アリスが落ちたラビット・ホール 底なし沼
p6 アテンションエコノミー このビジネスモデルの下では、ユーザのクリック=反射を得られるかどうかが至上命題になるため、内容のクオリティや信頼性はどうでもよい。そこでは当然ながら、丹念な取材をもとに書かれた退屈な真実よりも、「クリックを得られる刺激的で魅惑的な偽情報のほうが経済的な利益を生むのである
p7 人間は認知バイアスとして、繰り返し同じ情報に接触することでその情報を正しいと感じるようになるという、真実錯誤効果 illusory truth effectをもつ
p9 マイクロソフトの研究では、デジタル化の影響で、人間の注意持続時間が、集中力がないことで知られる金魚の平均的な注意持続時間(9秒)を下回ったと報告されている
p37 ヤフーは、ヤフコメの順位付けにすでにAIを導入していて、建設的なコメントが上位に行くようになっている。 またコメント多様化モデルを導入して、AIが同じ意見ばかり並べないようになっている
p45 プロパブリカ NPO 調査報道のみ
フランス メディアパルト
p70 SNS パーフェクトスロットマシン、デジタルクラック・コカイン
p78 アテンショナルコモンズ
p77 衆議院 任期4年だが実質1−2年で解散 アジャイル 参議院 任期6年で3年毎に半数が入れ替わる 実はスロー
p81 テクノロジーは中立ではない 多くの人は人間より機械のほうが中立公平だと思っている節がある
p136 ケンブリッジ・アナリティカの事件
p187 いまや広告コンテンツは、ユーザのアテンションやコンバージョンを示す詳細なデータをもとによって、逆算してつくられる。
創造的に作るのではなく、データがあるいはAIが作るようになる
クリエータはコンテンツをクリエイトする存在でなく、データの手先であり、奴隷ということになるだろう
p194 下條信輔 サブリミナルインパクト ちくま新書
p198 だれもが鉄板の真実として共有できるものがなくなったことに私は危機感をもっている
p203 よく子どもは、あんなにゲームばかりしていて大丈夫なのですかといった質問を受けることがあるのですが、初期の論文でhあ、むしろ頭がよくなるという知見のほうが多いんですね。何がよくなるかといえば、注意の集中力が高まるという皮肉な結論なのですが。つまりそれは下手をすると、アテンション・エコノミーに引っ狩りやすくなるということにもなるのでしょうか。
p206 フロイト(心理学)とチューリング(情報科学)の強力なタッグに、カント(啓蒙哲学)はもう太刀打ちできません。
規範を内面化させるような道徳的倫理的な規制をしても、心理学や認知科学を応用した現在のテクノロジーには対抗できない
p208 心理学的介入には心理学的対抗を 予防接種李理論
心理学的に徹底的に基づいたリテラシー教育などを行い、誤情報などに対して事前に免疫を作り、将来の心理操作に対する抵抗力を鍛える
p225 認知的共感(合理的な判断に基づく共感)は政治には必要だが、情動的共感は害のほうが多い
アテンション・エコノミーでは、刺激的な情報を用意して、注意をトリガーすると、それに連動して情動的な反応が喚起されます。ディープフェイクについても、それがあとで否定されたとき、論理的な認知の部分では完全に消えたとしても、情動的な反応は抑制されないでのこるという図式で、よく理解できます。
p229 共感についてはバイアスが悪いというよりは、注意がなにかに引き付けられ、それを記憶、ないし情動に固定化する認知メカニズムが本来生物学的に人間に沿わなっており、元来は適応的だったが、現代のテクノロジー環境の中で不適応をきたした
p237 現代のアテンション・エコノミーが恐ろしいのは、私たちの注意を、経験や勘ではなく、認知科学の知見を踏まえた情報テクノロジーによって、意図的かつ自覚的に操作できるようになったということである。AIの時代とは、認知科学が急速に発展し、その知見が生活の至るところに配備される、認知科学の時代ということもできる。かつて消費者保護の文脈では、事業者消費者間の情報の非対称性が説かれていたが、今後私たちが気にしなければならないのは、認知の非対称だろう
p240 自由のためには、私たちが認知的に脆弱な弱い存在であることを自覚し、他者からの認知的介入に対して抵抗力をもっておく必要がある。
p248 生成AIのしつけが大事
ChatGPTと同じくらいの大きさの大規模言語モデルは、googleもfacebookも開発していて、openAIより前に公開したのですが、半社会的なことを言ったり間違いだらけだたっため、公開をすぐ止める事態にとなったのです。
それから一年ほどしてopenAIが公開したのがchatGPTなのです。では、1年間、彼らが何をしていたかというと、開発ではなく、chatGPTのトレーニングです。1年間かけてひたすら、反社会的なことや倫理に反することを言わないようにトレーニングをした
どういう手ほどきをしたか今のところ見えてこない。手ほどきに部分はやはり透明化すべきと思います。
p249 逆に危険なのは、アライメントが施されていないAIがどんどん開発され、野に解き放たれているということです。
p251 AIを使いこなすためには、人工知能にどう入力するか、プロンプトが重要です。
つまり、生成AIを使うためにはちゃんとした文章を書かないといけない
生成AIが登場してきたいま、なんと蓋をあけたら、最新型の人工知能を使うには超アナログな能力が必要だったということです。
p284 プラトン、ソクラテス以来、先人たちはずっと民意、大衆に意思決定権を与えることへのリスクを説いてきました。結果的に、君主制、共和制など様々な政体がためされ、現在の代議制民主主義が発展してきたわけですが、結局ほとんどの先人がおそれたような大衆迎合的な民主主義に対してよき対策をまだ人類は出せていません。
p286 今までは、積極的に望んでいないものを目にする機会が、いわば強制的に与えられてきた
今は一人にデバイス一台
AIがこのユーザはこういった動画に反応がいいなということで似たような動画を流してくる。
でもそれは、ユーザが本当に見たいと思っているものなのかは不明。望んでいる求めているものなのか。
反射的で無意識な認知システムを刺激されて、見させられているという部分もあるのではないか?
p295 駒村圭吾 主権者を疑う ちくま新書
アルゴリズムを神とみなし、また人間が主権を神に委ねてしまう世界が遠くない将来に来るのではないかと思っています。
p296 JAPAN CHOICE
p296 それらを見続けた結果、徐々に自らの投票先が自然に決まっていくのです。有権者の投票に関する意思決定が間接的にアルゴリズムに支配される状況があちこちで現出していたわけです。
p297 人間が思考を処理するとき、システム1(自動的で速い処理)とシステム2(意識的で遅い処理)の2つのモードがあるという考え方があります。人間がシステム2を常に駆動させて民主的な意思決定を下し続けるのは困難ですが、選挙期間のように、熟慮、理性を働かせて意思決定しなければいけないタイミングだけは、システム2を駆動できる情報空間を設計しておきたい
p302 アテンション・エコノミーの文脈において民主主義が維持されうるとすれば、それは他者の認知、他者の共感がキーになる
いかにシステム2を働かせるか いかに共感を駆動維持させるか
p304 アメリカは地方紙が1週間に2紙ずつ廃刊
p305 smartnews アメリカ版 news from all sides ユーザがあるトピックについて、保守寄りの意見を見たい、リベラルよりの意見をみたい、中道の意見を見たいと思えば、それぞれの基準に分類された記事を左から右に調整しながら選択できる。フィルターバブルに閉じない
p307 ボストンの歴史学者 無料のニュースレター letters from an american コメントが有料
p304 民主主義の統治とアルゴリズムによる統治とをミックスさせたハイブリッド型の政治システム わたしたちの情動的な要素と、AIの数理的統計的な要素をかけ合わせたもの
p316 カーネマンの二重過程論 人間の思考モードにはシステム1(反射系)とシステム2(熟慮系)のふたつがある
p321 ニック・ランド 暗黒の啓蒙書
p328 スワイプするという行為によって、自分で決定しているという感覚を作り出している tinder,tiktok
p332 現在のアテンション・エコノミーでは、システム1の世界が異様に拡大してきている
人間には自他を傷つけようという私心人心と道徳的な道心が同居してる 二宮尊徳
p334 システム2を使って反省的に熟慮するというのはどても面倒くさくてコストがかかる。だから人はこれを回避したいという欲望がある
p342 AI規制では、常に透明性が説かれる
AIは結局、人間の過去の歴史をデータとして学んでいるので、AIによる差別は、人間による差別の一つの表現でしかない
p352 インドネシアの大統領選挙では、TikTokにダンス動画を投稿した踊るプラボウォ・スビアントが(かつでは民主化運動を弾圧した強面であったのにかかわらず)若者からかわいいなどと形容され、勝利を収めた
これは私たち人間が、選挙時でさえもアテンション・エコノミーの広告的リズムの中で反射的に思考行動しつつあること、市民としての公共的理性を失いつつあることを象徴的に示しているように思われる
p353 生まれたときからアテンション・エコノミーの世界にいるアテンション・エコノミーネイティブにとって、見たいものを見る、言いたいことを言う、投稿がバスれば承認だけでなく、収入も得られるという文化こそが彼らの唯一の文化なのかもしれない
p355 アテンション・エコノミーを可能にしているのは、個人データを用いて個々のユーザの属性等とAIに分析させるための技術、プロファイリングである。DMA(EUのデジタル市場法)は、この技術にメスをいれることで、アテンション・エコノミーの行き過ぎに対処しているように思える
p356 2024/3に欧州議会で可決したAI法は、人間の意識を超えたサブリミナル的技法や、操作的欺瞞的な技法を意図的に繰り出して人間の自律的で熟慮的な意思決定能力を奪い、個人や社会に重大な損害を与えるようなAIシステムを禁止している