます。え、まだ落ちるの?というところまで。ですが、本人たちはあまり気にしていないようなので、読んでいて不思議と「辛さ」や「悲壮感」を感じることはあまりありませんでした。また、決して性格が悪いわけではないのですが、ダメ人間です。あそこまでダメになれるのは、自分以外の人間が常にいて、どんなにダメ人間になっても絶対に一人にならないという安心感からなのではないかと思う。だから、実際に一人になった時の絶望感は想像がつかなかった。この後も2人はこれまでのように、彼等らしく思うままに生きていくのだろうなと思った。
-
Posted by ブクログ
1845年
オーストリア帝国の支配下にあるポーランドの田舎の村ジェキ!ゲスラーは若き妻を伴い新たな役人として着任した。
クワルスキーは元詩人の大地主!?
かつて名を馳せた詩人は自分の現在を燻らせている・・・
ジェキを訪れる際にアクシデントがおき、ゲスラーはヤレクと言う謎の男と出会う・・・
謎の男は自らを死人の首斬り人と名乗る!!!?
ゲスラーが着任した後、村で不審な死が発生する?
そして、革命の足音が村に迫ろうとしていた・・・
非常に不気味な物語です・・・
村人の田舎訛りは少し読みづらかった。しかし、田舎の雰囲気をいい具合に醸し出していた! -
Posted by ブクログ
西欧社会を舞台として純文学と大衆文学の間を自在に往来する独自の小説世界で知られる著者が、ナチス政権下のドイツで、政権への反発心から禁止されたスウィングジャズに耽溺した少年たちの姿を描いた一冊。
特に明確な政治思想があるわけではない。だが、ヒトラーユーゲントに代表されるようなナチスの姿は余りにも”ダサすぎる”。だから自分たちはクールなスウィングジャズに耽溺する。少年たちを貫く思想はかのように、いたってシンプルである。
その生き方は当然のように政権から敵視され、収容所送りや一時的な拘留など、政権からの暴力を受ける。それでも、ゲシュタポの目をかいくぐってジャズのパーティーを開催し、終いには密かに -
Posted by ブクログ
佐藤亜紀さんの作品は10年前に読んだ『ミノタウロス』以来だと思います。相変わらずひとつひとつの文章の密度が驚くほど高くて、相当な力作かつ労作であることは疑いないのですが、自分の場合はあまり物語に入っていくことができませんでした。
それは一にも二にも登場人物の問題で、現代の「反戦平和」に何となく染まったような学生たちが、そのまま戦時下のドイツにタイムスリップしたような違和感が最後まで拭えませんでした。すぐ近くで空襲が起こっているのに妙に落ち着きはらった行動も?ですし、破天荒さも『ミノタウロス』の登場人物の悪漢ぶりに比べると数段落ちるような気が。もちろんそういう設定がダメというわけではないのですが