青木美希のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
原発については様々な書籍が出ているが、本書は最近の状況を踏まえてコンパクトにまとめられた良書。
・近年の国際情勢を鑑みると原発は安全保障上の大きなリスクであること
・原発被災者を追ったルポ
・予算や制度から再エネより原発を優先する現状
・再エネ推進のドイツと原発重視の韓国の取材
・政治献金と票による原発利権の構造
・「おわりに」では、筆者に対する朝日新聞社内での圧力が述べられている
【目次】
はじめに 「原発優先ルール」こそ日本の安全保障リスク
第一章 原発から再エネに転じた男性の死
第二章 抑圧される日本の再生可能エネルギー
第三章 なぜ日本の再エネは中国に負けたのか?
第四章 再エネ6割のドイツ、1割の勧告をゆく
第五章 日本型の再エネを探る
第六章 原発回帰 権力の舞台裏
第七章 絶望を超えて歩みはじめた被災者たち
おわりに それでも私は書き続ける -
Posted by ブクログ
同じ著者の「なぜ日本は原発をやめられないのか」を読んだので、選考出版社された本書読んでみた。原発事故直後は「プロメテウスの罠」なども出るたびに読んでいたのだが、読まなくなってしまった。
この本の出版が2018年3月だから事故から7年後である。
原発事故関連死、原発の現地採用者の声、形式的で本当に除染しようとはしていない除染、安全でないのに奨励される帰還、官僚の本音、原発いじめ、支援打ち切りされる避難者などについてよく取材をして書いている労作だと思った。
どの問題も奥が深く、ただただ当事者が不幸になっていく原発事故の知られざる側面をよく教えてくれたと感謝する。
被災者の苦労や悲しみもわかるが、行政もまた仕方なくやっているというのも感じれた。例えば100%の除染なんてとても実行不可能なのだが、そう言ってしまうと保証だなんだとの話になり、これで安全ですよ一旦線を引いているということなんだと思う。そういう現実に目をつぶるという政策があちこちで齟齬を生んでいるといことをこの本で色々知ることができた。 -
Posted by ブクログ
長年地道に取材されてきた結果をとてもわかりやすくまとめて書籍にしてくださった。
「なぜ日本は原発を止められないのか?」
本当にどうして?
その疑問に答えるべく、政官学業マスコミの実態が描かれている。
あれほどの事故を起こし、多くの人の故郷を奪い、仕事を奪い、人間関係を奪い、その後の処理も全くうまくいっていない。いつ終わるかもわからない。見当もつかない。自然豊かな国の土を、海を汚染し続けている。どう考えても原発の存続、ましてや増設などあり得ない。普通に考えれば。
この非常に真摯で誠実な本でさえ、出版を邪魔する新聞社ってなんなんだろう。
特別に勇気のある人だからできたことだと思う。陰ながらいつも応援している。 -
Posted by ブクログ
大手新聞社に所属する著者が、その肩書をこの本に書けないという事実は、メディアの原子力ムラへの忖度を感じうんざりさせられる。
福島第一原発事故後、原発の再稼働を目指し施行された新規制基準でも、原発付近の住民の避難計画は規制委員会の審査対象ではないとのことだ。住民の命綱である避難計画を誰も審査しない。いつ何時、どこかの原発の直下で地震が起こるかもしれないのに、これはまずいと思う。
この本が出版されて間もなく能登半島地震が起きた。震源近くに立つ志賀原発には様々なトラブルが発生したが幸いカタストロフは免れた。だが、付近の住民たちの安心・安全が適切に守られたとは思えない。 -
Posted by ブクログ
地震大国日本で原発を持つ理由、私は、原爆を作る能力を保持したいから、
だと思っていた。この新書でも自民党石破さんらがそう言っている。
北朝鮮中国ロシアアメリカと、核保有国に囲まれた日本として、
下手な軍事力よりも抑止力がある、という見方には一理はある。
しかし同時に、原子力発電所にミサイルを撃ち込まれたら原爆を落とされるより
遥かに甚大な被害になることは、福島原発の事故で証明済み。
要は論理破綻しているのだ。
しかしことはそんな単純ではない。
原子力発電所利権がしっかり日本経済に組み込まれている。
もちろんその主役は電力会社。官僚。議員。
我々市民から吸い上げる電力料金が、パーティ券に化ける。
さらに官僚の天下りの報酬、退職金に化ける。
結局今の世の中の図式そのものになる。
議員、官僚、大企業。
原発であれ、武器であれ、五輪であれ、万博であれ、神宮再開発であれ、
何か大きなことをしでかして国の金、国民からの血税を動かし、
その甘い汁を吸うのは議員であり、官僚であり、大企業になってしまっている。
日本が成長しているうちはそれでもよかった。みながそれぞれ恩恵にあずかれた。
しかし、衰退国、沈みゆく国に日本がなってしまってからは、パイの奪い合い。
一般の国民はどんどん貧困化する。
・・・私は数年前、「夏休みになると痩せる子供たちがいる」という話を
地元の関係者から聞いた時には信じられなかった。
この日本でそんなことがあるのかと。
あるのだ。今や子ども食堂は当たり前。満足に食事がとれない子が、いや大人も、
大勢いるのだ。7人に一人が相対的貧困。
もちろん、スマホだなんだと、生活が快適になっている部分は多々ある。
しかし、基本的な衣食住が十分でない国民が増えてしまっているのだ。
そんな状況の中で、軍事力倍増、原発増設、万博開催などと、
国民から金を吸い上げてよいのだろうか?
メディアを3社移って、あくまで個人の活動としてこの新書を出版したこの記者に
敬意を表する。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトル通り、「言ってはいけない真実」が赤裸々に、取材をもとに書かれていて衝撃。
衝撃、っていうのはちょっと違うかも。なんとなく、そうだろうなと想像できたことだが、政府もマスコミも、いろいろと都合が悪くて公にできないことを、ちゃんと取材して明らかにしているのだ。
例えば、大手ゼネコンが福島で請け負っている「除染作業」の真実。ろくにちゃんと除染してないし、全国から身寄りのない日雇い労働者が仕事を求めてやってきて、低賃金で働かされて、中間業者が搾取してることとか。
なんか、想像はできる。
なぜそれがちゃんと報道されないかというと、「除染がちゃんと進んでいない」ということが公になると、地元の人たちも困るから(風評被害とか)、みたいな変な理屈。いや、地元の人はちゃんと除染してもらわないと帰れないでしょう!!
地元で東電に現地採用された若者や、下請けで原発関連で働いていた人達が、いかに肩身の狭い想いをしているか、という話にも本当に胸が痛んだ。
一番、自分だったら…と感情移入してしまい、切なかった事例が、事故があった原発から近いが、「避難指示区域」ではない町に住んでいた女性が、子どもを連れて「自主避難」した例。避難指示区域ではなくても、これまでより放射線量が上がっていて、母として、子どもを守るために東京に自主避難。夫は、「気にし過ぎ」「俺の仕事や、家のローンもあるんだぞ」と妻と対立。一家はバラバラに…。このようなパターンは本当に多いらしい。今までにも聞いたことがある。
母の気持ちを、私はよくわかる。私でも絶対にそうする。家なんてどうでもいい。これから子どもを生む可能性がある娘や息子がいるのに、ほんの少しでも、目に見えない危険がある場所に住むわけにいかない。放射能の影響は、何十年後にしかわからない。何が正しい選択かなんて、誰にもはっきりとはわからない。わからないなら、子どものために安全を一番に考える、それが母の考え方だ。
この女性は子供と東京で暮らし、夫に理解されず孤立し、生活費も送ってもらえず、困窮し、心身ともに病んで、自死を選んでしまう。夫に収入があるために適切な援助も受けられなかった。最悪だ。
しかしこの場合、いやいや…まずその「夫」が子供の学費や生活費は出すべきでしょう!と思ってしまう。
いやしかし!!!もともとは、原発事故がなければそんなことにはならなかったんだ。
これまで、東電の責任が追及されたり、津波の危険性がどれほど認識されていたのかが問題になってきたけど、でも本当は違うのでは?と私は思う。原発推進を黙認し、原発で生み出された電力を利用してきた私たち国民、全員の責任ではないの?
なぜ責任のある人がだれも、原発ゼロにすると言わないの?なぜ再稼働が進んでいるの?
いろんな面で疑問や憤りを覚え、福島第一原発の周辺で暮らしていて、あの日から当たり前の日常を奪われてしまった人たちのことを想うと辛くて、申し訳ない気持ちにすらなってしまった。 -
Posted by ブクログ
時代によって”不都合な現実”とされている事は常に在るのだろう。
福島とそこにまつわる人々の現実は、そんな”不都合な現実”の一つなのかもしれない。
だからと言って、都合よく扱われて、無かったことにされて済むことでは無い。
まずは、自分にとって”知らなかったこと”にしないことだと思う。
それは、現実なのだと、認識することだと思う。
著者青木美希さんのドキュメンタリーを、本書も含めて数冊読んできた。
物語ではなく、その根源に在る、人々の声をすくい上げた著作は、今私たちにとって必要なのだと思う。
多くの情報が氾濫する中で、生の声に耳を傾けることが極端に少なくなっている気がする。
あるいは、都合の悪い話しはさらに聞こえてこない。
考える為の生の現実にこうして出会えた事に感謝する。 -
購入済み
コロナ渦だからこそ読むべき本
メディアで大きく取り上げられなくなった、福島原発の事故とその後についてよく分かる。
福島原発のせいで普通の日常を送れなくなった人々の苦しみは今も続いていること。また、政府のとった非情な政策が与えた影響が分かる。
もしかしたら自分が被災者側になるかもしれないということを常に忘れては行けない。 -
Posted by ブクログ
これほどじっくりお二人の被災者の方を取材されたものとは知らず読み始めたので、途中で苦しくなった。
第1部では、大変な被害にあった人自身が、どうして強くなり戦わなきゃいけないのか、救われないのかと考えた。誰でもそんなふうにはなれないじゃないか、あまりの理不尽さに立ち直れなくなるのが普通だろう。そこを立ち上がって戦える人森松さんには敬意しかないが、戦わなきゃ当たり前のことさえしてもらえないことに腹立たしさを感じた。
第2部では、戦えない被災者の話だった。いや、違う、十分戦っておられる。生きていること自体が戦いだ。自分の命を絶たないことに精一杯で、国や県や東電と戦えない、そんな気力も余力もない普通の人、庄司さんの話だった。普通の人っていうのも失礼だな。一人一人みんな事情が違う。本来なら一人一人オーダーでの対応が必要なはず。それを大きなグループ分けの調査さえしない、大きく実態を捉えることさえしない国や県。被災者への対策を減らしていくことしか考えていない。
原発事故さえなければ、普通に幸せに暮らせていたはず。それがどうしてこんなことにって。その思いが10年経っても消えるどころか、ますます募るって、どんなに苦しいことだろう。震災や原発事故がなかったように、はしゃぐ他人を見て、どんなに辛い10年だったろう。忘れられる、取り残される、いないことにされる。あまりにも残酷な仕打ちだ。
他人事ではない、とみんな知ることだと思う。
実際、このコロナでも、国や都道府県に見捨てられた思いを実感している人はたくさんいるはず。いつ誰がその立場になるかわからない。
青木さんのようなジャーナリストが取材して記事にしてくださり、初めて知ることができる。
口ばかりの政治家や公務員とは違い、情が感じられる。人間性が感じられる。被災者の方に同じ人間として接しておられる。
人間の心がない人が政治家や公務員になっていることがそもそもおかしい。なるなよって思う。
東電は東電のままで良かったのだろうか。この辺は勉強不足でなんとも言えない。
被災者のことを考えた時、原発再稼働なんて言えないだろう。どうして他人事なんだ。
怒りに任せて書いて、支離滅裂になってしまったが、これからも被災者に寄り添う取材をして記事や本にしていただきたいと思う。そのためには私たち一人一人が忘れないこと、関心を持ち続けることが大事だということも、この本を読んで知った。 -
Posted by ブクログ
地図から消される街 青木美希 講談社
副題に「311後の言ってはいけない真実」とあるこの本は
朝日新聞の特別報道部の記者によって書かれたもの
自分の足で集めた証拠をもとに書いた「手抜き除染」の報道後に
書き起こした力作だ
政治や行政のお為ごかしの仮面や利害に群がる業者の
目的を履き違え当事者を踏みにじる実態が見せる問題の深さと渡り合い
客観性を大事にする記事ができるまでの努力と試行錯誤の
歯痒い過程を見せてもくれる
板挟みの正義ある行政官の死や
被災者同士のいがみ合いを助長しているのが
当の政治であり行政であり
避難者をイジメる井戸端会議や学校の陰湿な体質など
にっちもさっちも行かない腐った共食い現象を浮き彫りにしている
結局解決策は国会を取り戻し三権の談合を解散させることであり
こうした現実に痺れを切らした国民の民意が爆発する以外の
ありえないのだろう
一人ひとりが事実と向き合い
権力層によって煽れれている共食いと分断に気付いて自ら止め
声を揃えて「NO」を突き付ける以外にない