岩瀬徳子のレビュー一覧
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私の読み方が悪かったのか、アリックスがエミラに執着(恋?)しはじめるのが、急に思えた
アリックスやケリーは、エミラをとても気に入っているし、黒人差別をしていると直接的には言い難い。
しかし、本当に些細な、微妙なところで認識や行動に引っかかりを感じる。最後の方、アリックスは、自分のキャリアのためにエミラを利用しているように感じられたし、そもそも無断で動画をばら撒き、それでいてエミラのためを思ってのことだとその行為を正当化している時点で独りよがりであるのは間違いない。
アリックスの過去のケリーに関する事実を曲げての正当化もそうだけど、自分の都合のいいように物事を解釈し、歪めていっている様がちょ -
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黒人のベビーシッター、エミラが、休みの日のパーティの夜に急遽ベビーシッターの要請で子供を預かって近くのマーケットへ連れて行った際、「白人の子供を連れた、派手な身なりの黒人」として警備員にしつこく追及されるところから話は始まります。
その事件を中心に彼女の周囲の人間関係に変化が現れ、主人公の「もう私のことはほっといて!」という切なる願いも裏腹に、様々な事件が起きる話です。
簡単に言うと「善意の差別」と言えばわかりやすいでしょうか?
静かに暮らしたいだけのエミラに対し優しさを向けながらも、「かわいそうな黒人を私が助けてやってる」という型に当てはめた考え方で接する、当事者不在の「善行」が、たびたび -
Posted by ブクログ
記憶が定かでないのだが、すべての小説は探偵小説であるという意味の言葉をどこかで読んだ覚えがある。すべてかどうかは知らないが、たしかに面白い小説に探偵小説的興趣があるのはまちがいない。ページターナーと称される作品には、読者の前に必ず何らかの謎が提出されている。馬の鼻先に吊るされた人参のように。それを手にしようとして読者は我知らずページを繰らされるのだ。
カリフォルニア州オークランドに住む若い女性ピップは、奨学ローンで苦しんでいた。母親はシングル・マザーでレジ係の職に就いているが、うつ気味でフェルトン郊外セコイアの森に建つキャビンに引きこもっている。ピップはときどき母の家を訪ねる。主人公の名前と -
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アメリカの出版業界が舞台。前提知識が無かったが、描写が細かかったので、イメージしやすかった。最初主人公の黒人女性(ネラ)は思想が強い人という印象を受けたので、なかなか感情移入できなかった。むしろ新しい黒人の同僚(ヘイゼル)の方が上手く立ち回っていて、なかなか良いキャラだと思った。
ただ、白人と黒人のあからさまな対立構造が無かったので、その分人種の壁の深さを感じた。なんだろうな。同僚の白人たちはちゃんと仕事仲間として接しているようにも思える。むしろ、ネラは気張り過ぎだ。だが、彼女に意見を聞いてる風でそこまで聞いてなかったり、いざ踏み込んだ意見を述べれば、差別主義的と言いたいのかと、作家と拗れ -
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舞台はアメリカのフィラデルフィア。
ニューヨークから引っ越して来たばかりの裕福な共働き夫婦と3歳と0歳の娘。
母親は執筆活動のために黒人の26歳ベビーシッターを雇う。
父親の職場でのいざこざから自宅に警察が来ることに…
長女を自宅から避難させたい夫婦は、深夜にも関わらずベビーシッターに連絡し、近くのスーパーマーケットまで行って来て欲しいと頼む。
そこで、彼女は警備員に誘拐を疑われ、その事がこの夫婦とベビーシッター、更にはその時に出会う白人の男性(後にベビーシッターの恋人になるひと)との関係を複雑なものにして行く…
まず、私は翻訳の本を読むのは少し苦手だ。
翻訳家さんにもよるのだろうと思うけど -
Posted by ブクログ
物語の序盤にフィラデルフィアのスーパーマーケットの近くを白人の子供ブライヤーと歩く黒人のベビーシッターのエミラ・タッカーに、警備員が誘拐を疑い声をかけるエピソードが描かれ、人種、特権階級、ジェンダーに対するマイクロアグレッション、無意識の偏見(unconscious bias)を体験させられる。雇い主である白人のアリックス・チェンバレンのように善意の持ち主だと信じる教養ある白人が最も多く行っている「自分でも気づいていない日常の家庭内偏見」(everyday domestic biases that we don’t even know we have.)が物語の各所に描かれる。
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