あらすじ
AIに選別される危機
法と権利の問題を、気鋭の研究者が論じる
『AIと憲法』。
「憲法論とは9条論だ」と考えている方、憲法にいかめしい「改憲・護憲論」をイメージしている方にとっては何とも意外な組み合わせに聞こえるかもしれない。
しかし、SF映画によく出てくる主題、つまり、全く善良な市民がAI(Artificial Intelligence)に「あなたは潜在的犯罪者だ」などと予測・分類され、社会的に排除されるような世界は、今やフィクションからノンフィクションへと変わりつつある。
実際、米国の警察や裁判所では、犯罪者予測にAIプロファイリングが使われ、それによる排除や差別が問題になっている。中国では、信用情報機関のAIが算出した個人の信用スコアが社会の至る所で利用され、スコアの低い人が差別を受ける事例が増えてきている。
日本でも、企業の採用活動や金融機関の与信の場面でAIのスコアリングが多く使われ始めているが、そのような人生の重要局面で、もしAIに「あなたはダメなやつだ」とレッテルを貼られたら、あなたの人生はいったいどうなっていくのだろうか。
こうしたAIの事前予測に基づく個人の効率的な「分類」(仕分け)と、それによる差別や社会的排除は、「個人の尊重」(日本国憲法13条)や「平等原則」(14条)を規定する憲法上の論点そのものと言える。
日本人がある一方向にぐんぐん進んでいって良い結果が得られた試しはない(先の戦争や原発問題を想起していただければそれで十分だろう)。そうであるなら、今まさに、「個人の尊重」や「民主主義」といった「青臭い」憲法原理に思いを巡らせ、AIが本当に我々一人ひとりを幸せにするのかをじっくり考えてみる必要があるのではないのか。
それは、近年、米国で沸き起こっているような「反AI」運動を開始せよ、というのではない。AIは、うまく実装すれば憲法原理のより良い実現に資する。これはおそらく疑いのないことである。したがってポイントは、経済合理性や効率性の論理だけにとらわれない、憲法と調和的なAI社会の実現にある。
本書は、こうした「両眼主義」(福澤諭吉)を日本においても浸透させるべく編まれたのである。「AI、AIって言うけど、それって本当に大丈夫なの?」と漠然とした不安をお持ちの方は、ぜひ本書を手に取っていただきたい。その「不安」の根源がおわかりいただけると思う。
――「はじめに」より
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Posted by ブクログ
AI技術を憲法の中でどのように解釈し、あるいはAIという人工物から人間個々人を保護しているか、あるいはAIそのものも権利の対象となるかなど非常にスリリングで、興味深いトピックが書かれている。
Posted by ブクログ
本書を読んで、仮面ライダーゼロワンの映画を思った。その映画にヒューマギアというのが出てくるが、このヒューマギアがヒトを支配する社会が描かれていた。人間の技術が生み出した光と闇の分野は多くあるが、このAIも使い方次第では闇の部分が多くなるのかもしれない。そうならないためにも、今から、他者になりかねないAIを見据え、権利・義務の主体である人格、人権享有主体である個人の位置づけ、統治構造について思考をめぐらせておくことが必要なのではないかと思った。論者により、読みやすさが異なったが、全般的に面白く読み通せた。
Posted by ブクログ
最近気になるテーマのひとつ。AIによって精緻に最適化されると、人の不確かさに理由を付けていた諸々が色々困る。プライバシーとかレコメンドとか選挙とか。だがもっと難しいのは人権とは?というところ。サイボーグ、脳のアップロードとか今後できるとどうなるの?もうロボットにも人権認める社会になることしか想像できない。価値観が揺さぶられる
Posted by ブクログ
AIを筆頭とした技術革新は本来は指数関数的な進歩ができるポテンシャルを持つはずなんだけど、法や規制が追いつかないからそこまで急速な革新はおきない、のだろうか。
法そのものを書き換えるAIは想定してないけど、本当にその対策はあるんだろうか。
シンギュラリティを考えさせられる一冊でした。