鴇澤亜妃子のレビュー一覧
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あまりにも美しい表紙と耽美な装丁に吸い寄せられて手に取った。
「あなたは、誰?」
この一文でこの幻想譚は始まる。
1800年代後半から1900年代前半まで活躍した画家(もちろん架空の人物であろう)ショーンは、妻のディアーナをモデルに描いた「東方ノ乙女」という肖像画で、一躍時代の嬰児となった。ショーンの画風は見たままを見たまま描くといったもので、作中では「天使派」と呼ばれている。
そんなショーンの作品を見ようと、1970年に今は古びた無人の赤煉瓦の屋敷…かつてはショーンの自宅兼アトリエであった屋敷・通称「夢幻の館」に、美術研究家カーライルが足を踏み入れた。
そこで見つけた未完の肖像。
その肖 -
Posted by ブクログ
ネタバレ車やカメラがある時代のファンタジー。世界観的には19世紀ぐらいの印象だが、技術レベルはそれ以上な感じもする。
私としてはかなり珍しいのだが、途中までは感想も書けないくらいで、評価が難しい。「面白い(?)んだけど・・なんだろう?」という感じで途中までは3点、最後まで読んで3.5点の作品。
作者の2作目ということで、賞を取った最初の作品も読んでみるつもりではある。今後も手に取るかはその処女作の出来次第。今の読後感だとかつて宮部みゆき作品達で感じた位置づけ(まあまあ面白いんだけど、他の作品を読みたくなるわけじゃないし、熱中もしない2.5〜3.5の作品群)になってしまうかも。
国が絡んでいるのに人 -
Posted by ブクログ
美しき絵は、人を呑み込む。
それはまるで、我が子を喰らうサトゥルヌスのように。
凝った造りの装丁に胸がときめく。
絵画と画家と、モデルたちの物語は、ファンタジーそのものだ。
「天使派」と呼ばれる芸術家集団たちは、目に見えるものを、美の神の使者として、キャンバスに描く。
しかし、その絵に描かれたのは、モデルであってモデルでない。
現在から過去へ戻り、また現在に戻ってくる物語の構造はオペラ座の怪人のようだ。
美に取り憑かれ、しかしてその美は神なのか、それとも悪魔なのか、画家にも、見るものにも分からない。
もしかしたら、ただ1人だけその正体に気づいていたかもしれないが。
よく言えば余韻の残る、悪く