紅野謙介のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
共通テストのプレ問題が載っているのだが、それを解きながら読むのが面白い!筆者は教科書採択にも関わっていて、国語教員の作問と採点の苦衷を重々承知している上での問題に対するツッコミが光っている。近年の国語のテストは複合型の設問で、文章の内容というより三種類以上の文章や図表を読みこんで必要な情報を探し出すというものが多いような気がする。そしてその文章も、評論や小説ではなく、契約書や案内文など生活に即した文章。学んだことを実生活で活かすというのは重要なことだが、例えば契約書の穴を探して突くというのは、本当に子どもたちに身につけさせたい思考力、判断力、表現力なのだろうか。筆者は共通テストで測ろうとしてい
-
Posted by ブクログ
「センター試験」から「大学入学共通テスト」へ「改革」された際の混乱は記憶に新しい。結局行われなかったけど、国語や数学の記述式問題の導入や、英語民間試験の利用など。なんであんなことが強行されようとしていたのか。本書では「大学入学共通テスト」の国語プレ試験問題から分かる問題点や、国語教育における「学習指導要領」改訂とその「解説本」をじっくりと読み解くことで、それらを推し進めようとしている人々の考え方や背景に警鐘を鳴らしている。問題は大学入試には留まらないようだ。
国語や言語は人間の思考にとって大事だとは思うし、「共通テスト」の問題点や学習指導要領の改訂などの問題点は、仰る通りだと感じはする。国語の -
Posted by ブクログ
「思考力・判断力・表現力」を測るあまり大学入学共通テスト・学習指導要領の内容が大きく変わりすぎているという筆者の主張はその通りである。
また、筆者が在籍している麻布高校の例を通じて「思考力・判断力・表現力」を身につけることがどれだけ労力を要するかが述べられている。
これを踏まえ大学入学者選抜試験で国語教育を変えるのではなく、初等・中等教育の内容から変更すべきであると論じている。
英語でもそうだが、プログラミング教育等の導入もある中で学校教育をこれ以上改善することは困難ではないだろうか。そうであれば入試制度を変革する『上からの改革』が真っ当なものと思われるが、今回の一連の騒動でこれも難しく -
Posted by ブクログ
PISAショック、AIの脅威とも絡めて、読解力低下が起きていると論じられてきたこの十年。
2021年度からの「大学入学共通テスト」の開始、つまり大学入試改革と、22年度からの高校新指導要領実施を控え、今、大きな転換点を迎えている。
そういう現状に向けて、新指導要領と、現在公開されている新テスト試行調査で用いられた問題を分析したのが本書である。
指導要領の分析は、比較的コンパクトにまとめられている。
テクストを情報と同一視することへの批判は、文学研究者ならではだなあ、と思う。
ただ、ロラン・バルト流のテクスト概念が、どこまで社会に受け入れられているか疑問に思う。
一つの意味、一つの主体の意図に -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
関東大震災、治安維持法、普通選挙、拡張するマスメディアと出版界…大正から昭和へと時代が移り変わる激動のさなか、検閲の嵐が文学を直撃する。
そして謎に満ちた一九二六、二七年の筆禍―。
当時の総合雑誌ではもっとも頻繁に検閲処分を受けた『改造』を中心に、円本(文学全集)誕生の経緯も交えながら、文学者、編集者、出版社が織り成す苦闘のドラマを活写する。
[ 目次 ]
第1章 検閲へのアプローチ
第2章 出版法と新聞紙法
第3章 山本實彦と雑誌『改造』創刊
第4章 「内閲」という慣行
第5章 二つの戯曲―藤森成吉「犠牲」と倉田百三「赤い霊魂」
第6章 一九二六年七月のミステリー
第7章 文