【感想・ネタバレ】デジタル空間とどう向き合うか 情報的健康の実現をめざしてのレビュー

あらすじ

インターネットは、私たちの生活になくてはならない存在となっている。一方で、フェイクニュースやデマの氾濫、プライバシー漏洩、炎上やハラスメントをはじめ、まったく新しい、かつ困難な課題を投げかけている。ネット上の膨大な情報は、人間の脳の処理能力を超え、自分の見たい情報しか見なくなる「フィルターバブル」「エコーチェンバー」といった弊害も生まれている。社会の分断を加速し、個人の尊重や自由、民主主義など、憲法が要請する原理原則を脅かす喫緊の問題でもある。技術進歩がもたらす便益を享受しつつ、健全な情報空間をどう再構築するか。情報中毒に陥らず、「情報的健康」を実現するために、メディアやプラットフォーム運営者、情報の出し手や受け手、政府や企業は何をすべきなのか。SNS上の「デマ」や「炎上」を分析してきた計算社会科学者の鳥海不二夫氏と、情報社会における人権や自由の問題を考察してきた法学者の山本龍彦氏が、デジタル情報空間がもたらすさまざまな課題を論じる。

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Posted by ブクログ

インターネットをはじめとするITの隆盛により、全ての人間が自由に様々な情報にアクセスできるようになり、言論の自由が確保され、自主的な意思決定が可能となる民主主義にとって望ましい世界が実現する…とかいう牧歌的な理想論を信じる人間は既に存在せず、現実はアテンションエコノミーに支配され、フィルターバブルとエコーチェンバーにより、一方的で偏った情報に認知空間が支配され、行動が誘導される、そういったディストピアが実現してしまった。

そういったディストピアに対し、プラットフォーマーに対する法的な規制により対処していくことも当然考えられるが、著者らは情報的健康という概念を提唱し、健康診断と予防といったより穏健な手法により、ディストピアを緩和していくべきという考えである。

体の健康と同等な、情報的健康を測る尺度の導出とそのためのデータの蓄積が課題であると思われるが、主張に対して異論はない。

技術の進展に対応して、民主主義(あるいはそれに代わる考えでもよいが)を防御・維持していくための技術的な仕組みが必要であり、現在はその過渡期なのだと思われる。

国や、あるいは著者らのような有識者がそういった仕組みを考えるべきなのかもしれないが、民主主義として、主(ぬし)たる国民一人一人が、民主主義としてあるべき情報空間について考えていかないといけない時代なのかもしれない。

話は変わるが、本書を読んでいると、アルゴリズムによりフィルターバブルを作り上げる巨大ITプラットフォームが悪で、テレビや新聞のような従来型メディアの方が良いみたいな風に読めてしまうが、それは本当にそうかなと思う。

私は野球が大嫌いであるが、テレビを見ると、見たくもないのに大谷大谷、プロ野球プロ野球と、見たくない情報を強制的に見せられる、逆フィルターバブルが発生している。

従来型メディアも、一方的に見せたい情報を強制的に見せるという点で、巨大ITプラットフォームと何ら変わっていない。

どちらかが善か悪かという話ではなく、お互いの良さを組み合わせて、人間社会として望ましい情報空間を作り上げていくべきなのかもしれない。

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2025年04月06日

Posted by ブクログ

鳥海と山本の共著である。本文の部分はどこかで聞いたことがありそう珍しくもないような印象であるが、巻末付録の共同宣言がこの本で主要になる気がする。

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2022年10月17日

Posted by ブクログ

エコーチェンバー現象などにより視野が狭くなり、自己の信条が強化され、フェイクニュースなどへの耐性が弱くなる世界。完全な自由報道、アテンションエコノミーに対する適切な規制などが提言されているが、政治的な視点が強く見えたので、効果があるのか疑問。情報に振り回される人がこの世界に疲れて、適度に情報から隔離されることの利点を再認識できるようにならないと難しいかも。ネットは無くても生きていける。ネット社会といい、AIの発達といい、放っておくとモノを考えない人間が増殖する。

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2023年04月15日

Posted by ブクログ

これ↓実現したら面白いですね。

「情報の出所や誰がどういう目的でその情報を流しているかを示すことができれば、真意を理解する手がかりになります。例えば『ポジショントーク度』といった数値を表示できれば、その情報に対して一定の距離を置いてみることができる」

まあ、たいていの人は何らかのバイアスがかかっているし、ポジショントークになっていると思うんだけど。。。

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2022年11月27日

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