ジェリー・Z・ミュラーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
表紙の「業績評価が組織をダメにする根本原因を分析」という文句に惹かれて購入.
データを集め,分析し,カイゼン,というループは今では当たり前の行為なのだが,その行き過ぎに警鐘を鳴らす.
我が大学も,まさにそうで,学部別の就職率の順位をつけて予算配分したりする.ただそのリストをよく見てみると,みんな進学率が95%以上で,学部間に優位な差はない.本書で挙げられる典型的なダメ統計主義(統計執着,というらしい)である.
本書には,測定が有効に機能する例と,その5倍ぐらいの無益,いやむしろ有害な例が挙げられている.
多分に著者の主観(恨みつらみ?)が色濃いのであるが,行き過ぎた統計主義について,事例を豊富 -
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Posted by ブクログ
なんでもかんでも分析し管理したくなる。完璧を目指すうちに物足りなくなり、少しでも気になったポイントがあれば、あらゆるデータが欲しくなるし、あらゆる側面から管理したくなる。そうしているうちに、データと管理の沼に足を取られ、本質を見失っていく…
データ分析は繊細な作業なので、没頭してしまうと、いつの間にか大局的な視点がすっかり抜け落ちた状態でずんずん歩みを進めていってしまう。
だからこそ、本当に絶対に必要な大事なものは何かを考えることを、意識的に思い出すようにしなければならない。
また、とりわけパフォーマンス評価(管理はセーフだが、管理し始めるとほぼ間違いなく組織はそれを評価に繋げたくなってしま -
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Posted by ブクログ
ネタバレ近年、説明責任ともあいまって、測定基準を公表することが求められているが、パフォーマンス評価を重視し過ぎることのリスク、悪影響を述べた本。
評価はその組織やそのミッションを理解している人が指標を決めることが必要。
その上で、業種によっては実績評価がモチベーションにつながることもあるが、多くの場合、行きすぎた評価は、数値をよく見せるために不正を起こしたり、不作為による別の問題を引き起こす。
それが顕著なのが、教育、医療、警察など。
例えば、医療では、手術の成功率を上げるために、リスクの高い患者の手術を避けるようになる。治る可能性のある患者を放置することは生死に関わる問題である。
警察は、重罪を軽 -
Posted by ブクログ
測れないものを測る事、誤った計測基準を持ち込む事、それに基づいた誤った価値判断がもたらす負のインパクトについて語った本。
数値化する事で目標を設定したり実績を管理しやすくはなるが、それにより評価値を上げる事が目的とすり替わって本末転倒の行動を取るようになる。
資本主義的な経済原理を持ち込む事で、逆に社会主義国の国営工場のような不正や生産性の低下を、生じてしまう、と指摘している。
読んでいて、一昔前のSEO(検索エンジン最適化)を思い出した。評価値を上げる事だけに特化すると誰も幸せにならない典型例。これに対して、現在では検索エンジン側が計測基準を洗練させていく事で世の実益に沿った物に変わりつ -
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本書で取り上げられている国は、米国や英国などの欧米諸国中心ですが、様々な実績評価が企業だけでなく病院や学校、軍隊など幅広い領域に拡大し、それがある種の機能不全や弊害をもたらしている、という指摘になります。なかでも一番わかりやすい指摘は、実績評価(計測)に費やされる時間とコストがばかにならず、肝心の本業に支障が出ているというものでしょう。これなどは目的と手段が転倒している好例です(実績評価自体が目的になってしまっている)。そしてそれよりも深刻な指摘は、実績評価が個々人の評価(報酬、昇進)と紐づけられてしまうと、腐敗や数字操作、また評価指標以外の要素が不当に軽視されてしまうなどの(重大な)副作用を
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Posted by ブクログ
論文形式で、主張が明確。
数値データを絶対視し、それを用いる事で組織に説明責任を果たす事、更に、そこから能力給や評判、ランキングを得る事を信念とする「測定執着」思想の危うさについて、指摘する。
まず、測定行為自体に限界がある。例えば、簡単に測定できるものしか対象としない。また、数字を良くするために簡単な目標のみを設定しがちである。あるいは、目標値を下げようとするインセンティブが働く。実績数値を見栄えを良くしようと操作し、最悪は、達成する目的にとらわれすぎて不正行為に及ぶ。ここで言われるのはあくまで可能性の話だが、しかし、誤ったKPI設定による悲劇は十分起こり得るし、実感がある。医療行為の成 -
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Posted by ブクログ
■測定執着というパワーワード
この本は、世の中のあらゆる組織にはびこる実績評価のための「数値測定」がもたらす弊害について、実例を用いて詳細に分析、解説された本です。
組織を管理する有能マネージャー(自称)は、部下の売り上げ数、部下が出した不具合の数、部下の残業時間、部下の技能熟練度を数値化したスキルマップ、何でもかんでも測定して美しいグラフを作成して仕事をした気になってしまう、これを本書では「測定執着」と呼んでいます。
なぜ、組織に、この「測定執着」から逃れられない有能マネージャー(自称)がこうも多く存在してしまうのか、その理由が実例を交えて解説されています。
■製品の不具合の数をカウントし -
Posted by ブクログ
KPIの設定について議論すると、経営者の経営センスや部門運営者の運営センスが如実に表れるが、本書はその言語化が難しい「センスの善し悪し」を具体的事例を多数研究して「数値目標」という切り口から見事にあぶり出している。
みんな一様に可視化、見える化、KPIと叫ぶが、現場感覚なくダッシュボードを眺めたり、偉そうに論評して、仕事をした気になっている人はいくらでもいる。それだけならまだしも、なんちゃって経営のために膨大な労力と時間を使って可視化に携わる人達がいるのが残念でならない。
そもそも何を可視化するのか、何故可視化するのか、あなたやあなたの組織の目的はなんなのか?
そんな当たり前の話が理解できない -
給料によるモチベーション
測定に力を入れすぎる、見かけ上の目標達成を目指してしまうと、本質を見失い、損失がうまれるという内容。
ビジネス以外の事例が豊富。
測定可能な数値による外的動機付け(給料)は、内的動機付け(仕事内容からくるモチベーション)を損なわせる。そして、特に学校、病院といった非営利組織において、組織としての目標を達成する上で、給料によるモチベーションアップは逆効果であるといった内容が印象に残った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ証拠ベースの政策決定。アカウンタビリティ(説明責任)。PDCAサイクル。それらのためにはまずは測定することが第一歩。ということで何でもかんでもまずは数値化という昨今。
本書は、測る仕事ばかりが無意味に増えて頭にきた大学教授が専門外の文献を読んでまとめた論文の形になっている。
測ること自体が問題だと批判しているわけではない。測ることが万能だと思うのが間違いである。数値化して可視化すれば何でも上手く行くわけではないのだ。
測ろうとしている対象、例えば、学校の教師の能力だとか、会社組織のパフォーマンスなどのうち、実際に数値化できることはそのほんの一部分限られているし、測るのは数値化しやすい部分 -
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Posted by ブクログ
データをもとに国の政策や企業経営、従業員の報酬体系がが決められていくというのは、当然のことだし、科学的で良いことと思われている。しかし筆者は、測定に執着しすぎることには多くの悪い側面があるという。本書では、「測りすぎた結果かえって悪くなった」例がいくつか紹介されているが、ここではアメリカの学校の事例を取りあげたい。
2001年にアメリカで、通称「落ちこぼれ防止法」が施行された。これは、成績に関して民族間の根強い格差が存在していたため、その解消を狙って作られた法律だ。
この法律ものとで、毎年3年生〜8年生に算数、読解、科学のテストが受けさせられた。テストの結果、特定の生徒のグループの進歩が見ら -
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